【COPとは】COP30で決まったことと決まらなかったことーーグリーンピースは何をした?
この投稿を読むとわかること

アマゾンの中心で開幕したCOP30
2025年11月10日よりCOP30(国連気候変動枠組条約第30回締約国会議)が、アマゾンの玄関口と呼ばれるブラジルのベレンで開催されました。
議論の主軸となったのは、気候変動対策のための気候資金の新たな目標設定、2035年に向けた温室効果ガス削減目標(NDC)の強化、そして森林生物多様性の保全についてなど。公式日程は21日までの予定でしたが、交渉は難航し、また会場内で発生した火災の影響もあって日程は延長され、現地時間22日に閉幕を迎えました。
世界中から約200カ国の代表団が参加したこのCOP30はどのような意味を持つのでしょうか。COP30で決定したこと、積み残された課題、またグリーンピースが現地で行ったことなどを振り返ります。
なぜCOP30は重要なのか
グリーンピースは、「1.5度の約束」が守られるために、COP30が非常に重要な分岐点になると、その重要さを訴えてきました。
そもそもCOPとは
COP(コップ)とは「Conference of the Parties(締約国会議)」の頭文字をとった呼称で、「契約に合意した国や地域による会議」を意味します。
今回ブラジルで開催されたCOP30は、温暖化防止のために大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを目的に締結された気候変動枠組条約(UNFCCC)のための話し合いの場として開催されています。COPというと、多くの場合この「気候変動枠組条約についてのCOP」を指しますが、その他に、生物多様性条約(CBD)、砂漠化対処条約(UNCCD)などについてのCOPもあります。
パリ協定から10年
これまで、気候変動枠組条約のためのCOPでは、2015年にパリで開かれたCOP21で採択された「パリ協定(地球の平均気温の上昇を産業革命前に比べ1.5度に抑える約束)」のルールが議論されてきました。
これまでの交渉で、パリ協定にまつわるルール整備はある程度進んでいます。しかし、具体性や強制力などの不十分さが大幅な温室効果ガス削減に繋がらず、前々からより力強く野心的なルール整備が求められてきました。
今年はパリ協定の採択から10年の節目です。COP30では、1.5度の約束を守って気候危機を回避するためにルールや対策を十分に具体化させ、パリ協定を実行に移すための土壌整備こそが、最も求められている大きな課題だと考えられます。
地球にとってのアマゾン
COP30が初めてアマゾンで開催されたことにも大きな意味がありました。4,000億本近いと推定される樹木からなるアマゾンの熱帯雨林には、地球上に生息する野生生物種の1割が住んでいます*。地球の肺としても機能しており、人間が排出する二酸化炭素のおよそ15〜20年分にあたる炭素を森林全体で貯蔵しています*。さらに、熱帯雨林は地球の水循環の要でもあります。森林自らの生理循環機能で毎日約20兆リットルもの水を大気中に放出、雨を降らせ、水を巡らせています*。
アマゾンは地球にとって、生物多様性のゆりかごであるとともに、最も重要な気候の調整役なのです。

しかし、現在、アマゾンの森林の38%は、大規模農業や金の違法採掘によって生態系の変化などのダメージを受けた状態にあり、さらに17%がすでに失われてしまったことがわかっています*。アマゾンの現状と、重要性を世界のリーダーに訴え、森林保全の道筋を確定させることもCOP30の課題の一つでした。
COP30で決まったこと、決まらなかったこと
COP30では、2035年までに途上国での気候災害による被害を軽減するための資金支援を3倍に増やす方針や温室効果ガス排出削減の加速を盛り込んだ合意文書が採択されました。しかし、最も重要な課題であったパリ協定に整合する化石燃料を減らす道のりについての具体的な話し合いは十分に進んでいません。
地球温暖化の主な原因である化石燃料からの脱却自体は2年前のCOP28ですでに合意済みです。しかし、「それをどう実行するか」という肝心な実行段階で世界はまだ足並みを揃えることができていません。

COP30の議長国ブラジルのルラ大統領は、化石燃料からの脱却のロードマップ(工程表)を作成をすることを提案し、ドイツやイギリスをはじめとしたEU諸国や島嶼国、アフリカ、気候変動に脆弱な国など80カ国以上がこれに賛成して、実効的な前進を後押ししました。
しかし、ロシアやサウジアラビアなど、強く反対する産油国や、賛成を表明しない国々があり、ロードマップ策定は合意に至りませんでした。化石燃料に対する世界の姿勢は未だに分断された状態にあると言わざるを得ません。
日本は今年も化石賞を受賞
日本も、ロードマップの提案に賛成を表明しなかった国の一つです。LNGの利用や、二酸化炭素回収、利用、貯蔵技術(CCUS)、水素、アンモニア等との混焼技術など、科学的に実質的な温室効果ガス削減効果が実証されていない「移行的技術」を、必要だとする政府の方針が理由とされています。
こうした姿勢により、日本は、COP30でも気候変動対策に消極的な国に贈られる不名誉な「化石賞」を受賞しました。COP29でのG7としての受賞を含めると、COP25から6回連続の受賞となります。
グリーンピースはCOP30で何をした?
グリーンピースは代表団を派遣して、COP30の議論に参加しただけでなく、日本からも含めた50万人以上のアマゾンの尊重を求める人々の声を直接会場に届けました。アマゾンを含む全ての森林の破壊を終わらせるための具体的な約束を求め、世界中から集まった人々のメッセージが他言語で会場壁面に投影されました。
また、グリーンピースの船、レインボー・ウォーリア(虹の戦士)号は、アマゾン先住民の指導者たちを乗せ、アマゾンの保護と気候正義を求める200隻からなる船団に参加。COP30開催にあわせてベレンを訪れて、森林破壊ゼロと気候正義を守るためのメッセージを世界の指導者に届けました。

その他、COP会場でペルー、フィリピン、ベルギーから気候変動の影響を受けた住民たちを招いて気候被害について展示したり、石油ガス産業による補償されないままの気候影響をテーマにしたアート展示を行ってアピール。水銀汚染がアマゾン全域の住民を脅かしていることを告発したドキュメンタリー映画『Amazon: The New Minamata(アマゾン:新たな水俣病)』の上映会や討論会など、アートの力で参加者に呼びかける試みも行いました。

ティッピング・ポイントを回避し「転換点」を作り出す
COP30は期待を裏切る結果に終わりましたが、ベレンにはこれまでのCOPで最も多くの先住民たちが参加し、市民団体が中心となった力強いアクションは世界中の人々の想いを代弁しました。意思決定の場に寄せられる気候正義を求める声は日々大きくなっています。

来年のCOP31はトルコの沿岸都市アンタルヤで開催されることが決定しています。
今私たちの目の前には、気候の臨界点(ティッピング・ポイント)が迫っています。臨界点を超えてしまえば、気候システムは崩壊の規模や速度を爆発的に増し、もはや後戻りは困難となってしまいます。
日常の生活の中で、すでに問題となっている極端な気温や、体験したことのないような気象現象、市場に出回る特産物の異変といった変化も加速度的に大きくなるでしょう。
しかし、臨界点までに、世界中で確かに大きくなっている「気候危機を止めたい」という声を実行に移し、化石燃料からの脱却、森林保全といった仕組みづくりを迅速に進めることができれば、反対に今よりももっと豊かで生命力に溢れた自然との共生を実現することが可能なのです。
求められているのは、科学に基づいた指標を現実に達成する計画、それらを策定して実行に導くリーダーシップと、それを後押しするより多くの市民の声です。

グリーンピースは、アマゾンの先住民たちのように、行動をやめない仲間とともに、現場主義の活動を続けています。地球上に住むすべてのいのちを大切にしたいという世界中の願いを、取りこぼすことなく活動の力に変えています。仲間は多く、今だからできることがまだたくさんあります。私たちと一緒に「転換点」を作り出してください。
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