コロナ禍、服買ってますか?  日本全国1,000人へのアンケートでは、66%の人が、買い物をするときの意識や行動が変わった、と答えました。服を買うことにも変化が現れています。この意識変化をどう見るか、またファッション業界に近年起こっているポジティブな変化について、エシカルファッションデザイナーの小森優美さんにお話をお聞きしました。

グリーンピース・ジャパン広報担当の城野です。

皆さんは、「サステナブル・ファッション」(持続可能なファッション)という言葉を聞いたことがありますか?

私は広報担当として、日々ニュースをチェックしているのですが、最近「サステナブル・ファッション」や、ファッションの環境負荷の話題をテレビ番組やニュース記事でよく見かけます。ELLE Japanやフラウなどのファッション誌が、一冊丸ごとサステナビリティの特集号を出すといったことも起きています。いよいよ目に見える形で、日本でもファッションと環境問題の話がメディアに取り上げられるようになってきたなと、驚くやら、嬉しいやら感じています。

コロナ禍、服買ってますか?

ところで、皆さんは最近、服を買っていますか?

新型コロナウイルス感染症の影響で、在宅勤務が増えた、お出かけする機会が減った、服を買っても着ていくところがない、なんて状況になっていませんか?

グリーンピースが10月、全国の一般の方1,000人を対象に行った「コロナ禍と暮らしや環境問題への意識に関する調査」でも、まさにそうした状況が表れていました。以下のような結果が出ました。

  • コロナ禍を機に、買い物をする際の意識や行動が変わった人は、「非常に変わった」「ある程度変わった」を合わせると、66.8%。
  • どのように変わったかについて、 もっとも多かった回答の1位は「あまり買い物をしなくなった・必要かどうかよく考えて買うようになった」(59.6%)。3位に「衣服の購入が減った」(35.9%)がランクイン。「衣服の購入が減った」女性は47.1%、男性は22.8%で、女性の半数近くにあたります。

ちなみに、コロナ禍で環境問題への関心が大きく高まっていることもわかっています。

  • 環境問題や環境に配慮した持続可 能な暮らしに、より関心を持つようになった人は、「非常に当てはまる」「ある程 度当てはまる」を合わせて53.4%。「前から関心があり、程度はあまり変わらな い」は23.9%
  • より関心を持つようになった環境テーマは、「ものを大切にすること」(42.9%)、ごみを出さない生活(30.4%)、大量生産、大量消費社会からの脱却(20.7%)など。

人からの評価より、自分を大切にするものへのシフト

こうした状況をどう見るか、エシカルファッションデザイナーの小森優美さんに聞いてみました。小森さんは、草木染めのランジェリーブランド「Liv:ra(リブラ)」を手がけ、昨年グリーンピースの草木染めイベントでも講師をしてくださいました。ファストファッション業界でのデザイナーを経て、環境や人権に配慮した「エシカルな(倫理的な)」ファッションのあり方について、積極的に情報発信されています。

ーーこの調査結果についてどう思いますか?

小森さん:「『衣服の購入の際は、品質を重視するようになった』(6.4%)という回答が興味深いですね。ファッションは、外に対する表現。あまり外に出なくなったことで、人に評価されるものよりは、自分にとっていいもの、自分を大切にするものを選ぶという意識が高まっているのではないでしょうか」

一番のエシカルファッションは、自分の好きなものを知ること

ーー流行色、流行のデザインなど、流行に追いつこうという気持ちが、ファストファッションや大量生産につながっているのでは?これから流行ってどうなると思いますか?

小森さん:「みんな、流行に乗せられてしまっていると思います。一番のエシカルファッションは、自分の好きなものを知ること。でも残念ながら、多くの人が自分を忘れてしまっています。いろいろな商業的な情報を浴び過ぎて、自分が何が好きなのか、よくわからない状態になっているんです。

もしこれが好きで、こういうものが似合うということが明確になったら、流行に左右されずに、ずっといいものを長く着続けるという視点に、無理しなくても必ず行き着くはずなんです。自分が好きなものを知ることで、自分のお気に入りの1着を選んで大切にする。自分が何が好きかを探究していくこと、それは人生の全てにおいて大事なこと。それが解決方法になると思います」

日本人本来の自然との関わり方を「取り戻す」

ーー近年の日本でのサステナブル・ファッションの高まりの背景は何だと思いますか?

小森さん:「2つあると思います。一つの側面は、グローバルで進むサステナブル・ファッションの動きが日本にも影響していること。

そしてもう一つは、日本の中での原点回帰。お味噌を作ったり畑仕事をしてみるなど、日本の伝統的な暮らしが見直されてきています。欧米みたいに、「エシカル」とか「サステナブル」と明言しなくても、結果的にサステナブルなんですよね。

数年前から現れていた原点回帰の動きが、コロナ禍を機に加速していると思います。

日本人の自然へのアプローチって、実は世界中でとても称賛されているんです。自然農法のや植林の仕方など、自然との関わり方が本質的で、自然を大切に扱う文化だと。そうした点が世界で再評価されていますが、そこを日本人自身も見直しているのではないでしょうか。

海外からの環境問題のテーマを取り入れると同時に、元々日本人が持っているものを『取り戻す』というアプローチが大切だと思います」

小森優美さんとの草木染めのワークショップ。染め直したり手直しすることで、服を長く大切に着ることを提案。自分らしいファッションを楽しみながら、環境負荷も抑えられる(2019年12月)

変わるファッション業界

実際、ファッション業界は、変わり始めています。

2018年12月、2050年までの温室効果ガス排出実質ゼロを目指す「ファッション業界気候行動憲章」が発足し、H&MやPUMA、バーバリーをはじめ、世界の名だたるファッションブランドが署名。日本からも、ファーストリテイリングやYKKが今年署名しました。また、2019年8月、気候、生物多様性、海洋の保護を目指した枠組み「ファッション協定(The Fashion Pact)」が発足。グッチ等を傘下に収めるケリングやシャネル、エルメスなど、数多くのラグジュアリー企業が参加しています。

大手ファストファッションブランドは、「エコ」、「サステナブル」といったキーワードで取り組みを始めています。H&Mは、今年10月、ストックホルムの店舗内にリサイクルの機械を導入して、顧客に古着リサイクルの工程とその価値を見える化しました。

日本でも今年2月、国内最大級のファッションイベント東京ガールズコレクションで、「サステナブルステージ」が設けられ、環境に配慮した素材の服などが披露されました。

国連によると、ファッション業界は、水資源の大量使用、マイクロファイバーによる海洋汚染、炭素排出量等の理由から、世界第2位の汚染産業です。環境負荷の高い産業なのです。いよいよ業界自らがそのリスクを認め、もう変わらなければ生き残っていけない、と感じているのかもしれまんせんね。

コロナ禍を機に、このサステナブルなファッションへの動きが加速するといいなと思います。

ファッション問題へのアプローチ

ファッションの環境負荷についての関心が高まる中、グリーンピースは10月、ファッションと環境問題に関する報告書の日本語版を2冊発表しました。ファストファッションの環境負荷や、有害化学物質ゼロを衣料品業界に求めて大きな成果をあげたグリーンピースのキャンペーンについて、紹介しています。

また、服のリメイクやアップサイクルなどを通じて、一人ひとりが楽しみながら、ファッションの環境負荷低減に取り組むMAKESMTHNG(メイクサムシング)というプロジェクトについて、インスタグラムで情報発信しています。ぜひフォローしてください!

12月5日(土)13:00より、「これからのファッションと環境問題を考える!『ザ・トゥルー・コスト~ファストファッション 真の代償~』オンライン上映会&ダイアログ」が開催されます(GRID CINEMA/ユニバーサルリサーチラボ主催)。小森優美さんとともに、グリーンピース・ジャパンも登壇します。
ただいま申込受付中です。ご都合つけば、ぜひご参加ください! 詳細はこちら。

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