第8回目放射線調査
第8回目調査
福島県いわき市の2か所の港で行った海洋調査
調査結果まとめ
前回(9月)調査に引き続き今回の調査でも、日本政府の定める暫定規制値を超えるものはないものの、すべてのサンプルから放射性物質を検出し、海や魚介類の放射能汚染問題は、私たちが長期にわたり向き合っていかなければならない問題だということを、改めて確認しました。
原発からの距離が遠いほど放射能汚染度が低いとは言えないことが、改めて確認されました。
例えば今回の調査結果では:
- 福島第一原子力発電所にやや近い豊間港沖で採取したヒラメの方が、小名浜で採取したヒラメよりも数値が低い。
- ナガアオサ(海藻)においても、原発により近い広野町の海岸で採取したサンプルの方が、久ノ浜港で採取したものよりも数値が低い。
地域の漁業復興と消費者の安全性の確保には、水揚げの際に安全な魚と危険な魚を分別する、十分なスクリーニング(政府や県が主導)と、消費者が魚介類を購入する際に商品を選択できるだけの情報提供(政府やスーパー企業が主導)が不可欠です。
スーパーなどに並ぶ魚介類を手に取る消費者が求めているものは、「暫定規制値以下だから安心・安全」という情報ではなく、「○○ベクレル/kg」という具体的数値。
政府や小売店は、安心して魚介類を食べたいと望む消費者のニーズを受け止め、放射能汚染に関する自社測定、その測定結果の数値公表、そして魚介類商品の漁獲海域の情報提供につとめる必要があります。
調査の背景
2011年5月、7月、8月、9月にグリーンピースが行った海洋調査では、福島沖の魚や海藻から放射性セシウムを検出しました。
震災から7か月が過ぎました。
隣県で漁業が行われ魚介類が流通している一方で、陸続き(海続き)の福島では政府による水揚げ時のスクリーニングが不十分であることから、依然として漁業再開の目途が立たないままです。
毎日漁港で開かれていた朝会に集う漁業関係者の方々の疲れは、既にピークを越えています。
「漁業再開できるのか、いつできるのか、その決断材料が欲しい。このままではここの漁協も、あと半年や一年でなくなるかもしれない」。
この声を受けて、グリーンピースは10月12日~13日にいわき市にて海洋調査を行いました。
調査結果詳細
核種別
種類別セシウム(134+137)検出結果
漁師のみなさんの声
- 「政府は全然動いてくれない。俺たちはモルモットか」
政府は放射能が人体やコミュニティーにどのような影響を及ぼすのか、俺たち漁師を実験台にして調べているのではないか。
政府がここまで動かないと、そんな考えも生まれてくるよ。
モルモットになった気分だ。 - 「このままではこの漁協も、あと半年か1年で閉めることになるだろう」
めどの立たない漁業再開をいつまでも待っているわけにもいかず、生活のために他の仕事に就く漁師もいる。
漁師同士で話をしても、職探しの話がよく出るよ。
漁業がなくなってしまえば、もちろん漁協もいらなくなる。
漁業再開を待っていていいのか、諦めるべきなのか、その判断基準が欲しい。
国はどう考えているのか、その見解が知りたい。 - 「日本中から孤立している気分だ」
取材に来る記者には何度も伝えているのに、いっこうに記事にならない。
俺たちのこの現状なんて、もう東京では誰も気にしていないだろ?
日本中から孤立している気がするよ。
どうせ国も、「この海で魚が獲れないならば他の海域で獲ればいい」としか考えていないだろう。
調査の日程
2011年10月12日・13日
調査場所・範囲
福島県いわき市:久ノ浜港、小名浜港
調査結果、漁師のみなさんの声を受けて: グリーンピースの今後の活動
- 今後も地域の漁業関係者と共に海洋調査を継続します。
- 漁業再開のため、日本政府に対し、魚介類のスクリーニングの強化、暫定規制値の見直し、そして魚介類商品販売現場にて放射能汚染の数値と漁獲海域の表示の義務化、を要請しています。
- 漁業再開と消費者の安全確保のため、消費者と共に大手スーパーに対し、流通基準(政府による暫定規制値よりも厳しい基準)の策定、魚介類商品の自社検査と分析結果の消費者への公表、魚介類商品の漁獲海域の消費者への公表を要請しています。
- 漁業再開と消費者の安全確保のため、大手スーパーの店舗にて魚介類商品を購入し放射性物質の抜き打ち検査を行っています。
大切なご支援ありがとうございます
グリーンピースは、東電福島第一原子力発電所事故が起きた直後の2011年3月末から放射線調査チームを結成し、福島で放射能汚染の実態調査を行ってきました。
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一人一人のご寄付が、政府や企業からの援助を受けずに、独立した調査とキャンペーン活動を可能にしています。
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