もんじゅに炉心崩壊事故の危機動燃はクオリティー低い
国会議員への講演でグリーンピース招へいのベネケ博士語る。
「高速増殖炉もんじゅに最悪の事故は起こらない、と証明することは不可能」、とドイツの核物理学者ヨハン・ベネケ博士は、本日国会議員への講演で語った。また、もんじゅで最悪の事故が起きた場合、放射能を漏らさないように保証する科学的方法もないとも語った。
「もんじゅは、大事故の場合でも、ある程度のエネルギーの放出に耐えられるように設計されてはいる。しかし、我々科学者には、最悪の事故の場合の爆発力を予想することは不可能であり、最悪の条件を想定すれば、原子力発電所の安全性については自信がもてない。原子炉は完全に.崩壊しないとは誰にも保証できない。」とベネケ博士。
「これが、ドイツの高速増殖炉が1991年に運転開始許可を得ることができなかった大きな理由である。もんじゅの設計は、ドイツの中止された高速増殖炉とはぼ同じである。ドイツの高速増殖炉SNR300通称「カルカー」は炉心崩壊の場合、370メガワット・秒(メガジュール) のエネルギー放出に耐えられるように設計されている。しかし炉心崩壊のエネルギーが370メガワット・秒でおさまるということが保証できなかったのである。もんじゅの場合は380メガワット・秒のようだが保証できない点は同じである。」
ベネケ博士は現在ドイツのミュンヘン大学で教鞭をとられているが、リーダーとして高速増殖炉SNR300の安全解析をおこなった。 彼のグループの調査の結論は、高速増殖炉の最悪の事故が引き起こす爆発エネルギーがどれほど強いかを知る方法はどこにもない、ということであった。最悪の事故をわざわざ起こしてみるわけにもいかず、つまり危険な放射能を帯びた物質を炉のなかに封じ込めておくほど、高遷増殖炉の構造は強いということをテストする方法はないということである。
「ベーテ・タイト事故」の過程での「機械的エネルギー」の放出の上限を推定することは可能だろうか。また、この上限を推定するための方法は、どのようなものであろうか。
「試行錯誤」を積み重ねるという伝統的な科学的・工学的アプローチは、原子力の安全牲には適用できない。加熱に対する増殖炉のシステム全体の反応を研究するためには、総合的な炉心崩壊テストが必要だろうが、このようなテストは行われたことがない。しかし、小規模の総合的テストでは、大規模の増殖炉の安全牲について学ぶには不十分だろう。大規模な実験は、いうまでもなく、実行不能である。ここに、増殖炉の安全性の基本的ジレンマがあるようである。特に、炉心溶融の際の原子炉容器内における多成分かつ多層の流体の力学に関する理解が欠けていることを考慮するとなおさらである。
増殖炉の安全牲に関する研究は、その基礎とすべき実験的データが部分的にしか存在しないため、コンピューター・モデルに頼らざるを得ない。しかし、そこで使われるコンピューター・コードは、首尾一貫した形では検証されていない。(日本の研究者たちが、ドイツや米国の研究者より進んでいるということはありそうにない。なぜなら、原子炉の安全牲研究というのは国際的なものだからである。)たとえば、A・E・ウォルターとL・W・ディートリッヒは、1988年にNuclear Safety誌に掲載された論文において、非常に高い出力状況での燃料のディスロケーション(燃料の配置状況の変化)に関する予測の検証は、米国のテスト施設や診断法の能力を超えていると述べている。著者らはさらに、続けて、幸運なことに、炉の設計に技術革新があるかもしれないという。それによって、問題の事象シーケンスの発生の可能性が非常に小さくなって、詳細な計算は必要なくなることを彼らは願っているのである。
したがってもんじゅの原子炉格納容器 一放射能の中心部分と周辺環境の間の最終的障壁(バリア)-は、大惨事に対する防備としては効果的であると、断定できない。
付記
高速増殖炉”最悪の事故”という以下の説明は「SNR300(カルカー)とスーパーフェニックス(クレイ・マルビル)の教訓」というベネケ博士が来日ツアーのために書いたものから引用したものである。
「ベーテ・タイト事故」という炉心崩壊事故は、LMFBRにとって特有のものである(この名前は、潜在的破壊力を推定するための最初のモデルを1956年に提案した二人の物理学者の名前をとったものである)。この型の原子炉の物理的特性、それに、炉心の幾何学的配置のために、核反応を発端とする爆発が生じて炉心が部分的に、あるいは、完全に崩壊して吹き飛ぶことになる可能性がある。爆発力は、主として、蒸発した燃料の圧力からくる。ある状況の下では、炉心の崩壊は、いわゆる「燃料・冷却材相互作用」によって強化される可能性がある。これは、溶融燃料と、炉心の回りにある液体ナトリウムの残存物との間の熱反応である。ナトリウムの一部は、直ちに蒸発し、その結果生じた圧力波の波面が溶融燃料を分断する可能性がある。その分断で非常に細かい粒子ができると、燃料物質の中に蓄えられている膨大な熱が、瞬時にナトリウムに伝えられ、ナトリウムの蒸気爆発が起きる。蒸気爆発の力の大きさは、チェルノブイリの事故が示した通りである。
炉心の上部を被っていた重さ1000トンの鋼鉄の板が、燃料・冷却材相互反応によって動かされ垂直の状態になった。(RBMKの場合は、冷却材は水である。)
まず、重大な原子炉事故が起きた場合に、放射能が外部に漏れることを防ぐための障壁(バリアー)がいくつかある。これらの障壁としては、原子炉容器と格納容器がある。後者は、鋼鉄の容器(シェル)とコンクリートの建造物からなる。問題は、これらの容器が、炉心の崩壊とその後の事象によってもたらされる衝撃に耐えられるか、耐えられるとすれば、どれはどの時間耐えられるかということである。この衝撃は、事故の過程で生み出される「機械的エネルギー」によって表される。SNR300の許認可過程においては、原子炉容器及び格納容器は、370メガワット・秒の「機械的エネルギー」の放出に耐えなければならないとされた。スーパーフェニックスの場合には、この数字は800メガワット・秒である。
もんじゅの場合、原子炉の容器の段階で380メガワット・秒、格納容器の段階でその数値はさらに低くなる。
ベネケ博士はこの度、環境保護団体グリーンピースの招きで来日した。
動力炉・核燃料開発事業団は、一般には公開されていないもんじゅ原子炉への立ち入りをベネケ博士とグリーンピースに許可した。事故現場に第三者的立場の一般市民が入るのは、初めて。ベネケ博士は東京と敦賀にて、もんじゅ立入後の報告を兼ねた講演会を行なう。
「ドイツでは高速増殖炉に対する信頼と自信は完全に失われている。そしてフランスもその自信がゆらぎはじめている。高速増殖炉の危険性に関する研究は各国が協力している国際的事業なので、日本だけが高速増殖炉の安全の謎を解く可能性は極めて低い。」とベネケ博士は語った。
「高速増殖炉もんじゅに最悪の事故は起こらない、と証明することは不可能」、とドイツの核物理学者ヨハン・ベネケ博士は、本日国会議員への講演で語った。また、もんじゅで最悪の事故が起きた場合、放射能を漏らさないように保証する科学的方法もないとも語った。
「もんじゅは、大事故の場合でも、ある程度のエネルギーの放出に耐えられるように設計されてはいる。しかし、我々科学者には、最悪の事故の場合の爆発力を予想することは不可能であり、最悪の条件を想定すれば、原子力発電所の安全性については自信がもてない。原子炉は完全に.崩壊しないとは誰にも保証できない。」とベネケ博士。
「これが、ドイツの高速増殖炉が1991年に運転開始許可を得ることができなかった大きな理由である。もんじゅの設計は、ドイツの中止された高速増殖炉とはぼ同じである。ドイツの高速増殖炉SNR300通称「カルカー」は炉心崩壊の場合、370メガワット・秒(メガジュール) のエネルギー放出に耐えられるように設計されている。しかし炉心崩壊のエネルギーが370メガワット・秒でおさまるということが保証できなかったのである。もんじゅの場合は380メガワット・秒のようだが保証できない点は同じである。」
ベネケ博士は現在ドイツのミュンヘン大学で教鞭をとられているが、リーダーとして高速増殖炉SNR300の安全解析をおこなった。 彼のグループの調査の結論は、高速増殖炉の最悪の事故が引き起こす爆発エネルギーがどれほど強いかを知る方法はどこにもない、ということであった。最悪の事故をわざわざ起こしてみるわけにもいかず、つまり危険な放射能を帯びた物質を炉のなかに封じ込めておくほど、高遷増殖炉の構造は強いということをテストする方法はないということである。
「ベーテ・タイト事故」の過程での「機械的エネルギー」の放出の上限を推定することは可能だろうか。また、この上限を推定するための方法は、どのようなものであろうか。
「試行錯誤」を積み重ねるという伝統的な科学的・工学的アプローチは、原子力の安全牲には適用できない。加熱に対する増殖炉のシステム全体の反応を研究するためには、総合的な炉心崩壊テストが必要だろうが、このようなテストは行われたことがない。しかし、小規模の総合的テストでは、大規模の増殖炉の安全牲について学ぶには不十分だろう。大規模な実験は、いうまでもなく、実行不能である。ここに、増殖炉の安全性の基本的ジレンマがあるようである。特に、炉心溶融の際の原子炉容器内における多成分かつ多層の流体の力学に関する理解が欠けていることを考慮するとなおさらである。
増殖炉の安全牲に関する研究は、その基礎とすべき実験的データが部分的にしか存在しないため、コンピューター・モデルに頼らざるを得ない。しかし、そこで使われるコンピューター・コードは、首尾一貫した形では検証されていない。(日本の研究者たちが、ドイツや米国の研究者より進んでいるということはありそうにない。なぜなら、原子炉の安全牲研究というのは国際的なものだからである。)たとえば、A・E・ウォルターとL・W・ディートリッヒは、1988年にNuclear Safety誌に掲載された論文において、非常に高い出力状況での燃料のディスロケーション(燃料の配置状況の変化)に関する予測の検証は、米国のテスト施設や診断法の能力を超えていると述べている。著者らはさらに、続けて、幸運なことに、炉の設計に技術革新があるかもしれないという。それによって、問題の事象シーケンスの発生の可能性が非常に小さくなって、詳細な計算は必要なくなることを彼らは願っているのである。
したがってもんじゅの原子炉格納容器 一放射能の中心部分と周辺環境の間の最終的障壁(バリア)-は、大惨事に対する防備としては効果的であると、断定できない。
付記
高速増殖炉”最悪の事故”という以下の説明は「SNR300(カルカー)とスーパーフェニックス(クレイ・マルビル)の教訓」というベネケ博士が来日ツアーのために書いたものから引用したものである。
「ベーテ・タイト事故」という炉心崩壊事故は、LMFBRにとって特有のものである(この名前は、潜在的破壊力を推定するための最初のモデルを1956年に提案した二人の物理学者の名前をとったものである)。この型の原子炉の物理的特性、それに、炉心の幾何学的配置のために、核反応を発端とする爆発が生じて炉心が部分的に、あるいは、完全に崩壊して吹き飛ぶことになる可能性がある。爆発力は、主として、蒸発した燃料の圧力からくる。ある状況の下では、炉心の崩壊は、いわゆる「燃料・冷却材相互作用」によって強化される可能性がある。これは、溶融燃料と、炉心の回りにある液体ナトリウムの残存物との間の熱反応である。ナトリウムの一部は、直ちに蒸発し、その結果生じた圧力波の波面が溶融燃料を分断する可能性がある。その分断で非常に細かい粒子ができると、燃料物質の中に蓄えられている膨大な熱が、瞬時にナトリウムに伝えられ、ナトリウムの蒸気爆発が起きる。蒸気爆発の力の大きさは、チェルノブイリの事故が示した通りである。
炉心の上部を被っていた重さ1000トンの鋼鉄の板が、燃料・冷却材相互反応によって動かされ垂直の状態になった。(RBMKの場合は、冷却材は水である。)
まず、重大な原子炉事故が起きた場合に、放射能が外部に漏れることを防ぐための障壁(バリアー)がいくつかある。これらの障壁としては、原子炉容器と格納容器がある。後者は、鋼鉄の容器(シェル)とコンクリートの建造物からなる。問題は、これらの容器が、炉心の崩壊とその後の事象によってもたらされる衝撃に耐えられるか、耐えられるとすれば、どれはどの時間耐えられるかということである。この衝撃は、事故の過程で生み出される「機械的エネルギー」によって表される。SNR300の許認可過程においては、原子炉容器及び格納容器は、370メガワット・秒の「機械的エネルギー」の放出に耐えなければならないとされた。スーパーフェニックスの場合には、この数字は800メガワット・秒である。
もんじゅの場合、原子炉の容器の段階で380メガワット・秒、格納容器の段階でその数値はさらに低くなる。
ベネケ博士はこの度、環境保護団体グリーンピースの招きで来日した。
動力炉・核燃料開発事業団は、一般には公開されていないもんじゅ原子炉への立ち入りをベネケ博士とグリーンピースに許可した。事故現場に第三者的立場の一般市民が入るのは、初めて。ベネケ博士は東京と敦賀にて、もんじゅ立入後の報告を兼ねた講演会を行なう。
「ドイツでは高速増殖炉に対する信頼と自信は完全に失われている。そしてフランスもその自信がゆらぎはじめている。高速増殖炉の危険性に関する研究は各国が協力している国際的事業なので、日本だけが高速増殖炉の安全の謎を解く可能性は極めて低い。」とベネケ博士は語った。