気候変動対策に電動化は必須、日本もEVシフトの取り組み継続をーーEUが内燃機関の新車販売禁止方針を緩和

国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都港区)は、12月16日(現地時間)、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会が、2035年以降の域内における内燃機関車の新車販売を禁止する政策を修正し、条件を満たせばエンジン車の販売も認めると発表したことを受け(注1)、本日、以下のコメントを発表しました。
主な変更のポイント
- 各自動車会社は2035年までに走行する車両からの排出量を90%削減し、残りの10%は欧州製低炭素スチールやバイオ燃料および合成燃料(e-fuel)の使用など補完的な方法で削減することを条件とする。
- プラグインハイブリッド(PHEV)車やレンジエクステンダー(航続距離延長型車両)などの内燃機関の使用を2035年以降も認める。
- 将来的にEVが次世代車両の中心となるという方針を維持し、よりEVを普及させることを目的に、小型EVを対象とした新カテゴリーを設置、域内生産の小型EVを優遇する措置を導入する。
- 今回の修正の背景として、2024年の世界の新車販売に占めるEVの割合は全世界で2割を超えるなど増加しているものの、中国企業のEVが半数以上を占めていることにより、特に欧州の自動車企業が世界各地で市場シェアを縮小し、苦境に置かれていることがある。
グリーンピース・ドイツ事務局長、マーティン・カイザー
「欧州委員会の今回の規制緩和は、地元の自動車産業と欧州の気候政策を後退させることになります。これは欧州の自動車業界に短期的な利益をもたらしますが、長期的な将来性はありません。この後進的な産業政策は雇用・大気質・気候にとって悪影響であり、手頃な価格の電気自動車供給を遅らせ、気候危機の進行を抑えるために運輸部門のCO2排出量を削減する、あらゆる努力を損ないます。各国政府と欧州議会は公約を堅持し、欧州自動車産業に持続可能なモビリティ分野での未来を与え、この計画を拒否すべきです」
グリーンピース・ジャパン 気候変動・エネルギー担当、塩畑真里子
「過去数年間、EUは域内の自動車産業を守りつつ、気候中立を達成させるという難しい舵取りを強いられてきました。今回の修正は、一部の加盟国の自動車産業からの強い要望にこたえる形になりましたが、スペイン政府のように2035年の内燃機関廃止を維持することを求める声も根強くありました。情勢によっては電動化方針が再度修正される可能性は大いにあります。域内ではすでにEV開発に相当な投資がなされており、今回の発表によって、EV技術のイノベーションを推進してきた企業が逆に困難な立場に追いやられる可能性も指摘されています。約100年にわたって我々の日常生活の一部であった内燃機関車から完全に脱することはそう容易なことではないため、多少の政策の揺らぎはある程度予測されていました。一方、気候危機が深刻化する中、電動化の大きな方向性が揺らぐことはありません。日本の自動車会社は、今回の変更によって内燃機関車が今後も道路を走り続けることが可能になったと解釈せずに、継続的な技術イノベーションを起こし、排出量を一刻もはやくゼロにすることに注力すべきです」
以上
(注1)欧州委員会 “Taking action for a clean and competitive automotive sector”(2025年12月16日発表)