東日本大震災・福島第一原発事故から13年ーー消えない災害と原発リスク、原子力・エネルギー政策の根本的な転換を
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都港区)は、東日本大震災並びに東京電力福島第一原発事故の発生から13年となった本日、以下の声明を発表しました。
グリーンピース・ジャパン事務局長、サム・アネスリー
「東日本大震災と東京電力福島第一原発事故発生から今日で13年となりました。改めまして、震災で犠牲となった方々とそのご遺族に、深く哀悼の意を表します。
福島県の帰還困難区域では、昨年、特定復興再生拠点区域(復興拠点)に続き、特定帰還居住区域が新たに設定され、住民の早期帰還を目指して除染作業が始まりました。その一方で、政府が明確に原発回帰に舵をとり、昨年8月には福島第一原発の処理済み汚染水の海洋放出を開始。しかし今年1月の能登半島地震で、原発のリスク管理と原子力災害時の避難計画の不備が露呈し、安全を軽視する政府の動きに、強い危機感を感じています。
2024年1月1日に発生した能登半島沖を震源とするマグニチュード7.6の地震で、北陸電力志賀原発(石川県)では、変圧器の配管損傷により、外部送電線5本のうち2本が使えなくなり、完全復旧には6カ月以上かかるとされています。(注1)電源喪失によりメルトダウンを起こした福島第一原発事故後、原発の非常用バックアップ電源に特に重点を置くことが求められている中で、さらに想定外の事態が起きたといえます。
石川県では、地震の影響で、2月28日時点で7万4千戸以上の家屋が破損するなどし、周辺の道路も寸断され、もし原発事故が起きていた場合、国が指針で定めている屋内避難や区域外への退避が困難な状況でした。(注2)原発立地地域の避難計画は、これまで議論されてきましたが、今回のような甚大な災害時に原発事故が重なれば、被曝を避けるための住民の安全確保は、ほぼ不可能であることがはっきりしました。
これらは、数ある原発のリスクの一部に過ぎません。そして、そのリスクは、日本で稼働する原子炉の老朽化が進むにつれ、必然的に高まっています。2023年5月、政府のGX(グリーン・トランスフォーメーション)基本戦略実現のための関連法案であるGX推進法とGX脱炭素電源法が国会で成立しました。再生可能エネルギーの主力電源化を掲げる一方で、原発の再稼働や次世代革新炉の開発を進めるとしており、さらに、これまで40年としていた原子炉の運転期間について、60年超の運転を認めています。(注3)この政府の原子力政策は、福島の教訓を積極的に否定するものです。
一方、将来のエネルギー政策の方向性を定める第7次エネルギー基本計画が、2024年後半にも策定されるとみられています。エネルギーの急速な脱炭素化への国際的圧力が高まっている中で、さらに2022年以降、各地の紛争に端を発した世界的なエネルギー危機が加わり、国の中長期的なエネルギー政策の方向性を決める同計画の重要性はこれまでになく高いものとなっています。日本は温室効果ガスの排出量削減や再生可能エネルギー導入において、他の先進7カ国と比べ大きく遅れをとっていますが、その最たる要因の一つは、化石燃料や原子力をベースとした既存のエネルギー・インフラをできるだけ長く維持するという考えです。
政府は、福島第一原発事故後に採用された「原子力エネルギーへの依存度を可能な限り低減することを目指す」という方針に代わり、原子力推進に回帰し、その大きな理由として、エネルギーの安定供給と脱炭素化の必要性を挙げました。しかし、福島第一原発事故から13年を経ても、そのリスクは管理できる状態とは程遠く、何万人もの人生を翻弄した原発災害は未だ現在進行形で続いています。再生可能エネルギー源に恵まれ、技術立国であり、地震の頻発する日本において、原子力による発電を選択する合理的な理由はありません。政府は現在のエネルギー政策を抜本的に見直し、原発や化石燃料の利用をやめ、健康や快適性・効率の増進につながる形での省エネと、地域や自然と調和する形での再生可能エネルギー導入の拡大を大きく進めていくことを、第7次エネルギー基本計画などにおいて加速すべきです」
以上
(注1)NHK「志賀原発 完全な復旧には半年以上かかる見通し トラブル続く」(2024年1月22日)
(注2)石川県「令和6年能登半島地震による被害等の状況について」(2024年2月28日)