みなさんこんにちは、食と農業担当の関根です。

今日5月19日、市民団体共同で、“新たなネオニコ系農薬のスルホキサフロルを日本で承認しないで“という緊急署名7818筆を厚生労働省に提出してきました。この署名は市民団体でつくる「ミツバチと子どもをまもる実行委員会」*1で3月から4月の2か月間実施してきたものです。

写真:厚生労働省生活衛生・食品安全部の残留農薬等基準審査室長に提出。

スルホキサフロルは、ミツバチに毒性が強いことからアメリカでも使用が制限された農薬。発達段階にある子どもにも悪影響を及ぼす可能性もあります。7800余りも寄せられた署名と意見を政府は真摯に受け止めて、スルホキサフロルを承認しないよう交渉しました。

交渉では、室長に「署名の意見を読んで生活衛生・食品安全部長(より責任の大きい)にも伝えます」と約束してもらったほか、次のような事実や、パブリックコメントの状況があらたにわかりました。

❏ 残留基準値の決め方、「文書はありません」

厚生労働省は、農薬の承認プロセスの中で、残留基準値を決めるという重要な役割を負っています。

残留基準値には、作物を実際育てて残留試験をしたデータを基にします。そのデータからどうやって残留基準値を決めているのか、詳しく聞いてみたところ、厚生労働省の“ルール”があるそうなのですが、そのルールは「文書もないし、専門家もレビューしていない」のだそうです。この点は国会でもすでに「非科学的」と批判されていて、科学的な根拠にもとづいて検討が必要、と政府も答弁しています*2

残留基準は食の安全を担保するはずのもの。信頼性が高くなければいけません。

このような問題を抱えたまま残留基準値を決めたりしないよう、しっかり注目しつづけましょう。

 

❏ パブコメはなんと400通、専門委員にも見せると約束!

前向きな成果もありました。

スルホキサフロルの残留基準については、市民から寄せられたパブコメについてもきいたところ、今回なんと400通近くも提出されていたことがわかりました。

そして、パブコメは残留基準値を検討する外部の専門家による部会の委員にも個々のパブコメを見てもらいます、とのこと!パブコメは従来、検討資料として「要約」されてしまい、委員には直に読んでもらえていませんでした。(外部専門家による薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会)

これもみなさんのコメントや署名のおかげで、市民の高い関心や熱意を無視できなくなってきたということだと思います。

パブコメは、今まさに子育て中の人や、科学者、農家や養蜂家など大勢の市民が真剣に書いた意見です。それを専門家が直に見て検討する機会ができるのは、大事な一歩といえます。プロセスをしっかり見守りっていきましょう。

今後、農薬の登録を主に担当する農林水産省や、野生のミツバチを含む生態系の保護を担当する環境省にもそれぞれ提出に行く予定です。

❏小売店にも声を届けよう。

市民として政府に声を届けることに加え、私たちにはもうひとつ、「消費者として」企業に声を届けるという道があります。

たとえば、小売店が「ネオニコチノイド系農薬を使わないお米を取り扱います」とか、「農薬にたよらない有機農産物をもっと売ります」といった方針を示せば、マーケットが変わっていきます。それは、私たちが身近に安全な食を手に入れられるようになるだけでなく、政府が農薬の承認に慎重になったり、農薬の規制をしたりするのを、後押しすることにもつながります。

このバナーをクリックして、スーパーに、国産オーガニックの野菜やお米の常設コーナーをつくるように伝える署名に参加してください。

「国産オーガニックを全国に!」いますぐ署名する >

*1 実行委員会は日本有機農業研究会、反農薬東京グループ、ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議、グリーンピースで構成

*2 詳しくはブログ 日本の消費者を不安にさせる「”非”科学的な」農薬残留基準の決め方をご覧ください。

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