徳島県勝浦郡上勝町は、本日、同町議会で、「上勝町ごみゼロ(ゼロ・ウェイスト)宣言(注*1)(全文はこちら)を採択した。同宣言では、「未来の子どもたちにきれいな空気や美味しい水、豊かな大地を継承するために、2020年までに焼却、埋め立て処分をなくし、上勝町のごみをゼロにする」旨を謳っている。オーストラリア、ニュージーランド、アメリカなどの多くの自治体が採択しているこのゼロ・ウェイスト宣言を採択した日本の自治体はこれまでになく、今回の町議会決議で上勝町が日本の第一号となった。


笠松和市上勝町長(右)とグリーンピース・ジャパンの佐藤潤一(左)
笠松和市上勝町長は「上勝町のゴミを近隣の市町村に頼んで燃やしてもらうわけにはいかない。目標を定めて住民の協力を仰ぐことが必要である」と述べ、ゼロ・ウェイスト宣言の重要性を強調。また「日本だけでなく、世界にゼロ・ウェイスト宣言自治体のネットワークを広げたい。今後他の市区町村に同様の宣言を採用してもらうように働きかけたい。」と語った。

グリーンピース・ジャパンの有害物質問題担当の佐藤潤一は、「上勝町のゼロ・ウェイスト宣言を歓迎する。上勝町のように脱焼却、脱埋め立てを期限付きで達成しようという目標を定めることは非常に重要だ。それにより、初めて拡大生産者責任を明確にした法律や条例の制定、リユース・リサイクルシステムの改善などの施策が相互に作用し具体的な効力を発することとなる。この画期的な宣言により、上勝町は世界的に有名な町になるだろう。」と語った。


ごみを分別する上勝町のみなさん
グリーンピースは、世界的にこのゼロ・ウェイスト政策を推進しており、特にオーストラリア、イギリスなどで自治体などに積極的に働きかけてきた。グリーンピース・ジャパンでは、1995年より有害物質キャンペーンを開始し、脱焼却、脱埋め立てを訴えてきた。今年7月からは日本全国の市区町村にゼロ・ウェイスト宣言をしてもらうように働きかけるキャンペーンを行っており、7月中旬には、「日本縦断ゼロ・ウェイストツアー」を行い、アメリカのセントローレンス大学教授であるポール・コネット博士(注*2)と上勝町を訪れ、「脱焼却、脱埋め立て」と題した講演会を開いた。今回の上勝町の宣言を受け、ポール・コネット博士は、「この夏に上勝町を訪れ、町長や住民の責任あるごみへの取り組みに触れ非常に感動した。今回の宣言は日本の『焼却依存症』への最初の処方箋となるものだ。」との祝福のメッセージをグリーンピース・ジャパンに寄せている。

また、グリーンピース・インターナショナルの有害物質問題担当のヴォン・ヘルナンデスは、「日本の過剰な焼却依存主義は、東南アジアの国々に輸出されようとしている。環境破壊、そして莫大な建設費やリサイクル産業での雇用の減少などの経済的な観点から日本の焼却輸出にNOと言っている東南アジアの住民にとって、この上勝町の宣言は非常に勇気付けられるものである。できるだけ多くの日本の自治体がこのような宣言をし、良い見本を東南アジアの国々に示しながら日本のごみ政策を変えていってほしい」と、語っている。ヴォン・ヘルナンデスは、フィリピンに事実上の焼却禁止法を制定した運動が評価され、環境のノーベル賞と呼ばれるゴールドマン環境賞を今年4月に受賞している。(注*3)

グリーンピース・ジャパンでは、今後も先進的なごみ行政を行っている自治体などに働きかけ、上勝町のようなゼロ・ウェイスト宣言自治体の国内ネットワークができるように活動を続け、各地域に適した真に持続可能なごみ政策の採用を求めていく。

上勝町ごみゼロ(ゼロ・ウェイスト)宣言及び行動宣言 全文


(注1)

ゼロ・ウェイスト:「ゼロ・ウェイスト」というごみ政策の考え方は、1996年にオーストラリアの首都キャンベラで始まった。住民の「資源の無駄使いを推進する社会に警鐘をならしたい」そして「環境汚染につながる安易なごみ処理方法から将来的に脱却したい」という要求を受けて、キャンベラ市がごみ行政の方向性を明確にするため「2010年までにごみをゼロにし埋め立てをやめる」という厳しい目標を宣言したことに端を発している。

現在では、ニュージーランドの50%以上の自治体、カナダのトロントやノバスコシア州、アメリカのサンフランシスコなどの自治体で同様の宣言が採択され、地元に適したごみの発生抑制、分別、堆肥化、リユース、リサイクルなどのオーソドックスな施策からアイデアに富んだ施策まで様々な方法が取り入れられ、ごみの削減だけでなく、環境汚染の削減、雇用の増大、地域の活性化などの成果をあげている。

このゼロ・ウェイストの主な特徴としては主に以下の3点が挙げられる。またこの3点はまた、日本の環境省やいくつかの市区町村がうたっている「ゴミゼロ」との主な違いでもある。

挑戦的でかつ具体的な達成目標年を設定する。

焼却や埋め立てなどの安易なごみ処理・処分方法から脱却する。

自治体が処理・処分困難なごみに関しては、自治体が多額な費用を負担して無理に処理するのではなく、生産者に目標期限内にクリーンプロダクションの原則を採用し代替してもらうよう働きかける。これにより、住民、企業、国などすべての関係者に共通の目標を与え、活発なごみ減量への活動が推進されることをその特徴としている。

(注2)

ポール・コネット博士:米国、ニューヨーク州セントローレンス大学化学部教授。その経験と講演力から、世界40カ国以上で1500回にもおよぶ講演を行ってきている。焼却中心政策の代替としてゼロ・ウェイスト政策の推進に尽力している。

(注3)

ヴォン・ヘルナンデス:ゴールドマン環境省受賞に関してはこちらを参照。


関連URL

ゼロ・ウェイスト政策参考文献
『ゴミポリシー ~燃やさないごみ政策「ゼロ・ウェイスト」ハンドブック』
http://www.greenpeace.or.jp/campaign/toxics
/zerowaste/publication_html
グリーンピース・ジャパン訳、築地書館より好評発売中!

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http://www.greenpeace.or.jp/campaign
/toxics/zerowaste/zero_application_html

詳しくは、グリーンピース・ゼロ・ウェイストWebサイトをご覧ください。 http://www.greenpeace.or.jp/toxics


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有害物質問題担当  佐藤潤一
広報担当        城川桂子