50年間でサメの個体数は70%以上減少。急がれる保護と海洋保護区の必要性。
サメは、海の生態系を維持するためになくてはならない存在にも関わらず、その個体数は過去50年間減少し続けています。なぜサメは減り続けているのでしょうか。サメが海の生態系でどのような役割を担っているのか知っていますか?
サメの危機的な現状と共に、締結に向けて現在最後の国際会合が開かれている海洋保護条約の必要性を考えます。
サメの個体数は50年間で激減
世界の海に生息するサメの個体数は、この50年間で70%以上減少しています。IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストによると、世界のサメ類とエイ類の37%が絶滅危惧に指定されています。*
サメと聞くと多くの人が凶暴で、人を襲う怖いイメージを持っていると思います。しかし実際は、サメによって命を奪われる人は年平均4人と少なく、対照的に、世界中で人間によって殺されているサメの数は年間数千万匹にも上ります。1時間に1万匹以上のサメが人により殺されている計算です。*
人間活動の方がサメにとって大きな脅威になっている原因は何でしょうか?
激減の主要な原因は人による乱獲
減少の原因として科学者が指摘するのが「乱獲」です。乱獲とは、動物が自然に増える速度を超えて、過剰に捕獲してしまうことを指します。サメの場合、ヒレなどの体の一部を狙った乱獲が多く、その多くが食用や油などが目的です。
そのため「フカヒレ漁(シャークフィニング)」というサメにとって貴重なヒレのみを切り落として海に捨てる行為が多発しています。*
2020年、世界で最もサメ肉を輸出した国はスペイン(15,000トン)、ポルトガル(10,000トン)インドネシア(7,000トン)でした。 サメは、成長に時間がかかり、一度に生む稚魚の数が少ないため、乱獲の影響を受けやすい生きものです。*
それにも関わらず、産卵期を迎えていない大きさのサメまでもが乱獲され続けています。
このような事態を受け、英政府は2021年5月12日、中華料理に使用されるフカヒレの輸出入を禁止する政策を発表しています。*
サメが生態系において果たす役割
サメは、海の生態系を維持するためになくてはならない存在です。
食物連鎖の頂点に位置する高次捕食者(大型の肉食動物や魚類など)が、人間の影響で減少し、それが生態系崩壊の主因となっているとの研究成果を生態学者のチームが2011年に科学誌「サイエンス」で報告しています。*
高次捕食者が増減すると、捕食者がエサにしていた生物が激増、その影響によってそれ以下の小さな生物が激減するなど、食物連鎖の下位の生物へ順次影響を及ぼす「栄養段階カスケード」現象を引き起こすことが確認されています。
これにより連鎖的にその生態系が破壊されることになります。
また、小さな生きものが姿を消すことも食物連鎖の上位に位置する捕食者の存続に関わります。一種類の動物が自然環境から消えることは、全てのバランスが崩れることにつながります。
世界の海の30%を保護区にする必要性
どこの国にも属さない公海は、地球の表面の43%を占める広大な空間で、豊かで多様な生命にあふれています。しかし、海はまだ十分に保護されておらず、乱獲や混獲、化石燃料の海底掘削、プラスチック汚染、気候変動によるダメージに直面し続けています。
科学者たちは、世界の海洋の少なくとも30%を人間活動のあらゆる影響から保護することを求めています。この海洋保護区の設立を実現するための海洋保護条約締結に向けた最後の国際会合が8月15日から26日まで、ニューヨークで始まりました。
強力な国際条約が合意されれば、近い将来、2030年までに少なくとも公海の30%を人間の活動の影響を受けない海にできる可能性があります。
グリーンピースも日本中から集まっている16,381人を代表して、環境省と外務省に署名を提出しました。世界中で400万人がこの署名に参加しています。
同時に、政治およびビジネスのリーダーは、海洋危機の根本原因に取り組む必要があります。
エネルギーシステムを原子力や化石燃料から100%再生可能エネルギーに転換する取り組みを加速し、森林破壊を止める必要があります。 気候変動が海洋に与えるストレスが緩和されれば、海の生きものの健全な多様性を取り戻すことにつながります。
グリーンピースは、世界55の国と地域で活動するネットワークを生かして、国内だけでは解決が難しい地球規模で起こる環境問題に、グローバルで連携して解決を目指しています。その国際的なネットワークを活かして、さまざまな気候変動の解決策を、各国に適した形で推進しています。
気候変動を抑え、森や海の生態系を守るアクションの一つとして、グリーンピース・ジャパンへの寄付で活動に参加してみませんか?