埋立処分場で見た使い捨て時代の限界、循環型社会への道筋とは
家庭や事業所から日常的に排出されるごみ(廃棄物)の処理は、地球環境に大きな負荷をかけており(注1)、特にプラスチック廃棄物は、世界中で環境や人間の健康に深刻な影響を与えています。こうした状況を受け、プラスチック汚染対策に関する国際的な拘束力を持つ条約策定のため、11月25日から韓国・釜山で第5回政府間会合(INC5)が開催され、日本政府も参加しています。プラ生産への規制が大きな焦点となる一方で、その需要を支える使い捨ての社会・産業構造からの脱却はこれまでも重要な課題として指摘されてきました。ごみの削減(リデュース)・再利用(リユース)・リサイクルを基本とした循環型社会への転換が叫ばれる中、大量に排出されるごみはどのように処理されているのか。国内最大級の一般廃棄物処理施設(注2)の新江東清掃工場(江東区)を見学しました(注3)。
今回参加したのは、公益財団法人東京都環境公社が実施している埋立処分場見学案内で、東京都江東区にある新江東清掃工場、不燃ごみ処理センター及び粗大ごみ破砕処理施設などをめぐり、廃棄物処理や資源化の過程を見ることができます。他の参加者と集合場所の最寄り駅で待っていると、指定された時刻に見学バスが到着して見学会が始まりました。
可燃ごみの処理施設
初めに訪れたのは、生ごみや紙、布類などの可燃ごみを処理する新江東清掃工場です。ここは1日に最大で1800トン、1年間で約35万トンものごみを焼却する能力を有しています。「バンカの中に入ると、数分で服にごみの臭いが染み付くので着替えなければいけません」。工場の作業員の説明を聞きながら、施設内を歩きます。「ごみバンカ」とは、ごみ収集車によって清掃工場に運ばれた廃棄物を一時的に集積する大型コンテナのこと。大きなガラス張りの窓から深さ約20メートルの巨大なバンカを見下ろすと、大量のごみが積み上げられていました。この工場でごみを焼却してできた灰は、約7万トンはリサイクル施設でセメント原料等に再資源化され、約20万トンは埋立処分場で埋め立てられるといいます。
不燃ごみと粗大ごみの処理施設
焼却工場の見学が終わると、見学者はバスに乗り込み、10分ほどかけて中防処理施設(中防不燃ごみ処理センター及び粗大ごみ破砕処理施設)へ移動します。不燃ごみの処理施設には、ベッドやマットレス、本棚など、膨大な量の粗大ごみが日々運びこまれています。可燃系と不燃系のごみは、全て作業員の手作業によって選別されます。この不燃ごみ処理センターでは、さらに不燃ごみをある程度破砕し、その中から資源となる鉄とアルミニウムを強力な磁石を使って集めます。残ったごみで燃やせるものは清掃工場へ運んで燃やされますが、ガラスなど燃やせないものは埋め立てられています。
埋立処分場
最後は、これまで処理されたごみの最終地点、東京都廃棄物埋立処分場に足を踏み入れます。中間処理された東京23区内の不燃ごみや焼却した灰がこれらの処分場に運ばれ、埋め立てられます。中央防波堤外側埋立処分場の広さは東京ドーム42個分で、これまで47年間で5500万トンを埋め立ててきました。埋め立てが終わった場所はごみの匂いはほとんど無く、あちこちにメタンガスなどのガス抜き管がのぞくほかは、緑が青々と繁っています。ところどころに分解されず地面から顔を出すプラスチックごみが目立ちますが、このように長い時間が経っても分解されないプラスチックごみは、海や河川への流出による汚染など、今後数世代にわたって環境に影響を及ぼし続ける可能性があります。
循環型社会の実現に向けて
東京二十三区清掃一部事務組合によると、2022年度の東京都23区内のごみ量は年間約254万トンで、これは東京ドーム約6.8杯分に相当します。東京都23区最後の埋立処分場と言われている新海面処分場は、今後50年以上の埋立が可能との推計があるものの、限界まで埋め立ててしまえば、東京のごみは行き場が無くなります。東京都のごみ排出量はわずかに減少傾向ですが、現在のペースでごみが排出され続ければ、有限な埋立処分場を使い切ってしまいます。今回、大量に運ばれてくるごみの数々を目の当たりにし、現状の大量生産、大量消費、大量廃棄型の経済や社会の持続可能性に、改めて課題を感じました。
持続可能で資源が循環する社会に移行するには、政府や企業、市民が一体となって行動することが必要です。廃棄物の中でも特に深刻な問題となっているのが、99%化石燃料由来で、採掘から廃棄に至るまで環境と人間の健康に多大な悪影響を及ぼすプラスチック汚染です。この問題を解決するためには、従来の使い捨て文化を見直し、プラスチックの生産量や使用量を削減することが不可欠です。今回のINC5でも、プラスチック汚染を根本的に解決する条約実現に向け、より生産規制に踏み込んだ積極的なアプローチが求められます。
以上
(注1)環境省によると、日本国内の廃棄物分野の温室効果ガス排出量は、2021年度で年間2990万トンで、日本の総排出量の約3%を占めます。
(注2)東京都23区内には、可燃ごみを処理する清掃工場が22施設(建替中の2施設を含む)、不燃ごみ処理センターが2施設、粗大ごみ破砕処理施設が1施設あります(2024年11月現在)。
(注3)新江東清掃工場の延命化工事に伴い、施設見学は2029年3月まで中止となります。