2050年までにカーボンニュートラルを実現するという目標に向けて、車・モビリティ 業界も、変革の時を迎えています。車を持たなくても快適な移動を実現するMaaS(マース)、CO2や有害物質を排出しないゼロエミッション車など、2022年に必ず知っておきたい4つのトレンドを解説します!

1. Maas(マース)

MaaS(マース)とは「Mobility as a Service」の頭文字で、日本語では「乗り物のサービス化」などとも呼ばれます。すでにある交通手段をつなぎ合わせることで、マイカーを所有せずとも、快適に目的地へ移動できるようにすることです。

電車やバス、カーシェアリング、自転車、タクシーなど、現在独立して存在している交通手段のサービスを、共通のアプリなどのテクノロジーを利用して統合することで、目的地やニーズに応じて移動方法を計画・予約・決済できるようにすることをめざします。

オーストリア・グラスの路面電車(2020年7月)

Maasのパイオニアであるフィンランドでは、2014年に「Whim」というアプリが生まれました。このサービスがめざすビジョンは、このように描かれています。

Our dream is to create a world where you do not need to own a car to lead a fulfilling life. 私たちの夢は、車を持たなくても充実した暮らしを送ることができる世界をつくることです。(引用:Whim)

とはいえ、車を完全になくすことがMaaSではありません。UberタクシーやレンタカーなどもMaaSに組み込まれた交通手段の一種で、個人が必ずしも車を所有する必要はなく、必要な時に短期間利用できるようにしよう、という考えです。

MaaSは、「自分のものを所有する」という1950年代以降加速したライフスタイルを一変させる可能性がある構想ですね。トヨタ、ホンダ、日産などの日本の自動車メーカーも、自動運転車の開発など、MaaSへつながる取り組みの実証実験など開始しています*

2. ゼロエミッション車

ゼロエミッション車は、走行中に排気ガスを出さない車のことで、Zero Emission Vehiclesの頭文字でZEV(読み方:ゼブ)とも呼ばれます。バッテリー電気自動車、燃料電池車など、排気ガスを出さない車を総称して、ゼロエミッション車と呼ぶ自動車メーカーが増えています。

韓国の電気自動車の充電ステーション(2019年6月)

ボルボの高級電気自動車ブランド「Polestar」は、製造工程からCO2を排出しない、本当の意味でのゼロエミッション車をつくろうとしています*。12年ぶりに日本市場に戻ってきた現代(ヒョンデ)は、バッテリー電気自動車と燃料電池車のみを展開予定で、オンライン販売をメインにして店舗を持たないことで、さらなるCO2削減をめざします。

トヨタは、2022年中頃から、bZ4Xを主力のバッテリー電気自動車として国際的に展開する予定です。

3. 自転車の復権

最も脱炭素につながる移動方法は、車を使わないことですよね。しかし、自転車ユーザーや歩行者の安全を確保するには、自転車の利用を促すだけでなく、街を自転車フレンドリーにすることも必要です。

オーストリア・リンツの自転車道路(2020年7月)

例えばアムステルダムは自転車フレンドリーな街として知られていますが、実ははじめからそうだったわけではありません。

1950年代から1970年代にかけて、人々の移動に占める自転車の割合は、80%から20%に大幅に下落しました。車が増えるにしたがって交通事故が増え、1971年には交通事故による年間死者数が3,300人でピークとなり、そのうち400人は子どもでした。市民が安全な街づくりを求めて声を上げ、議員との対話や街づくりへの市民参加によって、今のような子どもやお年寄りでも自転車や徒歩で移動しやすい街が実現したのです。現在、アムステルダムの人々の移動の38%が自転車です*

日本でも、GOOD CYCLE JAPANというイニシアティブがあるのをご存知ですか*

環境にやさしい交通手段であるだけでなく、自転車を通じた健康増進や、余暇の充実、地域内でのコミュニケーションツールとして、自転車を推進しようというもので、自転車専用道路の整備や、シェアサイクルの充実などをめざしています。

4. 人を優先する都市計画

街ごとの排出規制と都市計画によって、汚染の少ない交通手段の利用を促す動きもあります。

特にヨーロッパの都市が、この動きをリードしています。

パリ*やベルリン*は「低排出ゾーン」を導入し、街の中心地に住民以外のマイカーが入れないようにしているほか、バルセロナは、車よりも人を優先した交通規制で排出を抑えることをめざす「Superblocks(カタルーニャ語でSuperilla)」と呼ばれる政府主導の制度を導入しています*

ドイツ・ベルリンでEスクーターを利用する人(2019年7月)

EU全体でも、2025年からEuro7という排出規制を導入します。トヨタや日産が、西ヨーロッパでゼロエミッション車だけを販売することに決めた理由がこれで、これまでで最も厳しい排出規制です。

日本では、残念ながら似たような試みはまだありません。

車は最も排出量の多い交通手段

日本でも、人の移動手段の中で、CO2排出が最も多いのが自動車*

電車、バス、自転車、シェアサイクル、シェアスクーター、ライドシェア、レンタカー、タクシー… 多様化する交通手段に合わせて、私たちも柔軟に移動方法を計画したいですね。

2050年までのカーボンニュートラルを達成するには、こうした多様化する交通手段を生かして車の利用を減らし、必要な車はCO2を出さないゼロエミッション車にすることが欠かせません。

すべての主要な自動車メーカーはゼロエミッション車を販売していますが、ガソリン車、ハイブリッド車など、排気ガスを出す内燃エンジン車を作り続けようとしているメーカーもあります

実はトヨタも、内燃エンジン車を廃止することに二の足を踏んでいるメーカーの一つです。日本を代表する自動車メーカーであるトヨタには、業界をリードしてカーボンニュートラルを実現して欲しいですよね。みなさんも、一緒にトヨタに声を届けませんか?