EUが新たな包装規制案に暫定合意 リユース可能な包装の推進にテコ入れ
欧州連合(EU)が3月4日、食品包装に関する新規制案で暫定合意したことを発表しました(注1)。規制案には、繰り返し使える包装を取り入れるリユース目標の設定やすべての包装をリサイクル可能なものにすること、必要のない包装の削減などが盛り込まれました。規制が発効されれば、果物や野菜の包装、飲食店内で提供される食品や飲料の容器包装など、特定の使い捨てプラスチック包装は、2030年1月から禁止されます。規制案は今後、欧州理事会と欧州議会の承認を経て導入される見通しです。
EUがこのような規制案を策定した背景には、年々増加し続ける包装廃棄物の実態があります。2021年にEUで発生した年間包装廃棄物量は、1人当たり188.7キログラムで、2020年より11キログラム近く増えました(注2)。これを大幅削減するため、包装規制案が議論されていましたが、産業界はこれに強く反発してきました。グリーンピース・オーストリアの持続可能な消費の専門家、リサ・パンフーバーは、「規制案ではリユースシステムの優先や使い捨てプラスチック包装削減といった目標が著しく骨抜きにされました。しかし妥協案であっても、数年にわたる交渉を経て、欧州理事会と議会がこの後、包装規則案を採択することが重要です」と指摘しています。
規制案ではこのほか、一部の製品を除くアルコール飲料と非アルコール飲料について、2030年までにリユース可能な包装の導入目標(少なくとも10%)を設定することが要請されます。飲料や持ち帰り食品の販売業者は、消費者に容器を持参する選択肢の提供を義務付けられるほか、2030年までに製品の10%をリユース可能な包装形態で提供する努力も求められます。さらに、レストラン、食堂、バー、カフェ、ケータリングサービスに対し、水道水をリユース可能または詰め替え可能な形で提供するよう加盟国が奨励することも盛り込まれました。
今回の暫定合意について、グリーンピース・ジャパン、プラスチック問題担当の大館弘昌は、「当初より内容が弱まってしまったことは残念ですが、これによりEUはリユースの推進に一定の役割を認めたことになります。一方、日本政府はプラスチック資源循環戦略の数値目標の1つに『2030年までにプラスチック容器包装の6割をリユース・リサイクルにする』ことを掲げながらもリユースの推進に遅れをとっています。政府には、まずリユース目標の明確化やセクター別の数値目標を設定し、リユースの推進を政策レベルで行うことを改めて求めます」としています。
(注1)欧州議会 プレスリリース(2024年3月4日発表)
(注2)EU統計局 包装廃棄物統計(2023年発表)