国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区、以下グリーンピース)は、本日31日、東京ガス、出光興産、九州電力が、千葉県袖ヶ浦市での石炭火力発電所の計画中止を発表したことを評価する一方、より長期的視点に立ち、液化天然ガス(LNG)ではなく、自然エネルギーへのシフトを求める以下の声明を発表しました(注1)。

 

グリーンピース・ジャパン エネルギー担当 関根彩子

「脱石炭に向けた決定は前向きであり、パリ協定や昨年のIPCC1.5度報告書の指摘にかなう動きとして評価します。しかし、化石燃料であるLNGへの転換は解決策とはいえません。気候科学からのメッセージは明白です。近年の異常気象に見られるようなこれ以上の気候変動の悪影響を回避するために、たとえLNGであったとしても、新規の化石燃料の発電所を許容する余地はありません。喫緊で求められるのは、エネルギー効率向上と持続可能な自然エネルギーへのシフトと投資を加速することです。

 

ごく最近、ドイツ政府の諮問委員会は、2038年までの石炭火力の段階的廃止目標を発表しました(注2)。 欧米諸国の多くが、2015年から2030年までの石炭火力発電の廃止目標を掲げています。日本の事業者はビジネスリスクから身を守るために論理的な動きを始めている一方、日本政府の現在のエネルギー政策は急速に時代遅れになっています。

 

日本が世界の気候変動・エネルギーの政策において信頼され、産業界が持続可能であるためには、気候科学とリスク分析に基づく長期的な観点に立ち、国内の他の石炭事業も、袖ヶ浦の計画のように中止すべきです。これはエネルギー事業者、資金提供者、そして政府にとって緊急の課題です。」

 

 

■市民の働きかけ

グリーンピース・ジャパンは、石炭火力を考える東京湾の会の一員として、袖ヶ浦市民が望む政策研究会や気候ネットワークなどともに、3社に対し、事業者との面談、大気汚染と健康影響の関係マップの発表、署名活動、住民アンケートなどを通じて、繰り返し事業中止を働きかけてきました(注3)。

 

■従来のエネルギー供給モデルが変化

3社の当初の計画は2百万KWの大規模な石炭火力発電所を建設することでしたが、本日の発表によると、十分な事業性が見込めないとの判断を下しました。これは、従来のエネルギー供給モデルが、気候変動の進展およびそれに伴う投資環境の変化と、大きく食い違うようになってきたことの現れといえます。昨年、日本国内でも複数の石炭火力発電所の計画が中止されています(注4)。

 

■世界で進む脱石炭、資金調達は困難に

石炭火力発電事業は、日本だけでなく世界的にすでに経営的な課題に直面しています。 昨年の調査では、世界の石炭火力発電所の42%がすでに採算が取れなくなっており、その数は近い将来さらに増すと予測されています(注5)。また、石炭融資への制限または全面的な禁止を発表する金融機関が増加しており、新規石炭事業のための資金調達はますます困難になっています(注6)。

 

注1)東京ガス プレスリリース

注2)ドイツの石炭火力全廃を歓迎、日本も続け(グリーンピース・プレスリリース)

注3)国内最大級石炭火力発電計画と気候変動に関する近隣住民 1000人アンケートーー 建設計画を8割以上が知らず(グリーンピース・プレスリリース)
オンライン署名「異常気象を激化させる石炭より自然エネルギーを!」

注4)近年、計画中止または燃料変更となった石炭事業

注5)Almost Half Coal Power Plants Seen Unprofitable to Operate(ブルームバーグ記事)

注6)Bank moves out of coal(バンクトラック資料)

国際環境NGOグリーンピース・ジャパン