環境をまもるために、「価値」を変える
こんにちは。サポーター窓口の金海です。
環境をまもるために、あなたがしていることは何ですか。
節水。節電。ゴミを減らす。環境にやさしい商品を選ぶ。署名に参加したり、企業に意見を伝えたり。問題について、ソーシャルメディアやインターネットでひろめたり。
ひとりひとりがすぐにできることは、たくさんあります。
でも、個人ではちょっと難しいこともあります。
グリーンピースは、その「ちょっと難しいこと」で、世界的大企業80社を変えました。
費やした期間は約7年。
いったい、どうやって?
8000種類の化学物質を使用するアパレル産業
いま、日本人は一人あたり年平均40着ほどの衣料品を購入しているそうです。そしてその大半が捨てられています(注1)。
2000年代半ば、ファストファッションと呼ばれる低価格の衣料品が登場し、服は使い捨ての時代が始まったのです。
原料である繊維から、染料・加工剤など8000種類にも及ぶという化学物質など、生産過程の大半が再生不可能な資源に頼るアパレル産業(注2)。
大量消費を満たすためにその生産サイクルが加速し始めたら、それだけ環境負荷は増大します。
たとえばTシャツ1着をつくるのに消費される水は約2,700リットルといわれています(WWF)。染色、洗浄、加工工程でこれだけの水を使うアパレル産業が急速に拡大すれば、それだけ大量の水が汚染されます。
インドネシア・チタルム川。GAP・バナナリパブリック・オールドネイビーなどに製品を供給する工場からの有害な排水がこの流域に流れていることがわかっている。2013年撮影。
水がなければ、人は生きていけません。
そこでグリーンピースは、世界各地で大手ファッションブランドの製品を生産する工場の排水を調べることにしました。
2011年のことでした。
自然の豊かさを楽しむためのアウトドアが、環境を破壊している
清々しい空気、澄んだせせらぎ、美しい自然を楽しむアウトドアスポーツに欠かせない便利なアウトドアウェアが、もしも環境を破壊していたら。
あなたはその服を着て、快く自然の豊かさを楽しめるでしょうか。
グリーンピースの調査から、アウトドアウェアを含む世界的アパレルブランドに商品を提供する工場で、鉛や水銀などの重金属や、オゾン層を破壊する塩素系溶剤、生物の生殖器官の発達に影響を及ぼすアルキルフェノール(APEO)などの有害物質の使用・排出が発覚。
なかでも撥水加工に使用されるフッ素化合物(PFCs)は、いまや世界中の水だけでなく空中や土壌、植物をはじめあらゆる食べ物からもみつかるほど、広範囲に環境を汚染していることが判明しています。PFCsは分解されにくく、人の細胞や血液に蓄積し、肝臓や内分泌腺に悪影響を及ぼす物質で、ストックホルム条約(残留性有機汚染物質条約)で規制されています。
子ども服にも有害化学物質
グリーンピースは世界中のアパレルショップの店頭で販売されている製品も調査しました。
その結果、スポーツウェア、アウトドアウェア、靴、下着、ファストファッションの服、子ども服などからも、複数の残留有害物質が。
グリーンピースはこうした調査をもとに、世界的な市場をもつ大手ファッションブランドに対し、2020年までに有害化学物質の使用と排出を撤廃するよう求めました。
具体的には、たとえばこんなことを要求しています。
- 期限までに製品を生産している工場・加工場の情報公開
- 期限までに規制する有害化学物質のリストを公開
- 期限までに有害化学物質撤廃のための行動計画を発表
なぜ大手ファッションブランド?
世界規模で市場を展開する大手ファッションブランドは、供給網も世界中に展開しています。
有害化学物質を直接的に使用・排出しているのは生産現場ですが、末端の下請け工場や、その工場が所在する国や地域に規制を求めたとしても、もしブランド側がもっと規制のゆるい他の下請けに発注先を替えてしまったら、元も子もなくなります。
環境破壊をその発生源から解決するため、グリーンピースは発注元である大手ファッションブランドへのはたらきかけを決めたのです。
そしてわずか1年余りで、Puma、ナイキ、アディダス、H&M、Zara、リーバイスなど11社が、3年目までにはユニクロを展開するファーストリテイリング、ベネトン、ヴィクトリアズ・シークレットもグリーンピースの要求に合意。2018年までに、全世界で80社が合意に達しました。すべて合計すると、世界のアパレル製品総生産量のおよそ15%を占めています(最新報告書概要)。
2016年、バーバリー・プラダ・バレンチノ・アルマーニ・グッチなどに毎年25億ユーロ以上の衣料品を供給するイタリアの繊維産業地区・プラトがデトックス・キャンペーンに合意。
ファッションブランドが変わるだけではない
水質汚染の原因のすべてが、アパレル産業由来とは限りません。
また、アパレル産業由来の環境破壊は水質汚染だけに限りません(たとえばアパレル産業の温室効果ガス排出量は世界の総量の8%。石油産業に次ぐ規模に達する:注3)。
でも、科学調査に基づいた根拠を明確に示し、企業といっしょに解決策をさがすことで、わたしたち人の暮らしが、そこに密着した産業がいったい何を引き起こしているのか、未来のためにいま、何をどう変えなくてはならないのかが、シンプルにわかりやすくなります。
イメージをたいせつにするアパレル産業にとって、環境破壊の解決に貢献することはブランドへの信頼性を高めることにも役立ちます。
こうしたはたらきかけが入り口になって世界的企業を動かすことで、より持続可能な社会の実現のための道すじが、より多くの人の目に見えるようになっていきます。
そうした動きに欠かせないのは、大量消費ではなく環境保護に「価値」を求める、人の力です。
寄付があるから調査ができる
環境破壊の現場で直接行われる科学調査は、グリーンピースの活動の根幹のたいせつな一部。
その調査を支えているのは、環境保護のためにグリーンピースを信頼し、支持してくれるサポーターの皆さんのご寄付です。
政府や企業に問題解決をもとめてはたらきかけるグリーンピースの活動の費用は、こうした科学調査も含めてすべて、ご寄付で賄われています。
国際ネットワークをもち、専門家も研究者もいるグリーンピース。
そこにあなたの寄付の力が加わることで、まもれる未来があります。
あなたもご寄付で、ここに参加しませんか。
グリーンピースの活動に寄付サポートで参加する >出典:
グリーンピース デトックスキャンペーンhttp://www.greenpeace.org/japan/ja/campaign/csr/detox_water/
注1:ハフポスト日本版2014年05月22日掲載:山田敏夫氏著「衣料品は年間約20億着捨てられている」
注2:英国紙ガーディアン2012年3月7日掲載:How can we stop water from becoming a fashion victim?
注3:Sustainable Brands 2018年3月1日掲載:First-of-Its-Kind Report Examines Global Environmental Impacts of Fashion Industry
IFA PARIS 2018年3月掲載:THE FASHION SCENE: IS SUSTAINABILITY IN THE FASHION INDUSTRY REAL?