[年次報告書2023] グリーンの輪は国境を超えて
この投稿を読むとわかること
気候変動のリスクと被害の影響を実感する1年でした。この危機を回避しようと、緑豊かで平和な未来のために、世界で300万人以上のサポーターがグリーンピースとともに活動してくださいました。日本、アジア、そして世界各地でのたくさんの成果はすべて、サポーターのみなさんと一緒に成し遂げたものです。
海を守る「海洋保護条約」が国連で合意
2023年3月4日、各国地域の政府がついに公海の生物多様性の保全と持続可能な利用を目指す「海洋保護条約」に合意しました。条約の実現を目指して活動してきたグリーンピースと、世界各国から集まった500万人以上もの人々の声が後押しし、実現した大きな前進です。日本からも1万6000人以上の賛同者の声を政府に届けました。
多くの恵みと気候の安定をもたらしてくれる海。工業型漁業による乱獲やプラスチック汚染などが海洋生態系を脅かしています。20年の歩みを経て、ついに合意された海洋保護条約は海を守るための大きな希望です。現在は世界の海の1%に満たない海洋保護区を、30%へと大きく広げることができれば、自然の治癒力が回復し、海の状態が改善されるといわれます。
グリーンピースは、海洋保護区設立のための活動のほか、プラスチック汚染を止める活動、深海採掘の阻止活動を行い、長年に渡って海洋保護に全力を尽くしています。
ヒュンダイがアマゾン違法採掘などの用途への販売を中止
アマゾンの違法採掘現場に、HDヒュンダイ建設機械(HD HCE)子会社が製造した油圧シャベルが多く使われていることをグリーンピースが突き止めました。
グリーンピースはHD HCEに違法採掘への加担を止めるように求め、HD HCEはこれに応じてアマゾン採掘などの違法用途への重機の販売を中止し、アマゾン保護に尽力することを宣言しました。先住民との協力体制、素早い現地調査はグリーンピースの強みのひとつです。
ドイツが脱原発達成! 再エネ100%を目指して
稼働していた最後の3基が送電網から切り離され、ついにドイツで脱原発が実現しました。2000年には国内の発電に占める原子力の割合が30%だったドイツ。昨年2022年に6%に、そしてついに2023年4月に原発ゼロを達成しました。
ドイツは再生可能エネルギーの割合も、2000年の7%から45%へと大幅に伸ばしています。脱原発を達成したいま、2035年までの再エネ100%が新しい目標です。グリーンピースは科学的根拠に基づいて、何十年も反核運動を続けてきました。
平和と持続可能な未来を願うすべての人の希望となるマイルストーンとして、この達成を祝いましょう。原発を卒業し、再エネを選択する未来が市民の行動により実現しました。
戦争による環境への影響を公表
ロシアがウクライナに侵攻を開始してから2024年2月24日で2年になります。戦争による自然環境への影響は計り知れません。2023年、グリーンピースは、ウクライナのNGOと協力し、戦争による自然環境への影響をマップにまとめました。
戦争の影響は、爆発の生成物による気候変動や酸性雨の促進、石油プラットフォームなどへの攻撃による石油流出、ソナーを搭載した戦艦によるクジラ類への悪影響、土や地下水の汚染、砲撃による森と生態系の破壊、チョルノービリ高度汚染地域の土壌の攪拌など多岐に渡ります。戦争は最大の自然破壊です。
これまでに124万ヘクタールの自然保護地域が影響を受けたことが調査によってわかっています。
TikTokの親会社が2030年のカーボンニュートラル目標を発表
TikTokを始めとするソーシャルネットワーキングアプリを運営する中国のインターネット企業「バイトダンス」が、2030年までに使用するエネルギーを100%再生可能エネルギーにすること、そして、同じく2030年までに温室効果ガスの排出量を90%削減し、実質ゼロとすることを約束しました。グリーンピースとの再エネをめぐるコミュニケーションの末に発表された素晴らしい決断です。
今回、大きな意味のある決断を公表したバイトダンスですが、グリーンピースが2022年に発表した中国のクラウドプロバイダーを分析したレポートでは、気候貢献において、ワースト企業の一つにランクされていました。
バイトダンスに再エネ100%へのシフトを呼びかけてきたグリーンピースは、世界のサポーターとともにこの選択に敬意を表し、歓迎します。
アマゾン川の石油掘削許可取り消しに成功
ブラジル環境・再生可能天然資源院が、ペトロブラス社へのアマゾン川河口で石油採掘をする認可を取り下げました。グリーンピースはアマゾン川河口に驚くほど豊かなサンゴ礁が広がっていることを調査によって確認し、国際的に報告しました。
ブラジル政権が石油プロジェクトを阻止し、アマゾン川河口の貴重な海洋生態系を守った大きな成果です。アマゾンで守られるべきは森林だけではありません。
深海採掘に反対! 100万人以上が署名に参加
いのちのゆりかごである海の中でも、深海は生物多様性の宝庫です。グリーンピースは資源開発のための深海採掘に反対しており、活動には日本も含め現在100万人以上の賛同が世界中から寄せられています。破壊的な採掘産業の立ち上げを阻止するため、世界が団結しています。
「自動車環境ガイド」発表
日本企業を含む世界の自動車大手15社を対象に、気候変動への具体的な取り組み度合いを評価する『自動車環境ガイド2023』を発表しました。第3回目となる今回のガイドは国内外のメディアに取り上げられ、自動車会社の脱炭素への取り組みの目安となっています。
自動車産業は現在、その製造過程や最終製品から炭素を急速に減らしていくことが世界的に期待されており、グリーンピースが世界的な影響力を駆使して取り組む重要なテーマの一つです。
リユースカップシステムの環境優位性を実証
リユースカップの仕組みが使い捨てカップと比べて実際にどれくらい環境に良いのかを調査した報告書『リユースが拓く未来』を発表しました。東アジアでは初となるリユースシステムに関する本調査は、まだ社会的な拡大段階に至っていない小規模なリユースカップシステムであっても、使い捨てカップより環境面で優れていることを実証し、大きな注目が集まっています。
テイクアウトで使われるリユースカップと使い捨てカップ、それぞれの環境負荷について資源採取や原料生産から、流通、消費、廃棄やリサイクルに至るまでのライフサイクルの全体において数値化した今回の調査は、実際の事業者データを基に網羅的に環境への影響を評価した画期的な調査となりました。
調査結果によれば、リユースシステムは、たとえ導入規模が小規模であったとしても、使い捨てカップの利用よりも環境負荷が低いことがわかりました。より多くの人がリユースカップを使うほど、また、リユースカップの取り組みが大きく広がるほど、環境に与える負荷もより低くなります。こうした調査をもとに企業や自治体と対話を進めています。これにより、使い捨てカップからリユースへの流れを生み出すことが期待できます。