飲み水、塩、食べ物、空気からもマイクロプラスチックが見つかり、私たちがいかに自分たちが排出したプラスチックにむしばまれているか、調査が進むごとに明らかになっています。
国連では今、海や国境を超えたプラスチック汚染を、「プラスチック条約」を作って国際的な枠組みで規制しようとしています。今月開催される国連環境総会には、グリーンピースの代表団も参加し、より効果のある強力な枠組みづくりを求めて働きかけを行います。

進まない日本のプラスチック削減

最近は毎週のように、こんなニュースを目にしませんか?

  • ハーゲンダッツのスプーンがバイオマスプラスチック10%配合へ*
  • ファミリーマートが”穴あき”フォークでプラスチックを8%削減*
ファミリーマートの穴あきフォーク。(流通ニュースより

石油由来の使い捨てプラスチックを減らすというゴールに向かってはいるものの、その歩みはとにかくスローです。

マイクロプラスチックが私たちの飲み水、空気、塩、食べものから見つかり、プラスチックの生産から廃棄までの工程で1年間で石炭火力発電所189基分もの温室効果ガスが排出され、経済先進国から輸出された廃プラスチックが東南アジアやアフリカで汚染や健康被害を引き起こしているいま、”できることから一歩ずつ”、ではもう間に合いません

広がるリユース・リフィルの制度化

世界では、繰り返し使える包装・容器への切り替えを進めようとする国単位の取り組みも増えてきています。

例えばポルトガルでは、2030年までに、市場に流通するすべての商品のパッケージのうち、30%をリユース可能なものにしなければならないと法律改正しました。

また、先日米コカ・コーラ本社が、2030年までに25%の商品を再利用可能容器に切り替えるという目標を発表しました*

年間1,200億本のペットボトルを世界に流通させている大企業として、まだ目標は低いと言わざるを得ませんが、コカ・コーラのような業界のリーダーがリユース容器へ舵を切ったことは、世界中のメーカーへのシグナルとなりました。

国際的な枠組みでプラスチックを規制

そんな中、国連ではいま、国際的に使い捨てプラスチックを規制する「プラスチック条約」を作ろうという動きがあります!

今月下旬から開催される国連環境総会では、「プラスチック条約」の元となるプラスチックの国際協定について、はじめて話し合われます。

これまで、国境を超えて環境や健康に影響を及ぼしていたにもかかわらず、国や地域ごと、企業ごとの自主的な政策任せだった使い捨てプラスチックですが、ようやく、国際的な枠組みで、包括的な規制をするチャンスが来たのです。

国連環境総会(UNEA = United Nations Environment Assembly)とは?

気候変動や汚染などの環境危機について話し合う、世界最上位の意思決定機関。
全193の国連加盟国に加えて、研究者、企業、NGO、先住民族やユースなどの代表者も参加します。2022年2月28日から3月2日まで開催される第5回国連環境総会の第二回会合(UNEA5.2)は、プラスチック汚染がメイントピックです。国連環境計画(UNEP = United Nataions Environment Programme) が本部を構えるケニア・ナイロビでの開催ですが、感染症対策のため、多くの参加者がオンラインで参加します。

今回の国連環境総会とその準備会合には、世界各国で脱使い捨てプラスチックに関する活動を展開するグリーンピースからも、6人の代表団が参加します。

多くの国が「プラスチック条約」に合意すること自体に賛同を示していますが、大切なのは、どのような内容にするかということです。

気になる内容は?

国連環境総会では、複数の決議案が議論される予定です。

グリーンピースが重視しているのは、海のプラスチック汚染の対策だけでなく、製造・流通・廃棄まで、すべてのプロセスでプラスチックを規制する決議案で合意することです。

使い捨てプラスチックは海の生きものにとって大きな脅威ですが、原料の大量消費、CO2や有害物質の排出、埋め立てによる陸上の汚染、採掘・廃棄現場の地域コミュニティへの健康被害、そして食べものや水、空気などに潜んだマイクロプラスチックによる私たちの体への影響など、その影響は海だけに限りません

提案されている決議案の中には、「海のプラスチック」だけにフォーカスしたものもあります。

もしこの決議案をベースにプラスチック条約ができれば、プラスチックごみの海洋流出のモニタリング、プラスチックのリサイクル、海洋プラスチックの回収など、川下の対策だけに限られてしまう可能性があります。

製造される使い捨てプラスチックの量を大幅に減らすこと、繰り返し使えるパッケージで商品を流通させること、出てしまったごみは環境や地域コミュニティへの影響を最小限に抑える方法で処理することに合意しなければ、多岐にわたるプラスチック問題にアプローチすることはできません。

そして、法的拘束力があること、決議案が合意されたあとでも、交渉段階で重要な点に関して検討が可能であることも大切です。

トルコで廃棄される使い捨てプラスチック。ここからは、イギリスやドイツなど経済先進国から輸出されたプラスチックが見つかっている。(2021年3月)

繰り返し使うリユースをスタンダードに

国連加盟国が、使い捨てプラスチックを大幅に減らす国際協定に合意し、それが拘束力のある「プラスチック協定」となれば、使い捨てではなく、繰り返し使うリユースが、新たなスタンダードとなっていく道が開けます

しかし、プラスチック原料の製造で利益を得ている化石燃料企業もロビイストを派遣して、規制を厳しくしすぎないように、働きかけを行うことが予想されます。

代表団6人を中心とするグリーンピースのミッションは、各国代表者や企業、研究者などとの対話を通して、プラスチック汚染をより緊急に、より根本から解決へ近づける決議案を通すよう働きかけることです。

一人ひとりのサポーターのみなさんから寄せられたご寄付のおかげで、政府や企業から完全に独立しているからこそ、グリーンピースはこうした活動を続けることができます。

ぜひこの動きを一緒に見守ってください。