国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区、以下グリーンピース)は、本日、調査報告書『リサイクルという神話2.0ーー輸入プラスチックごみがマレーシアに残す有害な影響』(日本語版)を発表しました(注)。

2018年の中国による禁輸措置後、東南アジアを中心とした国々に日本を含む先進国の廃プラスチックが輸出されるようになりました。グリーンピースは2018年、輸入された廃プラが適切にリサイクルがされていない状況を調査し世界中に伝えていました。グリーンピースはその追跡調査を2019年7-8月に行い、輸入された廃プラが現地の環境と人の健康に与える有害な影響を調べ、本報告書にまとめました。調査はグリーンピース・マレーシア事務所が主導し、欧州、アジアの国々の事務所も参加しました。4つのごみ捨て場内とその周辺計10カ所で採取した水と土壌のサンプルを、英国のエクセター大学内にあるグリーンピース研究所の科学者が検査し、サンプルの化学分析を行いました。

調査結果のまとめ

  • 水質汚染:
    • 調査対象となった複数のごみ捨て場に隣接する地域やその下流にある地域の表層水が、固形廃棄物や化学物質で汚染されていることが明らかになった。
  • 土壌汚染:
    • 細片化されたプラスチックを含む表土は、高濃度の重金属で汚染されている。
    • 焼却後のプラスチック残留物には、複数の汚染物質が含まれていることが確認された。
  • 有害化学物質と環境・健康への影響
    • 採取されたサンプルから、カドミウムや鉛といった重金属、多環芳香族炭化水素(PAHs)、一部の揮発性有機化合物(VOC)、難燃剤(FR)といった有害化学物質が検出された。
    • これらのほとんどが非常に長期にわたり土壌に残存しうる物質である。検出された高濃度の重金属は、近隣の水源に二次汚染をもたらす恐れもある。そうした汚染は、動植物、微生物や人間に対して有害な影響をもたらす可能性がある。
    • こうした物質には、子どもの精神発達の阻害につながる病気や、内分泌の撹乱、生殖障害、臓器障害(肝臓や腎臓)、循環器疾患や呼吸器疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病を引き起こす可能性を持つものがあり、さまざまながんを誘発する可能性もあることが諸研究により確認されている。


ヘン・キア: グリーンピース•マレーシア プラスチック問題担当
「日本などの先進国からリサイクルの名目でやってきた廃プラが、私たちの国の自然環境や地元住民の健康に深刻な影響を与えています。実際、ごみ捨て場周辺の住民たちは、体調不良を訴えたり、廃プラに由来する大気汚染に抗議の声をあげています。特定の国を世界のごみ捨て場とするべきではないし、自国のプラスチック問題の責任を他国に押し付けてはいけません。プラスチックの氾濫を抑制するための世界的な合意が必要です。日本からマレーシアへ来る廃プラは、米国に次ぎ2番目の量です。影響力の大きい日本に協力を求めます」


グリーンピース・ジャパン プラスチック問題担当 大舘弘昌
「こうした廃プラに由来する環境や人の健康への影響は、マレーシアに限ったことではなく、廃プラを引き受けている多くの国々で報告されています。これまで世界中で生産されたプラスチックのリサイクル率はわずか9%で、2050年には4倍にまで増えるといわれるプラスチック容器包装にリサイクルで対応することは不可能です。廃プラを国から国へ移動させるのではなく、まずは総量を減らすことが必要不可欠で、世界的にリデュース(削減)・リユース(再利用)の仕組みづくりが急がれます。廃プラ輸出量世界トップ3に入る日本の政府や企業が、責任ある対策を早急にとることが重要です」

(注)
報告書『リサイクルという神話2.0ーー輸入プラスチックごみがマレーシアに残す有害な影響』(日本語版)
英語版は2020年5月に発行

(参考)
『リサイクルという神話2.0(日本語版)』発表用資料
The Recycling Myth(英語版のみ、2018年11月発行)
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