国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都港区)は2月3日、長野県諏訪市の気象データを分析した報道発表資料『気温上昇に影響される伝統ーー長野・諏訪地域の御渡り、酒・味噌造りと気候変動』を発表しました。本資料では、1945年から2025年までの80年間の気象庁の観測データおよび諏訪湖の御渡り(注1)出現を記録した八劔神社の記録(1444年〜2025年)をもとに、諏訪市の気温と御渡り出現の関係について分析を行いました(注2)。諏訪市の年平均気温は100年あたり2.3度のペースで上昇しており、諏訪湖の全面結氷の発生率も100年あたりで96%から48%まで半減しています。2026年の御渡りは本日時点で発生しておらず、今冬も発生しなければ過去最長だった室町時代の8季(1508〜15年)の記録と並びます(注3)。本資料では、諏訪市で製造される日本酒や味噌の醸造に影響する気温上昇の実態も分析し、それぞれの醸造に適した温度帯の維持が困難になっている可能性が見えてきました。

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<報道発表資料の主なポイント>

  • 御渡り出現日は過去100年間(1925年〜2025年)で19日遅くなっており、出現時期は12月~1月から1月~2月へと移行している。
  • 諏訪市の冬季年間平均気温は100年あたり2.3度のペースで上昇している一方で、年間の氷点下日数(0度未満)は100年あたり約33日減少している。
  • 諏訪湖の全面結氷について、1900年以降、25年ごとの発生率を調べた場合、1900年代初頭は96%であったが、2000年代では48%まで落ちている。
  • 日本酒造り適期(10月頃から3月頃)において、10度および15度という醸造適温の目安を超える日数は、それぞれ100年あたり21日および17日のペースで増加している。
  • 味噌造りについては、諏訪での味噌発酵の適温と言われる最高気温30度を超える日が、100年あたり29日増加しており、特に2023年と2025年にはその倍以上に相当する60日以上を記録した。

グリーンピース・ジャパン 気候変動・エネルギー担当、 豊田育生

「気候変動による気温上昇が、すでに出現が減少している御渡りだけでなく、古くから諏訪で続く酒や味噌造りにも影響を及ぼしていることがデータからもわかり、進行する気候変動が地域の伝統文化の形を静かに変えていくことに焦燥感を覚えます。本日参加した御渡り観測では、氷点下の早朝にも関わらず宮司とともに諏訪湖の観測を見守る人々の多さと熱意に、単なる気象観測ではない御渡りの文化的な重みを感じました。人為的に起きている気候変動は、温室効果ガス排出量の削減につながる私たちの行動でしか食い止めることができません。御渡りや伝統的な酒・味噌造りをはじめ、私たちが慣れ親しんだ文化や伝統を次世代へ繋いでいくためには、政府や自治体、社会的影響力のある企業への働きかけを含め、実際に行動を起こす人が一層増えることが必要です」

以上

(注1)御渡り(神渡り、御神渡り)は、昼夜の寒暖差などによって結氷した湖面に巨大な氷の筋が現れる自然現象。

(注2)八劔神社の記録は1443年12月に始まっているが、気象庁の寒候期の定義では1443年12月は1444年の冬と定義されるため、本資料では1444年〜2025年の記録として記載する。

(注3)文献では1507年から1514年とされている当該期間は、本資料では気象庁の寒候期の定義に従い1508年から1515年とする。