国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都港区)は本日3月12日、国内大手の自動車メーカー8社の温室効果ガス(GHG)排出報告量を分析した報告資料『日本の自動車企業の排出量の現状と課題』を発表しました。本資料では、2018年から2023年の間、自動車メーカー8社(ホンダ、いすゞ、マツダ、三菱、日産、スバル、スズキ、トヨタ)各社が算出・報告した総排出量およびスコープ3カテゴリー11の「販売した製品の使用による排出量」に焦点を当てて分析を行いました(注1)。その結果、特にトヨタが2023年に排出した二酸化炭素排出量が5億9,289万t-CO2e(注2)にのぼり、世界全体の同年の排出量の1.5%を占めていることがわかりました。現状、販売後の車両から排出される温室効果ガスの算出方法について基準がなく、各社の算出方法は多様で比較が困難であるため、今後の改善と透明性確保が求められます。

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<報告資料の主なポイント>

  • 分析した8社のうちトヨタの排出量が最大で、2023年度の総排出量は5億9,289万t-CO2eに達する。2位はホンダで2億7,053万t-CO2e。次いで日産が1億1,843万t-CO2eである。
  • 2023年度、これらの企業の売上はハイブリッド車を含むICE(内燃機関)車に大きく依存しており、その割合はトヨタで98.5%、ホンダで99.52%、日産で96.3%を占めた。
  • トヨタの2023年度の年間二酸化炭素排出量は、オーストラリアが排出する5億7,184万トン-CO2e、イタリアの3億7,412万トン-CO2e、英国の3億7,932万トン-CO2eを超える規模である。さらに、同社の2023年度の排出量は、世界の総排出量の1.5%に達した。
  • 自動車メーカー各社によって排出量算出方法が異なるため、同一企業の排出量の経年変化を評価したり、販売台数と排出量の関係を正確に把握することが困難な状況である。自動車メーカー8社はスコープ3排出量の算出方法を改善し、透明性を確保すべきである。

グリーンピース・ジャパン 気候・エネルギー担当、塩畑真里子

「販売規模が大きくなれば排出量も当然ながら大きくなるため、トヨタの排出量が最大というのは予測通りですが、同社は近年、排出量の算出と報告についてより精度を上げてきているためその点は歓迎します。問題は正確な排出量を把握することによって、具体的な気候変動対応、つまり排出総量の削減を実行できるかどうか、という点です。気温上昇によって発生する自然災害は待ったなしの状態にまで達し、地球上の多くの人々の命や生計を圧迫しています。日本はこれだけの多くの自動車会社を抱える特異な位置にあります。政府、業界、市民社会組織が一丸となって、自動車からの排出削減の具体的な道筋を示していくことが世界から求められています」

以上

(注1)スコープとは、温室効果ガスの排出量を算定・報告する際に用いられる国際的な基準「GHGプロトコル」で定められた区分である。スコープ3は、製品の原材料調達から製造、販売、消費、廃棄に至るまでの過程において排出される温室効果ガスの量を指す。

(注2)二酸化炭素等量(CO2e)は、異なる温室効果ガスを共通の単位で表す用語である。温室効果ガスの量や種類を問わず、CO2eは同等の地球温暖化効果を持つCO2の量を示す。