[年次報告書2023] 使い捨てない豊かな生活へのチェンジ
この投稿を読むとわかること
私たちが住む地球はいま、「三重の危機」に直面しています。温暖化による気候変動、速いスピードで種が絶滅し続ける生物多様性の喪失。有害化学物質などによる汚染と廃棄物……。50年前と比べ20倍にも増え、現在も増え続けているプラスチックが、3つの危機に拍車をかけています。グリーンピースは企業やルールを変える国際社会のリーダーに力強く働きかけ、暮らしやすく気候に優しい方法でプラスチック問題の解決に多方面から取り組んでいます。
▼プラスチック問題の解決 活動の成果 > カフェと一緒に、使い捨てないカフェタイムを実現させる > スターバックスが1,500店舗で店内用グラス導入へ > 市民参加型のカフェ調査 > リユースカップシステムの環境への影響を調査 > 国際プラスチック条約で仕組みを変える > 各界をつなぐシンポジウム開催 > #リユースでラブアース |
カフェと一緒に、使い捨てないカフェタイムを実現させる
ほっと一息つけるカフェタイムは環境にも優しいものであってほしい。多くのカフェユーザーの願いが大きく前進した2023年となりました。今年も、カフェの仕組みを使い捨てに頼らないものに変えたいという市民の声を基に活動してきました。
スターバックスが1,500店舗で店内用グラス導入へ
2月、スターバックスコーヒージャパンが全国の1,500の店舗で、繰り返し使える店内用グラスを導入することを発表しました。店内用グラスの利用が徹底されれば、店内での使い捨てカップの消費は大幅に削減されます。スターバックスは世界最大のカフェチェーンですが、飲料の多くが店内・テイクアウト問わず使い捨ての紙(プラスチックコーティング)やプラスチックカップで販売されています。使い捨てカップの消費量が大きいスターバックスの変化が、日本中のカフェチェーンや他業界の使い捨てビジネスの変化を促す可能性があります。グリーンピースは2021年から繰り返し使えるリユースカップの推進を呼びかけてきました。
市民参加型のカフェ調査
9月、全国のスターバックスとタリーズ計150店舗で市民参加型のカフェ調査を実施しました。環境に優しいカフェを求める人々が150店舗に足を運び、各店舗内でリユースカップがどれくらい使われているかを調べました。店内用グラスを導入したスターバックスをはじめ、店内用のリユースカップを用意しているカフェは少なくありませんが、使い捨てではないマグカップやグラスが「実際に使われているかどうか」が大切です。
調査の結果、店内用グラスが導入されたスターバックスの店内のリユース使用率は41%と、前回調査から前進が見られました。一方、タリーズの店内リユース使用率は12%にとどまり、大幅な改善の必要性が明らかになっています。カフェチェーンの前進と課題が浮かび上がりました。この調査を受けて、タリーズコーヒージャパンは店内用マグカップ・グラス利用の全国的な強化に言及しました。
リユースカップシステムの環境への影響を調査
テイクアウトにおいて、返却式リユースカップを普及させることは、これからのカフェに求められる重要な課題です。11月、グリーンピースは、リユースカップと使い捨てカップの環境影響16項目を調査し、両社の環境負荷を比較した調査報告書を発表しました。主にテイクアウトで使われるリユースカップと使い捨ての仕組み、それぞれの環境負荷を、資源採取や原料生産から、流通、消費、廃棄やリサイクルに至るまでのライフサイクルの全体において数値化しました。
その結果、リユースカップの仕組みは、小規模でも使い捨てカップよりも優れていることがわかりました。より多くの人がリユースカップを使うほど、また、リユースカップの仕組みが大きく広がるほど、CO2の排出だけでなく水の消費量含むほとんどの環境影響項目において負荷がより低くなることもこの調査で判明した重要なファクトです。リユースカップシステムの環境優位性を、実際の事業者データを基に網羅的に評価したこの調査は、今後のテイクアウトのあり方に強い影響を与える科学的根拠となり得ます。
国際プラスチック条約で仕組みを変える
世界的なプラスチック汚染の解決の鍵を握るのが「国際プラスチック条約(プラ条約)」です。現在制定に向けて交渉が進んでいるプラ条約はプラスチックをめぐる世界のルールを変える可能性があります。
2023年には、5月と11月にそれぞれフランスのパリとケニアのナイロビでプラ条約の内容を決めるための国際会合が行われました。最も重要な争点は避けられないはずの「プラ生産の規制」です。世界の平均気温の上昇を1.5℃以内に抑えるためには、プラスチックの生産量を少なくとも現在の75%に減らさなくてはならないことがわかっています。
そのためにはプラ条約による生産規制が必要です。グリーンピース・ジャパンからもこの2回の国際会合(INC-2、INC3)にスタッフが参加し、最前線の交渉プロセスで強力な条約を求めました。グリーンピースは現場で、そして市民とともに世界中で、プラスチック汚染を発生源から終わらせる条約を求めて活動しています。
各界をつなぐシンポジウム開催
9月28日には、イクレイ日本事務局とともに、国際プラスチック条約シンポジウムを開催しました。ビジネス界や企業、自治体、若年層団体などから幅広いステークホルダーが参加し、プラスチック問題の解決を目指して、条約交渉の現状や今後について話し合いました。
グリーンピースからは、シニア政策渉外担当の小池が登壇し、生産規制をはじめプラ条約に求められること、現在の日本がそのリーダーシップを発揮できる可能性について発表。各界の第一人者たちが一堂に会したことで、それぞれの事情を理解した上で、目指すべき具体的な目標が明確になりました。効果的なプラ条約のために日本にできることは数多くあります。国際プラスチック条約は2024年に予定されているあと2回の国際会合(INC-4カナダ、INC-5韓国)を経て、2025年までに制定される予定です。
グリーンピースは世界中の300万人の支援者と協力し、実効的な条約を求めて精力的に活動しています。幅広い関係者が集まり現状と課題に関する共通認識を生み出せるシンポジウムの開催は、来たる国際会合での建設的な交渉プロセスのために重要な意味を持っています。
#リユースでラブアース
使い捨てではなく「リユースがもっと広がってほしい」と願う人たちが、「#リユースでラブアース」のハッシュタグキャンペーンに参加し、普段使っているマイタンブラーやマイ容器の写真をSNSでシェア。100件を超える素敵な投稿がありました。