ジャパンモビリティショーのトヨタブースで、着物姿で「感謝状」を掲げるグリーンピーススタッフ(2025年11月5日、東京ビッグサイト)

国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都港区)は11月5日(水)、東京・有明の東京ビッグサイトで開催されているジャパンモビリティショーで、自社のコンセプトカーなどを展示している世界最大の自動車メーカーのトヨタ自動車(愛知豊田市)に対し、世界で初めてハイブリッド車(HV)量産化を果たした同社の功績を讃えるとともに、日本の年間総排出量の半分以上に匹敵する同社の温室効果ガス(GHG)総排出量(注1)の削減を求める「感謝状」を掲げてアピールしました。

トヨタに対する感謝状の表裏

<トヨタによるHVの普及と温室効果ガス排出量の関係>

トヨタは、1997年に世界初の量産型HVとして「プリウス」を発売し、ハイブリッド技術を牽引してきました。2024年には日本国内における新車販売の54.8%をHVが占める(注2)ほど、低燃費を可能とする技術が支持されています。一方で、トヨタのHV1台あたりの排出量は平均30.79トンCO₂e(二酸化炭素換算)で、内燃機関(ICE)車よりは約33%低いものの、バッテリー電気自動車(BEV)と比較すると2倍以上に相当する数値です(注3)。クルマ1台あたりの排出量削減は実現できても、販売の絶対数が増えれば排出量は増えるため、トヨタのGHG総排出量は増え続けます。実際に同社は、前年比の販売総数がほぼ同じであった2024年、販売に占めるHVの割合が上昇し、BEVの販売台数も増えたにもかかわらず、総排出量はほとんど減少しませんでした(注4)。

グリーンピース・ジャパン プロジェクトマネジャー、高田久代

「会場で各企業に尋ねたところ、展示車両のうち、ホンダはほとんどがEV車だったのに対し、トヨタはEV専用車の展示はありませんでした。トヨタは、1社で日本全体の年間GHG総排出量の半分以上に匹敵する規模の排出を世界で続けていますが、パリ協定の1.5度に整合する総排出量の削減目標は設けていません。2035年までに化石燃料を燃やすICE車の販売を終了することが科学的に求められているにも関わらず(注5)、顧客の好みに応えるためとして、ICE車を主要商品として訴求し続けることは、トヨタが責任ある大手企業として本来負うべきGHG総排出量の削減を、顧客判断に責任転嫁していることにならないでしょうか。これまでの削減努力に感謝しつつ、トヨタには『走り続けたいから、いま減らす』ために、総排出量の削減目標の早期発表を期待します」

以上

(注1)トヨタの報告・開示によると、2023年度に同社が世界で排出したGHG排出量は二酸化炭素換算で5億9,389万トンで、日本のエネルギー起源総排出量(2023年)の半分以上に匹敵する。

(注2)日本自動車会議所 インフォメーション(2025年1月発表)

(注3)グリーンピース・ジャパン「トヨタ、最も意欲的なBEV計画でもパリ協定目標に届かず 1.5度目標に整合する排出量削減目標設定と内燃機関車廃止が不可欠ーー報告書『岐路に立つトヨタ』を発表」(2025年10月27日発表)

(注4)グリーンピース・ジャパン「トヨタの2024年温室効果ガス排出量、5億8957万トンCO₂eにーーハイブリッド・EV割合高まるも排出量は変わらず」(2025年11月4日発表)

(注5)国際エネルギー機関(IEA)は、2050年までのネット・ゼロ・エミッション・シナリオに沿うためには、2035年までにすべての自動車とバンの販売をゼロ・エミッションにする必要があるとしている。https://www.iea.org/energy-system/transport/cars-and-vans