Team PlantsのRinaです。
私はオーストラリア北西部に位置するクイーンズランド州にいます。

世界最古の熱帯雨林が広がるオーストラリアクイーンズランド州。
ここで、サスティナブルな方法で蜂を育てている、オーガニック養蜂場があります。
今回この養蜂場を取材しました。

ダンさんの養蜂場

今回養蜂場を見せてくれたのはダンさん。
ダンさんは、オーストラリアの農業水産省DAF(Department of Agriculture and Fisheries)で働く傍ら、自宅にホビーファームを持ち、ビーキーピングをしています。

ダンさんはクイーンズランド州に6つの養蜂場を持っていて、すべての養蜂場で化学物質や農薬を使用せず、自然に則した方法でミツバチを管理しています。

養蜂場は、ブッシュが茂る自然の中や、民家の集まる住宅街、大学のキャンパス内など、クイーンズランド州の様々な場所にあります。
そこで蜂蜜や蜜ろうを採取し、異なった環境を利用して蜂の寄生虫や病気について研究しています。

私が今回訪れたのは、ケアンズとレーベンシューの養蜂場です。
ケアンズにあるダンさんの自宅敷地内の養蜂場では、ミツバチが作り始めたばかりの巣を管理しています。

そして、ある程度巣が成長すると、レーベンシューなどほかの養蜂場に持っていきます。

命の循環を重んじるダンさんのファーム

ダンさんのファームでは、養蜂場とともに野菜や果物を育てています。
養蜂場の蜂たちが作物の受粉を助けるのです。

さらにダンさんは、養蜂場内に鶏を7羽飼っています。
鶏たちは、土を掘り起こして、蜂の巣に住みつく寄生虫を食べます。
この寄生虫は蜂の巣に卵を産み、蜂の幼虫を餌にするのです。
ミツバチにとっての寄生虫を、鶏たちはついばんで駆除してくれるのです。

虫や野菜くずなどを食べて育った鶏たちからは、健康な卵が採れます。
それをダンさんは家族と大切に食べます。
卵を産まなくなった年老いた鶏も、最期まで育てるそうです。

そして、鶏たちのふんは肥料になります。
ダンさんは、その肥料を使って作物を育て、やがて花をつけた作物の受粉をミツバチが助け、実りを与えます。

ダンさんはこの家で小さな命の循環を作っているのです。

成長したミツバチの移動

ダンさんは、自宅の庭で管理されている若い巣が成長すると、他の養蜂場に移動します。
私が訪れた養蜂場は、クイーンズランド南内陸部に位置するレーベンシュー。

レーベンシューの標高はおよそ1000メートル。
クイーンズランド州で最も標高の高い町です。
人口も少なく自然とブッシュが豊富にあり、ここでは花の香り豊かな素晴らしいはちみつが作られます。

今のオーストラリアは真夏の雨季。
天候の変化が激しく、突然降るスコールに、ミツバチたちはご機嫌ななめです。

驚きのミツバチの生態

ベンさんのミツバチは、1つのコロニーに最大約8万匹もいます。
ハチはとても頭がよく、巣箱内の気温と湿度を保つため、暑い日は外から水を持ち帰って巣箱内に撒いたり、羽をファンのようにして風を起こして空気を循環させます。

巣箱にはたくさんの幼虫がいます。
この幼虫は、すべて1匹の女王バチから生まれます。

働き蜂の寿命は約三週間です。
しかし女王バチは7~8年生きることができます。
女王バチだけが食べることができるローヤルゼリーには、はちみつを凌ぐ多くの栄養が含まれています。
ローヤルゼリーを食べることで、体が大きく成長し、ほかのミツバチよりはるかに長生きをし、大量の卵を産み続けることができるのです。
ただし、女王蜂は寿命まで生きることはありません。
年を取って卵を産む数が減ってくる2~3年で、新しい女王蜂と交代しなければいけません。

ハチと花の開花植物の共存関係

ハチはすべての栄養素を花から得ています。
花の蜜から炭水化物を摂取し、花粉からタンパク質を摂取します。
ハチは最大約3㎞飛ぶことができ、この飛行範囲で餌となる花を探し、巣に持ち帰ります。
ハチは花の中にもぐりこんだ時、体に花粉が付きます。
そして花から花へと飛び回って受粉が行われます。
こうしてハチは開花植物の受粉を助ける大きな役割を果たしていて、私たちが食べている作物の3分の1を受粉していると言われています。ハチにとって花は大切な食料であると同時に、植物にとってもハチは受粉を媒介する大切なパートナーです。
ハチと開花植物は、素晴らしい共存関係を築いているのです。

世界で広がるネオニコチノイド系農薬の使用規制・禁止

ミツバチや昆虫が花粉を運び植物の受粉を助け、環境保護に大きく関わっていることから、世界では農薬の規制が進んでいます。
中でもネオニコチノイド系農薬は、ミツバチがコロニーごと失踪したり、大量死をする蜂群崩壊症候群(CCD)の原因であることが危惧されていて、EUでは2018年4月に屋外での使用が禁止されました。
EUだけでなく、アメリカや中国、韓国でもネオニコチノイド系製剤をはじめとした農薬を規制し、オーガニックや生態系農業を推進しています。
このように世界でネオニコチノイド系農薬を規制する動きが強まる中、2017年12月25日、日本の農林水産省は、ネオニコチノイド系農薬スルホキサフロルの使用を認可しました。
これは、2015年、アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)が登録を取消、販売禁止にした農薬です(後に使用範囲を制限して再登録)。
日本の農業は、環境保護の観点で世界から大きく遅れを取っています。
グリーンピースジャパンは、EU、アメリカ、アジア諸国に倣い、日本政府もネオニコチノイド系農薬を規制するよう、直ちに農業政策を見直す必要があると考えます。

次回≫ダンさんのオーガニック養蜂場をご紹介します。