6月1日(日)、青森市にある小学校の教室の学習環境が、断熱改修によって大幅に改善されました。「青森の温暖化対策を考える会」が中心となり実施した断熱改修には、企画段階から実施まで、グリーンピース・ジャパンも協力しました。改修は、子どもたちが地域の工務店の協力をえて、DIY:自分たちの力で断熱材や二重窓の取り付けをする「ワークショップ」形式で行われました。「断熱ワークショップ」は青森県内では初の試みでした。

市民が中心となり、学校の教室の断熱ワークショップを開催

「青森の温暖化対策を考える会」代表の中堀さんは、これまで地元の自治体に気候対策の強化をもとめる要望書の提出や気候変動についてのイベントの開催など様々な活動をしてきました。今回の断熱ワークショップ開催にあたり、教育委員会や工務店の協力を得ながら、またクラウドファンディングで資金を募り、たくさんの人に応援、注目されるイベントとなりました。この記事では当日の様子をお伝えします。

【当日のスケジュール

9:00 開始の挨拶・ジェスチャーゲーム

9:15 気候変動と断熱についての授業

9:25 注意事項、道具の使い方などの説明

9:30 断熱ワークショップ作業開始

11:40 お昼休憩、断熱改修経験者の方のお話

12:40 じゃんけんゲーム、午後の作業開始

14:00 作業終了、サーマル画像撮影、確認

教室の壁と窓に断熱材を取り付け

ワークショップには小学生6人とその保護者の方が参加。9時から集まり、作業を始める前にグリーンピース・ジャパンによる気候変動と断熱についての簡単なレクチャーを実施しました。参加者はクイズ形式で昨今より深刻化している気候変動についての影響や、気候変動対策としての断熱について学びました。

そのあと早速断熱改修の作業に移ります。まずは、廊下側の壁。工務店の方が見本を見せたあと、小学生の参加者全員が実際に手を動かし実践します。断熱材をカットするところから、断熱材を入れた後に板をはめ込んでいく作業も全て大工さんと一緒に行いました。

断熱材の貼り付けでは、主催者による参加者を楽しませる工夫も。断熱材を取り付けた後、上に板を被せる前にみんなで断熱材に将来の夢を書き込んだり、絵を描いたりしました。「大工さんになりたい」と、普段は見ることのない大工さんの仕事を間近で見て、憧れを抱く小学生もいました。

壁のあとは廊下側の窓です。元々ある窓ガラスの枠の上に内窓を取り付けます。

お昼休憩の間には、自宅の断熱改修経験者の方から体験談を聞く時間もありました。電気代の削減となっただけでなく、家の中の寒暖差がなくなり快適な室温が保たれるようになったなど、私たちの安全で健康的な暮らしのために断熱がとても大切であることがわかりました。

最後の作業は、外側の窓の断熱です。外は廊下側の窓よりも厚めの断熱材を使用。小学生の参加者も段々と慣れて自ら率先して作業をし周りの大人も驚くほど。何よりも大工さんと一緒に実際に手を動かして作業することを楽しんでいました。そして午後14時には全ての作業を終了。あっと言う間でした。

最後はみんなでサーマル(熱)画像を確認。前日に撮った断熱なしの画像と断熱ワークショップ後に撮影した断熱ありの画像を比較しました。断熱改修後は外からの熱が伝わりにくくなり、これからの時期、外気温がさらに高くなったとき、室内を涼しくしてくれる効果が期待できます。

何よりも「楽しい」断熱改修に、参加者も笑顔

小学生の参加者は参加して、「楽しかった」「慣れたらすぐできた」と感想を述べていました。参加者の中には「断熱」という言葉を初めて聞いたという生徒も。

今回参加して感じたことは、自分の手を動かして作業することの大切さです。実は、今回のような内窓取り付けなら、自宅でも簡単に、この夏暑くなる前にでもできてしまうのです。どこか難しそうな断熱改修も、実際にやってみることで身近に感じられるものになりました。

また、ワークショップ中は作業を開始する前に工務店の方と一緒にジェスチャーゲームを行ったり、お昼ご飯のあとにはじゃんけんゲームを行うなど、楽しめる工夫がたくさんありました。楽しく学ぶことができる断熱ワークショップが今後も全国様々な地域に広がると嬉しいですね。

当日の様子を動画でもぜひご覧ください。

私たちの健康と安全な暮らしに欠かせない断熱を普及させるために

断熱と聞くと冬の寒さをしのぐためのもの、と感じる人も多いかもしれません。しかし、断熱は冬も夏も一年を通して効果を発揮します。年々暑さが深刻化していますが、冷房をつければ全て解決というわけではなく、電気代の増加に繋がったり、断熱性能が十分でないと、冷房をつけても十分に室温が下がらないこともあります。

夏は外から暑い外気が入り、室内で冷やした空気が窓や天井から漏れ出します。熱中症事故は年々増加しており、私たちの暮らしと命を守るために早急に日本の建築物の断熱性能を高める必要があります。

子どもたちが一日の多くを過ごす学校でも同じことが言えます。広い教室や体育館は空調が効きにくく、夏は冷房をつけていても暑くなることも。今回のワークショップの参加者も冷房がついていても暑い教室を経験したことがあると話していました。

体育館はまだ空調がついていないことがほとんどですが、空調設置と合わせて断熱改修を行うことが非常に重要です。そこでグリーンピースでは、学校の教室や体育館の断熱性能を高めるためのキャンペーンを実施しています。

現在は学校の体育館の断熱改修を進めるために署名を集めています。提出時期の8月も間近となりました。一人でも多くの声を届けるためにご協力お願いします。