国連環境総会で、プラスチック汚染に対処する法的拘束力のある国際プラスチック条約を、2024年までに制定するために動き出すことが決まりました!化石燃料の採掘から廃棄までのどの瞬間にも、プラスチックが地球環境や私たち人間に有害な汚染を生み出していることを、国際社会が認め、それを規制するために動き出した歴史的瞬間です。プラスチック条約の内容はどうなるのでしょうか?そして現状の決議の課題とは?

「プラスチック条約」とは?

2月28日から3月2日まで開催されていた国連環境総会*1で各国政府が、国際的なプラスチック規制のための条約をつくる決議に合意しました*

まだ実際の条約ができたわけではありませんが、2024年を目標に、法的拘束力のある国際プラスチック条約をつくるために、迅速に交渉を始めることが合意され、その大まかな内容が決められました。

国連環境総会が始まるまでいくつかの決議案が議論されており、その中には、出てしまったプラスチックごみを海に流さないようにするなど、川下の対策に重点を置いた案もありました。

グリーンピースは、使い捨てプラスチックを大幅に減らし、繰り返し使うリユース・リフィルの取り組みを加速させる内容で合意することを目指して、6人の代表団が国連環境総会とその準備会合に参加して、対話に臨みました。

そして、プラスチック汚染の危機を終わらせたいと願う世界中の声が各国リーダーに届き、原料となる化石燃料の採掘からごみの廃棄まで、プラスチックの全ライフサイクルで、規制を行う方向性で合意されました。

*1 第五回国連環境総会第二回会合(UNEA5.2)

どんな内容になるの?

合意された決議は、包括的かつ野心的で、効果のあるプラスチック条約の実現へ期待できる内容です。重要な決議のポイントを見ていきましょう。

インドネシアのごみ処理場で、燃料として燃やされるごみを回収する男性(2019年2月)

1. 法的拘束力がある

これまでのように、各国政府や企業による自発的なプラスチック汚染対策に頼るのではなく、条約で合意される内容について、法的拘束力が発生することになります。これからの交渉で、条約のどの部分に法的拘束力を持たせるか、または、自主的なコミットメントに任せるかを決めることになるでしょう。

2. 原料の採掘から製造、廃棄まで、プラスチックの全ライフサイクルを規制

この決議では、プラスチックのライフサイクル全体を対象とすることが明記されました。さらに本文中では、「持続可能な生産」「製品設計」「廃棄物管理」などの重要な文言に言及されています。この決議は、プラスチックが海洋汚染以外にも大きな問題を引き起こしていることを認め、より広い範囲で規制する必要性を明確に示しています。さらに、プラスチック汚染が環境だけでなく、社会や経済にも悪影響を及ぼすことにも言及しています。

アメリカ・テキサスにある石油化学製品の工場群。プラスチックの99%は石油由来で、もしプラスチックが”国”だとすれば、原料採掘から廃棄までの排出量は、日本の1年間の温室効果ガス排出量を超える(2020年12月)

3. プラスチックによる人の健康への影響を防ぐことに言及

プラスチック汚染に伴う人間の健康へのリスクも、決議の中で正式に認められました。プラスチック汚染による人間の健康やウェルビーイングへの悪影響を防止することを目指します。しかし、石油化学製品や廃棄物処理場の周辺に住む人々やプラスチック汚染の影響を最も受けている人々については言及されず、優先的に取り組むことにはなっていません。

一方で、プラスチックごみの回収、仕分け、リサイクルに携わる人々やウェイスト・ピッカー*2についても、言及されています。しかし、条約が施行された場合に、こうした活動に携わる人々に影響しうる経済的インパクトについては、決議では明確に示されていません。プラスチック条約に向けた交渉では、公正な移行をより重視する必要があります。

*2 経済発展途上国のごみ最終処分場などで、有価物を収集して生計を立てる人

4.プラスチックを製造・流通させる企業が積極的にプラスチック削減へ動くことを求める

この決議では、プラスチックを生産・流通させる民間企業の責任が重要であることを認識し、解決策の推進に向けて積極的に行動することを促しています。しかし、決議内での表現は少し弱く、ここからの交渉の段階で、企業による行動をより強く求め、使い捨てプラスチックを大幅に減らすという根本的な解決策が優先されるようにすることが必要です。また、この条約が本当に効果を持つためには、企業が重要な役割を果たすことになります。

ブラジル・サンパウロのスーパーに並ぶペットボトル。コカ・コーラは、年間1,200億本のペットボトルを世界に流通させている(2019年6月)

5.プラスチックを減らすことと同時に、再利用・再製造・リサイクルできるプロダクトデザインの開発を推奨

プラスチック削減を推進するだけでなく、持続可能で、安価で、革新的なプロダクトデザインの研究開発を推進することも盛り込まれました。また、再利用、再製造、リサイクルが可能な製品や材料の再設計も求めています。ここで重要なのは、コスト効率を優先させると、使い捨てを大幅に削減するためのリユース・リフィルの取り組みではなく、リサイクルのような抜本的な解決にならない方法が推進されかねないということです。ごみを出さないリユース・リフィルの解決策を強く推し進めていくことが必要です。

次のステップは?

この決議は、プラスチック危機が緊急の課題であるという認識のもと、迅速かつ野心的なスケジュールを設定しています。目標は、2024年末までに交渉を完了させることです。第6回国連環境総会(UNEA6)までに、進捗状況を国連に報告しなければなりません。

決議では、2022年の前半までにワーキンググループを設立し、後半には最初の政府間交渉会合(INC)を開くことになっています。この政府間交渉会合を重ねて、プラスチック条約を2年ほどかけて最終化させる見込みです。

決議の全文はこちら

脱使い捨てへの大きな一歩

この結果は、大手石油企業や消費財企業が、使い捨てプラスチックへの依存を大幅に減らし、ビジネスモデルをリフィル&リユースへ転換することを強く求める大きな一歩です。

ドイツ・ハンブルグの食料品店。使い捨てごみを出さず、リユース容器で量り売りで日用品を購入できる(2017年3月)

グリーンピースは、賛同団体とともに、強力なプラスチック条約が施行されるまで、プラスチック汚染のない社会を求め続けていきます。

私たちの水、空気、食べものからさえもマイクロプラスチックが見つかっているほど、プラスチック汚染は世界の隅々にまで影響を及ぼし、プラスチック危機の解決は待ったなしです。プラスチック条約が合意される2年の間にも、政府や大手企業は、積極的に使い捨てを減らし、リユース・リフィルを推進することが必要です。

世界の海や川で最も多くのごみが見つかる4つの大企業に、リユースの取り組みを加速させることを求めるキャンペーンには、世界で700万の人が賛同し、コカ・コーラが2030年までに25%の商品をリユース可能なパッケージにすることを発表*するなど、成果を上げ始めています。グリーンピースは、目標をその倍の50%に引き上げることを求めて、働きかけを続けています。

ぜひ署名に賛同して、周りのプラスチック汚染に関心が高い方にもシェアしてください!