広島県の担当者に湯崎知事宛の要望書と署名を手渡すグリーンピース・ジャパンのスタッフ

国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは8月4日、広島県庁を訪れ、学校施設の断熱改修を求める要望書とともに、教室の断熱を求める署名約2万8000筆、体育館の断熱を求める署名約5000筆を広島県の湯崎英彦県知事宛に提出しました。当日は市民団体「つながる気候市民広島」のメンバーも同行し、「気候変動対策のためにも、避難所としての機能を高めるためにも、県として断熱に積極的に取り組んでほしい」と学校施設の断熱の必要性を訴えました。

年々夏の暑さが厳しさを増す一方で、公立学校施設の断熱改修が十分ではなく、エアコンが設置されているにも関わらず、外気温と変わらない中で授業が行われている教室が数多くあります。グリーンピースが事務局を務める市民団体「ゼロエミッションを実現する会」の横浜チームは2023年8月、学校断熱の改修を早急に進めることを求める2万6816人分の署名を永岡桂子文科相(当時)に提出しました(注1)。今回、断熱改修を全国の自治体レベルでも加速させるべく、広島県への提出を皮切りに、署名提出活動を開始しました。今後署名は、大阪府、京都府、愛知県、徳島県ほか、各都道府県知事への提出を予定しています。

夏の教室内温度が35度を超えるケースもあり、熱中症や集中力の低下など、体調や学習環境への影響が懸念されています。公立小中学校の教室へのエアコン設置は、2018年以降急速に進み、現在設置率は9割を超えています(注2)。しかし、グリーンピースが2024年9月に発表した調査から、断熱が施されていない教室では、エアコンだけでは快適な温度を保つことが困難であることがわかりました(注3)。

最高気温が35.3度の中でエアコンを20度に設定した無断熱の教室画像およびサーモグラフィー。

また、学校体育館の断熱改修は、子供たちの健康と学習環境を守るだけでなく、災害時の避難所としての機能を高め、省エネを通じた気候変動対策にも大きく貢献する重要な取り組みです。文部科学省の発表によると、2025年5月時点の公立小中学校の体育館への空調設備設置率はわずか22.7%にとどまり、さらに自治体ごとに大きな差がある(注4)ことから、断熱改修と同時並行での全国的な空調設備の設置が急がれます。

グリーンピース・ジャパン気候変動・エネルギー担当の豊田育生は「今回の署名提出は、自治体が断熱改修の必要性を認識し、国に対して予算措置や支援の拡充を求める声をさらに大きくすることを目的としています。断熱は、子供たちの健康を守るとともに、空調設備のエネルギー削減にもつながります。さらに、災害時の避難所として利用される体育館の断熱は、地域防災力の強化にも寄与します。国と自治体が連携して持続可能な環境改善を行うことが求められます」と話しています。

(注1)グリーンピース・ジャパン「学校教室の断熱を急げ!約2万7千筆の署名を提出ーー署名は継続」(2023年9月1日)

(注2)朝日新聞「小中学校、冷房率9割超え 体育館は5%にとどまる」(2020年9月30日)

(注3)グリーンピース・ジャパン「国内4都県における学校教室の夏期温熱環境調査」(2024年9月4日発表)

(注4)文部科学省「公立学校の体育館等における空調(冷房)設備の設置状況調査を実施」(2025年6月23日発表)