国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区)は9月8日、世界の自動車大手10社の気候変動対策についてまとめた報告書『自動車環境ガイド2022』を発表しました。昨年発表した同様の報告書で、10社中最も気候対策が遅れていたトヨタ自動車は、今回2年連続で最下位に。また日産、ホンダがそれぞれ8位、9位にランクダウンし、国内自動車メーカーがワースト3位を独占する結果となりました。

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報告書の主なポイント

公開された情報などをもとに、各社の気候変動対策を、(1)ICE(内燃機関)車の段階的廃止、(2)サプライチェーンの脱炭素化、(3)資源の節約と効率化ーの3つの指標を用い、(1)77%、(2)18%、(3)5%と配分してスコアを算出した上で、(4)その他のネガティブな要素を1.0ポイントを上限として減点した。

  • 2021年の世界のゼロエミッション車(ZEV)販売台数は、前年の2倍の約460万となり、過去10年間で最大の増加となった。しかし、地域によってZEV販売の増加度合いは大きく異なる。
  • トヨタは2年連続で最下位。2021年のZEV総合販売割合は0.2%にとどまった (GMは約8%、ルノーは約7%)。ネガティブなロビー活動が依然として活発で、海外からはトヨタの行き過ぎた活動について問題視する声も。21年12月、2030年までに350万台の販売目標を発表したことは前進ではあるが、依然トヨタは2050年までのネットゼロ実現が見込めず、一方で他社はより意欲的なEV販売目標を掲げて積極的な脱炭素化取り組みを実施しており、その差は縮まっていない。
  • 鉄鋼及び上流材料の脱炭素化に対するコミットメントが全般的に不足。素材製造による温室効果ガス排出量の50%以上を占めている鉄鋼に関して、自動車メーカー10社のうち1社も特化した脱炭素化目標を設定していない。
  • ZEV販売台数割合の5年平均成長率と2021年のZEV販売台数割合のいずれもが世界平均を下回っているのは、日産とトヨタの2社のみである。すなわち、ZEVへの移行速度が世界全体より遅いのは、上位10社の中でこの2社だけということになる。
  • 日産とホンダの両社はZEV移行に関して海外メーカーと比べて遅れが目立った。脱炭素化の目標も野心的とは言えず、ともに前年より順位を3つ落とした。ホンダと日産が順位を下げる一方で、フォードは、ZEVの販売台数を大幅に伸ばし、ICEの段階的廃止計画をより精力的に推進し、サプライチェーンの脱炭素化を公正に実践することにより、4位に上昇した。

自動車メーカーへの提言

  1. ICE廃止のスピードアップ
  2. 再生可能エネルギー充電と資源削減の推進
  3. 早急な鉄鋼の脱炭素化
  4. 労働者、組合、労働団体など利害関係者の利益を確保しつつ、公正な移行を
  5. モビリティの再考および自家用車の保有数削減

グリーンピース・ジャパン 気候変動・エネルギー担当、ダニエル・リード

「残念ながら昨年の報告書発行時から日本の自動車大手の姿勢は海外大手と比較すると相対的に大きな遅れが目立ちます。気候変動問題に取り組むことは、消費者ニーズを捉え、自動車市場で生き抜くためにも必要です。ZEVの販売実績の乏しさやサプライチェーンの脱炭素計画の欠如など、日本の大手3社の対応は、海外メーカーと比べ遅れが顕著です。このままでは、今後競合する海外メーカーにますます差を付けられてしまうでしょう。

近年、気候変動問題が原因とされる異常気象が世界各地で起きています。日本でも6月に猛暑日の連続記録が更新されるなど、気候変動は現代における最も重要な課題の一つであることは明らかです。グリーンピースは自動車各社がこの問題を真摯に捉え、事業計画を見直すことを期待しています」

<参考>

以上