国際環境NGOグリーンピース・ジャパンの佐藤潤一と鈴木徹に関するクジラ肉裁判(注1)の控訴審判決で、仙台高等裁判所は7月12日、懲役1年、執行猶予3年とした青森地方裁判所の一審判決を維持する判決を下しました。これを受け、グリーンピースは26日、市民の「表現の自由」「知る権利」を尊重せず、民主主義社会の原則に反する不当な判決としながら、国際環境NGOとしてより重要な東京電力の福島第一原子力発電所事故による放射能汚染の調査等に注力するため、最高裁に上告しない方針を明らかにしました。

グリーンピース・ジャパン事務局長の佐藤潤一は、「2008年、元調査捕鯨船の船員による勇気ある内部告発ではじまったクジラ肉裁判ですが、裁判所も水産庁も調査捕鯨におけるクジラ肉の扱いに不正があることを認め(注2)ました。これで、私たちの行動が社会のためであったことを証明でき、内部告発者の期待にも応えられました。不正にメリットがなくなった調査捕鯨事業が破たんするのは時間の問題だろう」と述べました。

さらに、「今回の判決で、民主主義をまもるべき裁判所が、公共の利益のため市民の活動を非常に限定的にとらえたのは残念です。しかし、現在の裁判所が判決に至るスピードでは市民社会の形成や環境問題の解決にはつながりません。よって、国際環境NGOとして限られた資金や人材を有効に活かすべく、上告ではなく環境破壊の現場での活動を通して社会を改善していく方法を選びたい」と決意を述べました。

具体的な活動については、「福島第一原発事故による放射能汚染は今後もより深刻化するでしょう。グリーンピースは、広がり続ける放射能汚染の調査、そして福島の子供たちの被ばく問題などに注力し、原子力発電所を段階的に廃止し、安全で安心な未来のための自然エネルギーへの転換を求めて活動を続けていきます」と抱負を語りました。

なお、本日26日、調査捕鯨の実施に向け有識者らから意見を聴く農林水産省の検討委員会(座長・筒井信隆副大臣)の取りまとめが委員会で示され、調査捕鯨の「中止」も明記される見込みと報道されています(注3)。

注1)クジラ肉裁判:グリーンピース・ジャパンの佐藤潤一と鈴木徹が調査捕鯨におけるクジラ肉の横領疑惑を追及する中で、公的機関に告発するために横流しの証拠としてダンボール箱入りのクジラ肉を確保したことにより、2008年7月11日に窃盗・建造物侵入罪で青森地裁に起訴された事件の裁判。青森地方裁判所は2010年9月6日、懲役1年執行猶予3年の有罪判決を下し、被告人らは即日控訴。仙台高等裁判所は20011年7月12日、控訴を棄却、一審を支持した。

注2)水産庁の謝罪に関するグリーンピースのプレスリリース(2010年12月24日)

注3)調査捕鯨「中止」も明記 農水省検討委報告書案 「継続」と併記で調整 (産経新聞 2011年7月25日

調査捕鯨、高コストで見直し論 農水省、継続姿勢は崩さず (日経新聞 2011年7月26日)



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