「原発を最大限活用」?あなたの意見を求めています。
2011年3月に発生した東電福島第一原発事故のあと、エネルギー・環境戦略を決定するために実施する国民的議論を経て日本は「原発依存度を可能な限り減らす」ことを決めました。
これは、「討論型世論調査」を実施し、全国11都市での「意見聴取会」を開催し、さらにパブリックコメントを実施して、決められた国の方針でした。
しかし、この方針が今、覆されようとしています。
原発を推進する趣旨の国の文書が4つ発表され、同時にパブリックコメントが募集されています。
1つは、原発の寿命延長に関するもので、他の3つは、原子力活用方針を示したものです。
原発の寿命延長に関するパブコメ
・対象文書「高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案)」
パブコメ締切:1月21日(土)0時00分(注:1月20日(金)23時59分)
原子力規制委員会の文書。全2ページ。運転開始後30年を超える原発を運転しようとするときは原子力規制委員会の許可を得なくてはならない、とするもので、東電福島第一原発事故後に決められた運転期間を原則40年としたルールを反故にするものです。
原子力規制委員会は、運転期間制限は規制政策ではなく利用政策で決められるとしました。これは、安全性(規制)優先ではなく、電力供給(利用)を優先するということにほかなりません。利用政策と規制政策の分離という、東電福島第一原発事故の重要な教訓を投げ捨てるもので、安全責任の放棄です。老朽原発を動かすことは極めて大きな危険を伴います。運転休止中であっても、配管やケーブル、ポンプ、弁など原発の各設備・部品が劣化します。交換できない部品も多くあります。事業者の点検や原子力規制委員会の老朽化評価には限界があります。審査をすれば安全性を担保できるというのは誤りです。運転期間を原則40年とする現行の規定を覆すべきではありません。
短くてもかまいません。下記の【パブコメ提出方法】を参考に「老朽原発を動かすべきでない」という声をぜひ、あげてください。
原発推進方針に関するパブコメ
他の3つは、いずれも「原発推進」の内容ですので、同じ文章を提出することもできます。
・原子力利用に関する基本的考え方(案)
パブコメ締切:1月23日(月)18時00分
原子力委員会の文書。32ページ。東電福島第一原発事故後の「脱原発依存」方針を覆し、ウクライナ情勢やコロナ感染拡大、地球温暖化などを口実としながら「安全性確保を大前提に、原子力エネルギーの利用を進める」としています。
パブコメ提出はこちら(こちらのみ、下記の【パブコメ提出方法】と異なるシステムになっています。ご注意ください。)
・今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)
パブコメ締切:1月22日(日)23時59分
資源エネルギー庁の文書。全20ページ。原発再稼働、運転期間延長、原発の新規開発・建設、核燃料サイクルを推進(使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、再利用すること)するというもので、東電福島原発第一原発事故後に国民的議論で決定した「原発依存を減らす」方針を覆すものです。
・GX実現に向けた基本方針
パブコメ締切:1月22日(日)23時59分
GX実行会議(経済産業省など)の文書。全26ページ。GX(グリーントランスフォメーション)とは、「化石燃料中心の経済・社会、産業構造をクリーンエネルギー中心に移行させ、経済社会システム全体の変革」を指します。この基本方針では、徹底した省エネの推進、再生可能エネルギーの主力電源化など、応援すべき内容もありますが、「原子力の活用」水素・アンモニア等火力発電の「脱炭素化」も推進するとしています。
グリーンピースも送ります。
(以下、グリーンピースが提出するパブコメの概要)
原発にノー
「原子力への依存を可能な限り低減」という方針は、「討論型世論調査」を実施し、全国11都市での「意見聴取会」を開催し、さらにパブリックコメントを実施して、決められた国の方針であり、それを覆すのであれば、パブリックコメントに加え、再度「討論型世論調査」を実施、全国での公聴会を行うべきです。
原子力は事故や不正、裁判所命令などによりたびたび停止する不安定な電源です。原子力や、他の先進国では2030年までの全廃が取り組まれている石炭火力発電への依存はやめ、建築物の断熱や、機器の省エネ推進、再生可能エネルギーの普及拡大によるカーボンニュートラルを実現すべきです。
火力発電の「脱炭素化」にノー
石炭火力発電にアンモニアを混ぜてCO2排出量を減らす方針は、アンモニアが製造時に大量のCO2を排出することに目をつむっています。石炭火力発電は、最新型であってもそのCO2排出量は天然ガス発電よりも多く、ほかの先進国では2030年までの全廃が取り組まれています。大量にCO2を排出する石炭火力は全廃していくべきです。
【パブコメ提出方法】
- 上記それぞれの「パブコメ提出はこちら」をクリック
- それぞれ、赤い「PDF」とある横の文書を開く(一回開かないと次へ進めません)
- 「意見提出前に、意見募集要領(提出先を含む)を確認してください」の下にある
- □にチェックを入れる
- 意見入力へ ボタンをクリック。
- 名前・住所などは任意です。
- 意見を入力後、「わたしはロボットではありません」の□にチェックをいれて、「内容を確認」をクリック、さらに次の画面で「提出」をクリックする。
パブコメを書く会/参考サイトのご案内
FoE Japan、FridaysForFuture Tokyo、グリーンピース・ジャパン、気候ネットワークなどでは、パブリックコメントを書く会を実施しており、参考サイトもあります。
ぜひ、ご参加ください。
■ グリーンピース・ジャパン 1月20日20時〜 お申し込みはこちら
■ FoE Japan 1月14日 14:00, 16:00 1月17日 18:00 参考サイト(パブコメ書く会のお申し込みもこちら)
■ Fridaysforfuture Tokyo 1月15日 20:00 お申し込みはこちら
■ 気候ネットワーク 参考サイト
パブコメを出す意義
国民的議論を経て、決めた「脱原発依存」の方針が、国民的議論を経ずに覆されていいわけがありません。「おかしいことはおかしい」と声をあげないと、異論がなかったことにされてしまいます。ぜひ、短くても、一言でも、パブリックコメントを提出しましょう。
*追記
グリーンピースが提出したパブリックコメントは下記の通りです。
https://www.greenpeace.org/japan/wp/wp-content/uploads/2023/01/3c4d0740-greenpeacejapan_gx_comment_1.pdf
https://www.greenpeace.org/japan/wp/wp-content/uploads/2023/01/7c0a7178-greenpeacejapan_gx_comment_2.pdf