国際環境保護団体グリーンピースは、8月6日のヒロシマデーに向けて、現在広島港に停泊中の「グリーンピース号」から声明を発表した。

広島・長崎の原爆投下から今年は51年目を迎える。しかし足踏み状態の包括的核実験禁止条約交渉、核兵器の使用が違法との明確な判断を避けた国際司法裁判所など、いかにヒロシマ・ナガサキが世界に伝わっていないかが現れている。
25年間核廃絶運動を行ってきたグリーンピースは、世界の人々に原点(ヒロシマ・ナガサキ)をもう一度思い起こさせるため、ここ広島を訪れた。

声明のなかでグリーンピースは、世界中にまだ二万発以上とも言われる核弾頭や核廃棄物の存在など軍事核への恐怖を訴えると共に、非核保有国日本が原子力発電で産み出す大量のプルトニウムについても非難している。
原子力エネルギー利用の広がりもまた、ヒロシマの核被害を世界中へ時限爆弾のように押し広げている、と述べている。

また、最後に軍縮交渉をしている政治家、国際司法裁判の、そして今を生きる地球上のすべての人々に、ヒロシマ・ナガサキの声を聞け、原点に帰れとメッセージを送っている。


グリーンピース・ヒロシマデー声明


51年前ヒロシマは、核被害の脅威を世界に初めて見せつけた。その体験は核が人類に何をもたらしたかを全世界の人々に伝えることとなった。
その後全世界に広がった核実験反対運動は国際的な核軍縮の流れを誕生させた。そして、核は人類に悲惨な大量殺戮と無意味な競争と、ほとんど永遠につきあわなければならない核廃棄物以外何も与えなかった。

しかし世界は、まるでヒロシマを忘れたかのように、包括的核実験禁止条約締結を目前にして足踏みをしている。グリーンピースは51年目のヒロシマを訪れた。それは世界に原点(ヒロシマ)に帰れと呼びかけるためである。

包括的核実験禁止条約は核爆発を伴う実験を禁止するにすぎない。現在すでに世界中には2万発とも言われる核弾頭が存在し、これから核兵器にされようとしているプルトニウムがあり、人類は今後も被曝の恐怖と共存しなければならない。

軍事核をベースに誕生した民事核も同様である。
ヒロシマから41年目に起こったチェルノブイリ原発事故は、核兵器以上に広範囲を放射能で覆い、その影響を被った人の数は、ロシア、ウクライナ、ベラルーシだけで1,700万人に達した。核被害は軍事核だけでないことを世界中に伝えた。

非核保有国日本は、一方で大量のプルトニウム保有国となった。まったく核を持たない国からすれば、大量のプルトニウムを持っていて非核保有国というのは、不思議なロジックである。これは日本のエゴと世界からは見られている。

科学技術の力で最終戦争を回避しうると信じた人類は、それによって数万年経ても終わることのない放射能との戦いを背負い込んだ。愚かな人類の知恵は、軍事領域の核技術を民事領域にまで持ち込んだ。原子力発電をはじめとする原子エネルギー利用の広がりは、ヒロシマの核被害を世界中の各地へ時限爆弾のように押し広げている。

すべてはヒロシマの延長線上にある。原点の地ヒロシマを、世界中のあらゆる人が見、聞き、知ることが、人類を核の呪縛から解き放つ道である。
核兵器の使用は明らかに犯罪である。炉心崩壊事故と核廃棄物蔓延のカタストロヒィーを覆い隠して原子力エネルギーの利用を拡大することも同様に犯罪である。

その体験から51年目にしてなお、ヒロシマの重要性はますます増している。ヒロシマの核被害の体験は未来永劫にわたって忘れられてはならない。
グリーンピースは、軍縮交渉をしている政治家に、国際司法裁判を司る判事たちに、そして、今をいきる地球上の全ての人々に、ヒロシマの声を聞けと、原点に帰れとメッセージを送りたい。ヒロシマの体験を人類の英知へと昇華させたい。

1996年8月6日

グリーンピース・ジャパン
ウルフ・ビルガンダー船長以下、グリーンピース号乗組員一同