知識がなくても経験がなくてもできる! 小田彩子さんの気候変動へ取り組む最初の一歩
「活動へのハードルを下げることになれば」と、インタビューを受けてくださった小田彩子さん。「専門知識もない、パソコンも苦手、名刺も持っていない」という小田さんは、どんなふうに活動を進めていったのでしょうか。小田さんの経験には、気候変動に取り組むためのヒントが詰まっています。

ゼロエミのホームページは私の活動にとっての「教科書」
「ゼロエミッションを実現する会」通称「ゼロエミ」は、CO2排出実質ゼロ=ゼロエミッションを目指す市民のコミュニティです。事務局は国際環境NGOグリーンピース・ジャパンにあります。メンバーは全国各地でそれぞれ活動を繰り広げています。特に、住んでいる地域の自治体への働きかけに力を入れており、それぞれが自分の住む地域から気候変動に取り組んでいこうとしているのです。
ただ小田さんは、仲間と何かをするより、ひとりで行動するのが好きなタイプ。すぐにゼロエミに加わりませんでしたが、活動を進めるためにゼロエミはなくてはならない存在でした。
まず最初に試みたのは、選挙の際に候補者に気候変動について質問すること。ゼロエミでは、2021年の衆議院議員選挙において、候補者に「気候変動対策に関するアンケート」を実施しました。2022年の参議院選挙では、「#選挙でとめる気候危機」というハッシュタグをつくるなど、選挙という、市民が政治に関われる貴重な機会を、気候変動対策へ活かそうとしていました。

そこで、「候補者と ”気候変動”について対話しませんか?」という呼びかけがホームページ上に掲載されていました。それが、小田さんが行動を起こすきっかけになったのです。
「候補者に声をかけてみようっていう提案をゼロエミのホームページで見たんですけど、そんな勇気のいることはできないと最初は思いました。でも、一歩踏み込んで声をかけてみようかなと思って試したら、できました。話もしてもらえたし、候補者の方は案外みんな普通の人だと気づいて。それが初めの感想でした」
最初は少し勇気が必要だったかもしれませんが、案ずるより産むがやすし。動いてみることで、小田さんの世界が少しずつ変わり始めます。
ゼロエミのホームページには、「議員の活動とは、議員としての調査活動や、知事や市長への要望、そして議会での質問です」とあります。議員が議会で質問すると、市長などをはじめとする行政はそれに答える必要が出てくるので、議員から気候変動について質問してもらうのが、議会で気候対策が取り上げられるための有効な方法のひとつです。
そこで小田さんは、次に市会議員に気候変動について一般質問をしてもらおうと思い立ちます。
ゼロエミのホームページには、「議会での質問を提案してみよう」というページがあり、たくさんいる議員の中からどんな議員に、どんなふうに質問を依頼すればいいのかが詳しく説明されています。小田さんのように、特に知識がなくても、たとえひとりでも、自分の住んでいる自治体の議会で気候変動対策について話し合われるようにすることができるのです。
次はどんな陳情をしようかなとワクワクしました
気候変動対策に関する一般質問を引き出すことができた後、小田さんの意識はさらに変わっていきました。
「自分の中では生活と政治がすごく遠いものだったけれど、知れば知るほど、一緒のものなんだなって思ったんです。だから、もっと関わっていかないといけないんだということに気づかされました」
そんな気づきとともに、小田さんの強力な助けとなったのは、ゼロエミが運営するSlackで行われている「よろず相談」。それぞれの地域で活動していくなかで、当然わからないことがあるでしょう。いえ、わからないことばかりかもしれません。でも、活動に関することは何でも相談できるのが「よろず相談」なのです。

「よろず相談」は、ただ見たり聞いたりしているだけで、たくさんの知識を得ることができるうえ、自分と同じように活動しようか迷っている人や、実際に活動している人が各地にいることが実感できます。自分と似たような状況の人がいるという事実は、小田さんをさらに勇気づけたのかもしれません。
一般質問の次に何をするか考えた小田さんは、陳情を出すことに決めました。陳情とは、「住民の声を政治に届けたり、反映させたりするしくみです。議会に書面で提出し、議会が審議します」(ゼロエミのホームページより)。ここでも小田さんは、ゼロエミのホームページを参考にします。港区のゼロエミメンバーの活動が詳しく紹介されていたからです。
港区のメンバーは、2020年11月に「ゼロカーボンシティ宣言に関する」請願書を提出したのをはじめ、活発な活動をしていました。(陳情と請願は、提出にあたって紹介議員が必要かどうかといった違いのほか、各自治体によって提出方法なども異なる点があります)
請願書の内容は、ゼロエミのホームページに掲載されているので、小田さんはそれを参考に陳情書を作成、2024年に、なんと3回(!)も陳情を提出しました。

一度目は3月に「海老名市内で再生可能エネルギー電力への切り替えを求める」陳情書、次は6月に「海老名市内の小中学校に太陽光発電と蓄電池の促進を求める」陳情書、そして三度目が9月に「海老名市内の公共施設において再生可能エネルギーへの切り替えを求める」陳情書の三つです。
およそ半年という短い期間に三つも陳情書を提出するなんていうことは、どれだけ大変だったんだろうと思ってしまうかもしれません。でも、小田さんは違いました。
「大変っていうより、楽しかったです。一回目の陳情は賛成してもらえなかったんですけど、別にメゲなかったし、次はどうしようってワクワクしてました。それまでは、陳情なんて怖い怖いと思ってたんですけど、一歩踏み込んでみると楽しかったんですよね」
小田さんにとって楽しかった理由は、ふたつあります。ひとつは、一人だったからこそ身軽にどんどん動けたこと。そしてもうひとつは、気候変動について自分が感じていることをたくさん話せたこと。議員に会いに行けば、自分が気候変動について感じていること、その思いのたけを話すことができます(気候変動についてお伝えしたいです、と事前に依頼しているので当然!)。
気候変動について話したいことがある人なら、きっと楽しんで活動できるのでは? 小田さんの楽しそうな表情を見ていると、難しそうだし大変そうといったイメージは、先入観にすぎないと思わされました。
誰かが解決してくれるのを待つのではなく、自分でやる
その後、小田さんは仲間と一緒に活動していくことを決めました。
「皆さんの行動力がすごいんですよね。自分だけでは小さいことしかできなかったけれど、もっとスピード感をもって大きなことができるんじゃないかなと思います。本当に私は専門知識がないんで、皆さんと話していても勉強になることがいっぱいあるんです」
小田さんは、もともとゴミ問題が気になり、ゼロウエイストのお店を利用したりしてはいましたが、政治への関心は特になく、「投票には行っていました」という程度。気候変動に関しても、家族で出かけた環境アクティビストの講演会で、ようやく危機感を感じたと言います。

「中学生のときに温暖化について学びましたが、大人になる頃には解決しているだろうと思っていました。でも、全然解決しないまま、夏はどんどん暑くなるし、気候変動について友達に話してみても、“えらいね”って言われてそこで終わってしまうんです。誰かが解決してくれるだろうと思っていたけど、誰もやらないなら、自分でやるしかないと思ったんです」
そこから、小田さんの活動は始まりました。気候変動についての専門知識も、市民運動の経験もなく、パソコンが苦手で陳情書の作成ではパートナーに手伝ってもらったこともあったと照れながら話す小田さんは、決して特別な人ではないでしょう。ただただ気候変動をどうにかしたくて、一歩踏み込んだ、その勇気がいくつもの変化を生んだのです。
気候変動に関心があるなら、誰にでもできることが実はたくさんあるはず。自分が取り組めることをそれぞれが模索しながら、ゼロエミッションが実現する社会を目指して一歩ずつ前に進んでいるゼロエミの仲間が、次はあなたの参加を待っています。
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