ナイキ、エスプリなどが有害化学物質全廃の業界最下位グループに グリーンピース、『デトックス・キャットウォーク』発表 ~グローバル衣料品ブランドの有害化学物質全廃への取り組みをランキングに~

国際環境NGOグリーンピースは本日7月5日、大手衣料品ブランドを展開する企業19社の有害化学物質全廃への取り組みを比較した世界ランキング『デトックス・キャットウォーク』を発表しました(注1、2)。

最上位の「先取り前衛ブランド」にはザラ(Zara)を展開するインディテックス、H&M、ベネトンの3ブランドが位置付けられ、グリーンピースと合意した2020年までの有害化学物質全廃に向けて順調に取り組みを進めていることを評価しました。一方、ヴィクトリアズ・シークレット、エスプリ、ナイキ、李寧(リーニン)の4ブランドは有害化学物質全廃のために必要な措置を取っていないため、最下位グループとなりました。日本企業ではユニクロを展開するファーストリテイリングが3グループ中2番目の「進化系ファッションブランド」に位置付けられ、同グループ12ブランド中上位5ブランドの一つに評価されました。同社は、2020年1月1日までに事業活動における有害化学物質を全廃することを、グリーンピースと合意しています。

本ランキングは、衣料品ブランドを「先取り前衛ブランド」「進化系ファッションブランド」「NGファッションブランド」の3グループに分類し、各社の有害化学物質全廃への取り組み状況を消費者に分かりやすく示したものです。主な評価基準は、製品と製造工程における有害化学物質排出の2020年までの全廃を進めているか、PFCs(フッ素化合物)などの有害化学物質削減とより有害性の低い物質への代替に力を入れているか、排出している化学物質とサプライヤーの情報を公開しているかの3点です。

「進化系ファッションブランド」内下位のアディダス、バーバリー、リーバイス、Primark、プーマ、及び「NGファッションブランド」のヴィクトリアズ・シークレット、エスプリ、ナイキ、李寧(リーニン)は、有害化学物質の禁止が十分ではありません。上記ブランドは有害化学物質排出ゼログループ「ZDHC」(Zero Discharge of Hazardous Chemicals)の作成した化学物質リストに依存し、このリストにはPFCsやジメチルホルムアミド(DMF)といった溶媒などの化学物質が含まれていないためです。

グリーンピース『デトックス・キャンペーン』リーダーのカーステン・ブローダは、「H&M、ザラ、ベネトンの3社がファッション業界をリードし、有害化学物質全廃の新たな基準を定めたことを歓迎します。3社の貢献により、大規模、中規模に関わらず、ファッション産業において有害化学物質の削減が可能なことが証明されました。今回のランキングでは、繊維業界全体が有害化学物質全廃について十分な取り組みをしていないことが示されました。調査した19社の内、トップグループ3社以外の16社は、情報公開面、または有害化学物質削減でランクを下げています。『2020年までに有害化学物質全廃』という期限まであと3年です。16社は期限に間に合うようスピードを上げる必要があります」と訴えました。

一方、ブローダは「今回の大きな進歩は、熱心に取り組む複数の企業が、自社サプライチェーンをしっかりと公表したことです。完全なサプライヤーリストを公開し、互いの信頼関係の上に成り立つ、長期的な関係がサプライヤーと築かれている傾向があります。これは有害化学物質を全廃する上で極めて重要です」と続けました。

尚、ファーストリテイリング、シー&エー(C&A)、ジースター・ロゥ(G-Star Raw)、マンゴー、Miroglioは、化学物質の厳しい管理、自社サプライチェーンにおける化学物質使用状況の情報公開が評価され、「進化系ファッションブランド」の中でも上位となりました。ファーストリテイリングの取り組みには進展があるものの、2020年までの全廃を達成するためにはよりスピード感をもった取り組みが必要です。同社は、有害化学物質に『安全基準はない』ことに同意しています。一方、化学物質廃止の期限をより厳格にすることや、同社のサプライヤーが化学物質の代替により力を入れるといった取り組みはさらに加速することができます。

ブローダは「ファーストリテイリングは現時点で製品の98%がPFCs不使用となったものの、100%に達するにはあと1年を要するとしています。しかし元々の全廃達成目標期限は2016年7月でした。ファーストリテイリングは、製品ごとのPFCs使用有無の情報を顧客に伝え、サプライヤーには有害物質全廃の進捗状況を報告させる必要があります」と訴えました。

グリーンピースの『デトックス・キャンペーン』は、有害化学物質が河川や水質を汚染していることから、衣料品ブランドにサプライチェーンでの有害化学物質使用状況の情報公開と、2020年までの有害化学物質の全廃を求めています。水質汚染の解決は喫緊の課題となっています。中国などの繊維生産国では地下水の80%以上が安全に飲めなくなっています。中国の水資源省の今年の分析によると、中国の井戸水の5分の4が汚染のため安全でなく、繊維産業は水質汚染を招く大きな産業の一つです(注4)。企業による動きは、生産国における政策変更に拍車をかけました。中国では「第12次五カ年計画:化学物質による環境リスクの予防・管理」(注5)に、繊維産業で使用されるPFCs、ノニルフェノール類及びフタル酸エステル類などの有害化学物質が規制リストに加えられました。