環境問題へのさまざまな解決策を知っても、それが本当に正しい選択なのか、実行可能なのか、モヤモヤすることはありませんか? 11月9日に実施した「環境のはなしシリーズ」第3回は、EVに関する質問・モヤモヤを専門家にぶつけ、解消するイベントとなりました。

取り上げた質問・モヤモヤは以下のとおり。こういうことが知りたかった、という質問があるのではないでしょうか。

  • EVとは? ガソリン車とどう違うの?
  • EVって、結局のところ本当にエコなの?
  • EVが増えたら、鉱物資源は足りる? 人権問題が悪化するのでは?
  • 車が全部EVになったら、電気は足りる?
  • EVって、ほんとに使えるの? 充電できる?
  • 車が全部EVになったら、失業者が増えるのでは?
  • EVに買い換えるべき?

技術の進歩が問題解決の鍵。今は再生可能エネルギーの大転換点

この日は、環境学者の飯田哲也さんをお招きし、エシカルコーディネーターのエバンズ亜莉沙さんから、お寄せいただいた質問を中心にたくさんのモヤモヤについて率直に尋ねていただきました。

この記事では、イベントの中で飯田さんやグリーンピース・ジャパンの気候変動・エネルギー担当であるダニエル・リードがお答えした質問の中から、特に知っていただきたい2問ついてご紹介します。

疑問その1:EVって、結局のところ本当にエコなの?

気候変動対策にEVを、という話は耳にしますが、本当のところはどうなのか疑問に思っている人は多いかもしれません。EVの製造過程では、ガソリン車より二酸化炭素を多く排出するのも気になるところです。

けれども、EVは走行中に二酸化炭素を排出することはありません。利用している間ずっと二酸化炭素を排出するガソリン車よりも、長い目で見ればエコと言えることが明快に説明されました。

さらに考慮すべきなのは、技術の進歩です。飯田さんからは、「コンピュータが進歩したときのように」という表現が出ましたが、以前はとうてい個人には手が出なかったコンピュータが、今ではごく普通に家庭にあり、さらに誰もがスマホを手にできるようにさえなっています。

再生可能エネルギーにも同じような進歩が考えられ、飯田さんから「今は再生可能エネルギーへの歴史的大転換の真っ只中にいます」という発言がありました。これから、再生可能エネルギーの価格はますます下がっていくことが考えられます。EV製造時にも再生可能エネルギーが使用され、つまり排出される二酸化炭素も減少します。

黄色が太陽光で、青色が風力。急上昇していることがわかる。
(スライド提供:飯田さん)

再生可能エネルギーがすさまじい勢いで増加していることは、飯田さんの示したグラフからも明らか。グラフの急上昇ぶりに、エバンズさんからも「グラフの上がり具合がすごいですね!」と喜びの声があがりました。

疑問その2:EVって、ほんとに使えるの? 充電できる?

ただし、いざEVを使用するとなると、気になるのはやはり充電です。ガソリンスタンドはたくさんありますが、充電できる設備はまだまだなじみがありません。これには、実際にEVユーザーである飯田さんから説得力のある説明が聞けました。

「EVを使用していて感じるのは、ガソリンスタンドに行かなくてよい、ということです」と、使い勝手のよさを口にする飯田さん。車種にもよりますが、一度充電すると100km〜650kmは走れるので、長距離を移動する場合以外は頻繁に充電しなくてもよいのです。

さらに充電についても、「EVの充電はスマホに似ているんです」と飯田さんが説明するとおり、自宅に充電設備を設置すれば、家にいて車に乗らない間に充電しておけます。就寝中や仕事中などにスマホを充電しておく感覚をイメージしていただければよいでしょう。

さらに飯田さんは、自宅の屋根にソーラーパネルを設置し、日中に発電した電力をEVにため、夜間にはEVから電気を使用することで、電気をほぼ自給自足できているそうです。戸建住宅に住む人にとっては、とても魅力的な使い方ではないでしょうか。

EVに買い換えるべき? 専門家の考えは?

最後にエバンズさんから、「EVに買い換えるべき?」という率直な質問が。飯田さんの考えは、「自動車を買い換える機会があるのなら、EVにしてみては?」とのことでした。車は毎年買い換えるようなものではないだけに、価格だけではなく幅広い観点から選択できるといいですね。イベント終了後のアンケートには、「環境学者の飯田さんがEVを使用しているのだから、やはり環境にやさしいのですね」といった感想があり、専門家であり、EVユーザーである飯田さんのお話の説得力の高さがうかがわれました。

走行距離が伸びるにつれ、エンジン車の二酸化炭素排出量が上回るのがわかる
(スライド提供:飯田さん)

エバンズさんが、飯田さんの解説を簡潔にまとめたり、さらに質問を深めたりと、私たちに近い立場から発言し、専門家の講演を聞き続けるだけではないスタイルになっていたおかげで、専門的な話もスムーズに理解できました。コメント欄に次々に飛び出した質問にもその場でできる限り答えられ、情報量たっぷりの濃密な時間となりました。アンケートにも、「みんなが持っているこのようなもやもや解消話がいいですね。とても分かりやすかったです」という感想をいただきました。

これからも、環境問題やその解決策を解説するだけではなく、多くの人が感じるさまざまな疑問を解消したり、より理解が深まるようなイベントを企画してまいります。どこからでも参加できるオンライン開催ですので、ぜひお気軽にご参加ください。イベントでお目にかかるのを楽しみにしています。