世界の塩ブランドのサンプル9割以上に、マイクロプラスチック見つかる
【ソウル、10月17日(現地時間)】仁川大学校のキム・スンキュ教授と国際環境NGOグリーンピース・東アジアの共同企画による新たな研究で、世界の塩ブランドの9割以上のサンプルからマイクロプラスチックが見つかったことが判明しました(注1)。
アメリカの査読付き学術雑誌『Environmental Science&Technology』に掲載された本研究は、世界39の塩ブランドを分析した結果、プラスチック汚染が最も高かったのは海塩で、次いで湖塩、岩塩でした。これは、塩が調達された地域のプラスチック汚染のレベルを示しています(注2)。分析された塩ブランドのうち、複製されたサンプル中にマイクロプラスチック粒子を含まないのは、3つのみでした(注3)。
グリーンピース・東アジアのキャンペーナー、キム・ミキョンは、「最近の研究では、魚介類、野生生物、水道水からもプラスチックが検出されていましたが、今回の調査では、塩にも含まれることがわかりました。河川や海にプラスチックが流出し続ける限り、このプラスチックの危機には逃げ道がないことは明らかです。プラスチック汚染をその発生源から止める必要があります。 私たちの健康と環境のために、企業が率先して、使い捨てプラスチックへの依存を減らすための緊急措置を講じる必要性が求められています」と述べました。
これまでの塩のマイクロプラスチック汚染に関する研究を踏まえて、今回の研究は、海塩の汚染レベルの地理的分布と、環境への排出とプラスチック汚染レベルとの相関性を示す、初めての規模です。
本研究では、アジアが世界的なプラスチック汚染の「ホットスポット」として注目されています。これは、深刻な海洋マイクロプラスチック汚染のために、アジアの周辺海域の生態系と人々の健康が大きなリスクにさらされている可能性を意味します。インドネシアの海塩サンプルの一つに、最も多量のマイクロプラスチックが見つかりました。同国は、世界で2番目にプラスチックを海へ排出している地域だと考えられています(注4)。
仮に1日あたり10グラムの塩を摂取すると、平均的な成人は、塩だけで年間約2,000個のマイクロプラスチックを摂取する可能性を本研究は示唆しています。最も汚染度の高いインドネシアの塩サンプルを除外しても、平均的な成人は年間何百個ものマイクロプラスチックを摂取する可能性があります(注5)。
本研究の責任著者であるキム・スンキュ教授は、「調査結果は、海由来の製品を介したマイクロプラスチックの人体への摂取は、特定の地域におけるプラスチックの排出と強く関連していることを示唆しています。マイクロプラスチックへの曝露を制限するために必要な予防策は、プラスチックの排出を抑制すること、そして何より、プラスチックごみを削減することです」と話しました。
今月初め、国際環境NGOグリーンピースも含む世界で1,300以上の団体が参加する『ブレイクフリープラスチック』が発表した調査結果(注6)では、世界の海や河川を汚染している使い捨てプラスチックに最も依存し頼っている企業は、コカ・コーラ、ペプシコ、ネスレであると指摘しています。
※写真と映像はこちらから
注1)Kim, Ji-Su et al. (2018) Global Pattern of Microplastics (MPs) in Commercial Food-Grade Salts: Sea Salt as an Indicator of Seawater MP Pollution. Environmental Science & Technology. DOI: 10.1021/acs.est.8b04180. 本研究は、韓国国立研究財団(NRF)が助成。
注2)21の国と地域から合計39の塩サンプルを調達(オーストラリア、ベラルーシ、ブラジル、ブルガリア、中国本土、クロアチア、フランス、ドイツ、ルーマニア、インド、インドネシア、イタリア、韓国、パキスタン、フィリピン、セネガル、台湾、タイ、英国、米国、ベトナム)。塩サンプルは、原材料と生産場所に基づいて、16の国と地域から28の海塩サンプル、8つの国と地域から9つの岩塩サンプル、および2つの国・地域から2つの湖塩サンプルを含む。
注3)両方の複製サンプルにマイクロプラスチック粒子を含まなかったのは、台湾(精製海塩)、中国本土(精製岩塩)、フランス(天日干しの未精製海塩)の3種類のみ。 その他の全塩サンプルはマイクロプラスチック粒子を含んでいた。
注4)Jambeck, J.R. et al. (2015) Plastic waste inputs from land into the ocean. Science. Vol. 347, issue 6223, p. 768-771.
注5)マイクロプラスチックの含有量は、塩のブランド間で劇的に異なり、とりわけアジアで消費される塩に多く見つかった。汚染度がとりわけ高いインドネシアの塩サンプルを含むすべての塩サンプルの、平均マイクロプラスチック含有量は1kg当たり506個であることに基づくと、平均的な成人は塩から年間およそ2,000個のマイクロプラスチックを摂取すると推定。
注6)『ブレイクフリープラスチック』による調査の詳細 はこちら