エアコン稼働中も床付近の温度がほぼ18度以下にーー真冬の小学校体育館温度を測定
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都港区)は3月3日、東京都の小学校で、体育館の温度を10日間にわたって継続的に測定した調査結果を発表しました。調査の結果、断熱が施されていない体育館では、エアコンの設定温度を23度にしていても、稼働時間の9割以上で床付近の温度が18度以下(注1)となっており、快適な温度を保つことが困難であることがわかりました。災害などの非常時に体育館を避難所として使用した場合、避難者が快適に過ごすことが難しい可能性があることから、今後進んでいく見込みの体育館への空調設置(注2)と併せて断熱改修も必要であることが明らかになりました。


<主な調査結果>
- エアコンを稼働している間(注3)、床付近の温度が18度以下である時間がおよそ9割以上にのぼることがわかった。床から110センチ地点と200センチ地点では、それぞれ約90%と約80%の時間で、温度が18度以下となった。一方、床から400センチ地点では、温度が18度を下回る時間が全体の約54%程度にとどまった。(上グラフ参照)
- エアコンが稼働している間、平均外気温は8度、床から20センチ地点の平均は11.8度と、大差がないことが明らかになった。
- エアコンが稼働している間、床付近の温度上昇が体育館の上部と比べて著しく低いことがわかった。最低気温(通常、エアコン稼働開始時に記録)から最高気温(エアコン稼働後しばらくして記録)までの間で、床付近の温度(床から20センチ地点)は平均8.2度しか上昇しなかったのに対し、天井付近(床から400センチ地点)では平均で約14.9度上昇しており、温度上昇の幅に大きな差があることが明らかになった。(下グラフ参照)
<調査方法>
期間:2025年1月28日(火)〜2025年2月6日(木) ※1月27日(月)、2月7日(金)にはサーモグラフィー撮影を実施
対象:東京都内の公立小学校の体育館(1校)
方法:データロガー温度計を体育館内の4カ所(床から20センチ地点、110センチ地点、200センチ地点、400センチ地点に各2台)、屋外1カ所(百葉箱内)に2台、計10台設置
グリーンピース・ジャパン 気候変動・エネルギー担当、鈴木かずえ
「昨今の猛暑の影響もあり、政府は学校体育館の空調設備の整備を進めるとし、支援策も打ち出しています。しかし本調査結果から、体育館を快適に利用するためには、空調設備の設置だけでなく、断熱改修もセットで施す必要性が高いことがわかりました。体育館は避難所として利用される場合も多く、この問題は子供達だけではなく、非常時に避難民となりうる全ての市民に関わる問題です。政府は、体育館の断熱改修を空調設置支援の『要件』と定め、100%の経済支援を行うべきです」
(注1)WHO(世界保健機構)は冬場の室内温度を18度以上にするよう強く勧告しており、とりわけ高齢者や子供、慢性疾患を持つ人には、さらに部屋を温めることを推奨している。(参照:WHO “Housing and health guidelines”)
(注2)文部科学省「学校体育館等への空調整備の加速に向けて」(2025年1月公開)
(注3)調査期間中、午前8時25分から午後9時の間のいずれかの時間帯にエアコンを稼働させた。しかし、エアコンのON/OFFのタイミングが不規則であるため、1時間ごとの平均値では、体育館内の温度の上昇や下降のタイミングを正確に反映できない可能性がある。そこで、1時間ごとの平均値に頼るのではなく、15分ごとの記録データを用いて温度変化を可視化した。