気候緊急事態宣言も発令している長野県が、日本政府よりグッと野心的な、CO2を2013年度から60%削減するという目標を発表しました!

実は、「案」の段階では、長野県の削減目標は48%でした。60%まで削減目標が引き上げられた背景には、地域ごとに気候変動対策を加速することをめざすボランティアグループ「ゼロエミッションを実現する会」などの市民の働きかけがあったのです。(2021年8月23日追記:「信州環境フェア」で長野県知事からも言及がありました。末尾にあるスピーチ文をぜひ、ご覧ください)

このブログでは、その取り組みをご紹介します。読み終わる頃には、市民が声を上げ行動することが、気候変動対策を加速させるために大きな力を持っていることがわかるはずです。そして、自分も何かやってみたい!と胸が熱くなっているかもしれません。

そもそも、CO2削減目標って?

パリ協定で合意した、温暖化を産業革命前と比べて1.5度までに抑えるために、各国がそれぞれのCO2削減目標を掲げています。

日本政府は2021年4月に、2030年までのCO2削減目標を、2013年度と比べて46%削減すると発表しました。それまで、2013年度比26%としていた目標から、引き上げたことになります。

しかし、Climate Action Trackerという気候変動に関する複数の研究機関のグループによる報告では、日本が2013年度比で62%削減しなければ、温暖化を1.5度に抑えることは難しいと言われています。CO2削減には、国による政策はもちろん、自治体ごとの、高い目標に基づいた野心的な取り組みが欠かせません。

神奈川県の磯子石炭火力発電所

長野県が国よりも野心的な目標を発表!

そんな中、長野県が「ゼロカーボン戦略」の案を発表しました。CO2の削減目標は、2013年度比で48%。

気候変動対策が他の自治体より進んでいると言われる長野県だけに、さらに野心的な目標を掲げて取り組んでほしいと、「ゼロエミッションを実現する会」は長野県の「ゼロカーボン戦略案」に注目しました。そして、詳しく読んで話し合うために、「長野県のゼロカーボン戦略案を読み解く会」を開催することになったのです。

独自に勉強会で見えてきた、目標引き上げの可能性

オンラインで開催された「長野県のゼロカーボン戦略案を読み解く会」には、ゴールデンウィークのさなかにもかかわらず、20人ほどが参加しました。参加したメンバーたちは、どうしたら長野県の目標引き上げを確実にすることができるのかを考え、長野県のゼロカーボン戦略を必死に読みました。

そして、大切な点に気がつきます。

「2030年までに、再生可能エネルギーによる電気自給率82%を掲げているのに、なぜ電力由来のCO2が大きく減少していないんだろう?」

長野県の担当者に電話して目標設定の考え方を詳細に確認しました。その結果、長野県のCO2削減見込みは実は過小評価で、計算してみると、2013年度比で68.5%削減まで、引き上げられそうだということが見えてきたのです。

長野県の環境政策課に伝えなければ!

「これは長野県の方に伝えなくてはいけない」

そう考えたメンバーは、長野県の環境政策課や、地球温暖化対策専門委員会の委員にも連絡をとり、長野県の方々を交えて、県と意見交換も行いました。そしてこの3つを訴えたのです。

  • 再生可能エネルギーの拡大計画の割に、長野県のCO2削減見込みは過小評価されていて、もっと積み上げができる
  • 気候変動に関する研究機関のプロジェクトClimate Action Trackerは日本に2030年までに62%減を求めている
  • 国の目標が低い中、脱炭素で先進的な取り組みをしている長野県こそ目標を高く設定して、他の自治体にもいい例を示すことが大切
拡大が期待される、畑や田んぼで作物を育てながら、上に設置したソーラーパネルで発電する「ソーラーシェアリング」(兵庫県の例)

パブリックコメントは県政史上最多の180件!

さらに、4月1日から募集されていたパブリックコメントについては、「ゼロエミッションを実現する会」をはじめ、幅広く提出を呼びかけました。長野県史上最多の180のコメントが寄せられたそうです!

そして、目標引き上げのために知事を後押ししようと「ゼロエミッションを実現する会」で知事へ応援のメールを送る呼びかけをしました。この呼びかけには、環境アクティビストコミュニティGreenTEAやグリーンピースなど環境NGOのボランティアさんたちも答え、インスタグラムやそれぞれのネットワークを通じて大きく呼びかけられました。きっとたくさんのメールが知事に届けられたと思います。

長野県に市民の声が届いた

長野県の地球温暖化対策専門委員会では、冒頭、環境部長が「目標値引き上げを求めるパブコメが多く、思い切った見直しに踏み切った」と挨拶されました。

部長・課長からは会の中で何度も、「たくさんの、また、熱心なコメントをいただいて…」という言及がありました。

専門委員の茅野恒秀信州大学学術研究院准教授から、「長野県のゼロカーボン戦略案を読み解く会」が開催されたことや、目標値が過小評価で、再生可能エネルギーによる発電分を評価にいれるべきとの意見がでたことが紹介されました。

今後、長野県は6月1日に環境審議会を開き、ゼロカーボン戦略案について専門委員会での議論が報告され、6月8日の「長野県ゼロカーボン戦略推進本部会議」でゼロカーボン戦略が決定される予定です。

「ゼロエミッションを実現する会」では、さらなる高みを目指して68.5%目標を提言しています。

気候危機回避へ動こう、今すぐ

みなさんも、ご自身が住んでいる自治体の気候変動対策が気になりませんか?自分のコミュニティで、気候変動対策の強化に取り組んでみませんか?

いままで取り組んだことのない方でも大丈夫。「ゼロエミッションを実現する会」には、たくさんの仲間がいます。

ご関心のある方は、ぜひこちらからfacebookグループへのご参加リクエストをお待ちしています!

追記:「信州環境フェア2021」(主催:同実行委員会 2021年8月20日開催:詳細)での長野県知事のスピーチより(グリーンピース・ジャパンによる文字おこし)

皆さんこんにちは。今日は多くの皆さんにご覧頂けてるかと思いますけども、長野県としてゼロカーボン戦略を作った内容をちょっとご説明したいんで、スライドを出して頂いていいですかね。

その前に私も自己紹介させてもらうと、このゼロカーボン、脱炭素、地球温暖化に一番最初に取り組み始めたのは、もう10年以上前、横浜市の副市長をしてた時です。地球温暖化対策推進本部があって、そこで長野県と横浜、環境違いますけども、都市の視点で温暖化対策に取り組んで行こうということで、責任者として取り組み始めたのが一番のきっかけです。

取り組んでる中で、私に大きなインパクトを与えてくれたのが、ノーベル賞を取られたワンガリ・マータイさんの発言です。横浜市でアフリカ開発会議、TICAD 4という国際会議があって、私も参加してたんですけども、近くにワンガリ・マータリさんが座っていたのですが、会議の途中で立ち上がって、「カーボンジャスティス」ということを大きな声で叫びました。「炭素正義」、アフリカ各国の首脳級、大統領などが大勢参加されてましたけれども、多くの人たちが口々に叫んでたのが、気候変動のおかげで、アフリカでは、災害、ききんや干ばつが多発している、そうしたことによって紛争も起きている、これは、我々アフリカは、二酸化炭素をほとんど排出してないのに、これが本当に正義なのかと。先進国のみなさんは、ちゃんとわかっているの?ということを強く力説されてました。

その頃から徐々に温暖化の話って出てきましたけども、まだ日本人の感覚としては気候変動は”人の話”という感覚が多いのかなと思います。

長野県は、日本の都道府県の中で初めて気候非常事態宣言を発出させてもらいました。ご存知の通り、大変不幸なきっかけではありますけれども、一昨年の東日本台風災害が長野県を襲って、本当に千曲川の周辺を中心に大変な被害が発生をしました。こうした災害をこれからも繰り返さなければいけないのか、繰り返してはいけない、さらにひどい地球環境にしてしまっていけないという思いで、気候非常事態宣言を出させていただき、気候危機突破方針方針を策定し、今日ご紹介するゼロカーボン戦略に至っている、というのがストーリーになります、

コロナとこの間の大雨災害で、頭が半分切りかわっていない状況ですけれども、災害は気候変動と直接関係がありますが、実はコロナも関係があると思っています。我々人間は長い間自然界に君臨してるかのように振る舞い続けてきて、自分たちの力で全ての事をコントロールできるという”誤解”のもとに社会を作ってきたんじゃないかと強く思っています。

大災害であったり、コロナであったり、私たち自身も地球という環境・生態系の中の一員であり、その一員としての調和・秩序を守ることなく、のりを超えて、自分達の手で地球環境を悪化させてしまってるのが、今の私たち人間がおこなっていることだと思います。人間がおこしたことですから、人間が解決しなければいけないし、解決できないはずはない、という思いで、ゼロカーボン戦略を作って取り組もうとしてます。

ご覧頂いてますけれども長野県の目標は極めて高い目標を掲げています。2050年ゼロカーボンはどこも出していますけれども、2030年までに2013年比で6割削減という高い目標を掲げています。

私はちょうど還暦ですけれども、ちょうど高度経済成長期に子ども時代を送って、地球環境の問題など、全く意識しないで成長してきて、今この時点になって、本当に今の状況を子ども、孫たちの世代に引き継いでしまっていいんだろうか、まさに今、止めていかなければいけない、ということで、非常に厳しい目標ですけれども、なんとか温暖化を少しでも食い止めようということで、高めの目標を設定しています。これは、多くの県民の皆さんから、県の出そうとしている目標は低すぎるんじゃないの、と背中を押していただいた結果でもあります。世界水準から見ても極めて高い目標設定をさせていただいています。

4点の重点方針を書いていますけれども、既存技術で実現可能なゼロカーボンを徹底普及、持続可能な炭素型ライフスタイルに着実に転換、産業界のゼロカーボン社会への挑戦を徹底支援、そしてエネルギー自立地域づくりで地域内経済循環。まずは、今ある技術でやっていこうと。未来に向けた技術革新色々出てくると思いますけども、それをあてにしてたり、それを待っていると手遅れになってしまいかねないということで、すぐできることから取り組みましょうと。さきほどの藤川さんのお話しの電動アシスト自転車も素晴らしい事例だと思います。

今できることいっぱいある、いっぱいあるけれども、これまでこうやって生きてきたから大丈夫じゃない?っていう感じで過ごしてますけども、今できる変革を、是非ひとり一人の皆さんと一緒に行っていきたいというふうに思ってます。

エネルギー自立地域を作っていこうというのは、経済の問題と環境地球の問題っていうのは完全に密接な関係、オモテウラの関係だと思っています。これからの社会経済のあり方っていうのは、環境と調和、環境と共存した形の経済をつくっていかないと、必ず歪みが拡大していくだろうと思っています。できるだけ地域で自立できる経済圏を作る事によってCO2も排出しないし、お金も地域内で循環する、そうした経済的なメリット。切り詰めた生活とか、心の豊かさが失われてしまうような生活ではなくて、むしろ未来に向けて新しい生き方、新しいライフスタイル、私たちが理想とするような暮らしを実現しながら脱炭素社会を実現していく、そうした方向では取り組んでいきたいと思っています。

各論の話はきりがないのでご覧いただければと思いますけども、こうした取り組みを、多くのみなさんと共有をさせて頂いて取り組んでいきたいと思っています。コロナ対策も、この後、全国知事会があって色々発言しようと思ってますけども、日本の社会は、大きな危機に立ち向かって行く時に、舵の切り替えが非常に遅いと思っています。政治の一翼を担う人間として大変申し訳ないと思っています。

脱炭素社会の実現というのは、本当に大きく、今、舵を切って行かなきゃいけない課題だと思います。我々政治も、行政も、しっかりお席に果たして行かなければいけないと思います。民主主義国家ですから、是非一人ひとりの国民皆さんの声で、政治も行政も確実に変わります。新しい社会を作ろう、脱炭素のすばられしい流れをつくろう、そうした想いをぜひ皆さんがお一人ひとり思って頂いて、政治や行政の活動もバックアップをして、そして突き動かしていただきたいというふうに思います。どうぞよろしくお願いします。ありがとうございます。