国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区、以下グリーンピース)は本日、日本・中国・韓国の東アジア3カ国について、海外の再生可能エネルギー市場への投融資転換について分析した調査報告書「脱炭素エネルギー投資が求められる東アジアの『ネット・ゼロ』」を発表しました。

日中韓3カ国は今年9〜10月、相次いでCO2排出実質ゼロ(ネット・ゼロ)を表明しました。ただ、3カ国は海外の石炭火力発電事業に対して世界最大の資金提供を行っており、こうした海外のエネルギー投融資でもネット・ゼロ目標が反映されなければ、引き続き気候危機を助長することになります。

本報告書では、日本・中国・韓国の公的・民間金融機関の海外投融資をめぐる課題を分析し、化石燃料から再エネへの投融資の転換について提言を行っています。その際、3カ国のエネルギー投融資と強い結びつきがあり、近年再生可能エネルギー市場が大きく成長している東南アジアを、資金の受取国側の事例として取り上げています。


<主なポイント>

  • 今後10年間で東南アジアの再生可能エネルギーをめぐって2050億米ドルの投資機会があり、これは過去10年間の石炭市場の2.6倍の規模に相当する(注1)
  • 2009年から2019年までの間、中国、日本、韓国の主要公的銀行は、太陽光と風力には91億米ドルしか投資していなかったが、石炭とガスには789億米ドルを投資しており、化石燃料に資金提供を行う公的金融機関として世界トップクラスの「G3」となっている。しかし、こうした状況は、国家的な気候変動への取り組みと同様に、2020年から変化し始めている
  • 2021年から2030年までの東南アジアの電力需要は、太陽光発電1,251億米ドル、風力発電481億米ドル、その他の再生可能エネルギー(TKTKなど)326億米ドルの資本投資に相当する。さらに、東南アジアの新興グリーンボンド市場は、公的・民間金融機関の、化石燃料からの国際的な投資離れを促している
  • 東アジアが東南アジアに対する主要な投資元であるにも関わらず、現在、東南アジアの太陽光発電投資の72%は同地域内からの投資となっている(注2)。これは、ベトナムのような活況を呈している太陽光発電市場においても同様である。また、金融ツールの革新も現地の状況に合わせて行われるようになってきており、グリーンボンドやソーラーオークション、固定価格買取制度のような現地に合わせた金融ツールが、市場成長の鍵を握ることになる

<日本政府・金融機関への提言>

  • エネルギーの効率化、脱炭素化、蓄電、エネルギー貯蔵、グリーン水素などの技術革新、電力系統の増強などを前進させる先進的な政策
  • 公的金融機関によるネット・ゼロ目標達成へのコミットメント強化
  • 地熱や水力のメガプロジェクトへの融資停止
  • 発展途上国における太陽光および風力発電への支援拡大
  • 技術に留まらない日本の市場デザインの専門知識の輸出
  • バリューチェーンの石炭から再生可能エネルギーへのシフト

グリーンピース・ジャパン 気候変動・エネルギー問題プロジェクト・マネジャー、インサン・リー
「東アジア3カ国は、東南アジアと緊密につながり世界トップのエネルギー投融資を行ってきました。しかし現在、石炭への資金提供は枯渇しつつあり、金融機関はクリーンエネルギー金融の増強に頭を悩ませています。気候危機対策は、東アジアの金融の柔軟性と創意工夫に大きく左右されます。このため、公的開発銀行は、新たな市場の開拓者としての役割を再び果たす必要があります。

東アジアの金融は、東南アジアの再生可能エネルギーにとって重要です。過去20年間、東アジアの金融機関は、金融リスクが増大しているにもかかわらず、化石燃料の利益を維持するために、利幅が石炭に偏っていました。しかし、今後10年の間に、再生可能エネルギーを自国の金融上の制約から外そうと、同様の工夫をする金融機関が現れるでしょう」


以上



※追加の背景情報や、中国と韓国に関する分析などは報告書全文Achieving Net-Zero with China, Japan, and South Korea’s Overseas Energy Finance(英語)を参照


(注1)報告書では、日本、中国、韓国のネットゼロ宣言と整合性のとれた電源構成に基づき、地域のエネルギー需要と必要な投資資本の量を推定することで、財政的機会を計算した

(注2)Bloomberg New Energy Finance