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淹れたてのコーヒーや、すぐに食べられるものがほんの数分で手に入る、コンビニやカフェ。とても便利ではあるものの、その多くが使い捨て容器包装に包まれて提供されています。こういった使い捨て文化からは一体どれくらいのごみが出ているのでしょうか。

グリーンピースではこのたび、カフェとコンビニという二つの重要な業界に焦点を当て、コーヒーやおにぎりなどの人気商品による使い捨てごみの量を明らかにしました。日本はどれだけ使い捨て容器包装による汚染に影響を与えており、環境負荷を減らすにはいま何をすべきなのでしょうか。調査の結果とあわせて解説します。

日本は使い捨て容器包装の消費量において、世界で何番目?

日本は1人当たりの使い捨てプラ容器包装の消費量が、世界で2番目に多い国*となっています。それでいて、日本のカフェ・コンビニ業界では使い捨て容器包装の消費量が公表されていません。

グリーンピース・ジャパンでは、2022年7月に、9社のカフェチェーンでの使い捨てカップの消費量についての調査結果を「日本のカフェ業界における使い捨てカップの現状」の報告書にまとめました。その後、どのような変化があったのでしょうか。

今回は、前回の調査で消費量が一番多かった大手カフェ3社をピックアップし、使い捨てカップの消費量について調査内容を更新しました。さらに今回は大手コンビニ3社にまで範囲を広げ、使い捨てカップにくわえ、おにぎりなどの使い捨て容器包装の消費量も調べました。

早速調査の結果を見ていきましょう。

大手カフェ3社が、1年間で消費している使い捨てカップの数は?

今回グリーンピースでは、2022年に発表した調査で最も使い捨てカップの消費量が多かったスターバックス、タリーズ、プロントの3社に焦点を当てて、調査を実施。その結果、2023年には3社あわせて、1年間に4億7,480万もの使い捨てカップが消費されていることが明らかになりました。

これは、前回の調査で3社が消費した使い捨てカップの数よりも1億3,000万個多い数です。

もっといえば、前回の調査で9つのカフェチェーンが出した使い捨てカップの総数(3億6,950万個)よりも多い数です。

コロナ禍で、飲食業界が大きな打撃を受けていた前回の調査時と比べて年間の取引回数自体が増加した影響もあるものの、ショッキングな結果です。

なかでも消費量が目立つのは、スターバックス。その量は、2022年に発表した調査で3社が消費した使い捨てカップの総数よりも多い結果に……。スターバックスの取引回数はタリーズと比べると約2倍、プロントと比べると約17倍で、使い捨てカップの総数もそれに比例してタリーズの約3倍、プロントの約16倍の数になっています。

店内利用でも使い捨てカップが使われている

どの店舗でも目立つのは、店内利用でも使い捨てカップが使われている点です。使い捨てカップの内訳をテイクアウトとイートインで見比べてみましょう。

使い捨てカップの数(紙・プラ)【単位:個】
テイクアウトイートイン
スターバックス2億6,350万7,830万
タリーズ3,870万 7,260万
プロント(※)280万1,840万
合計(※1)3億500万1億6,940万
※タリーズとプロントでは、イートイン消費の割合がテイクアウトよりも高いことから、使い捨てカップの利用もイートインのほうが多くなっている(タリーズ:68%、プロント:92%)。
※1:数値は切り捨てで端数処理を行ったため、合計は必ずしも正確ではない。

店内では具体的にどれくらいの割合で使い捨てカップが利用されているのでしょうか。参考までに2023年の利用率を見てみましょう。

イートインにおける使い捨てカップの利用率(2023年)
スターバックス59%
タリーズ88%
プロント

上記の利用率は、グリーンピース・ジャパンが一般市民の協力を得て、2023年に全国で実施した調査から導き出したもの*。どちらの店舗でも、半分以上の飲み物が使い捨てカップで提供されており、タリーズに関しては使い捨てカップでの提供がほとんどです。

2023年の調査にふくまれなかったプロントについては、2024年に10店舗を訪問し調査をしました。プロントではホット飲料がマグカップで提供されていることもあり、使い捨てカップの利用率は約58%で3社のうち最も低い結果でした。

しかし、前回の調査*ではドトールや上島珈琲店をはじめ、店内で使い捨てカップを利用していないカフェもあることがわかっています。その点を踏まえると上記3社の5〜9割という利用率は非常に高く、使い捨てカップの削減において、対策が不十分に見受けられます。

この3社が店内での飲み物をすべてマグやグラスなどに変えれば、1年で1億6,940万(※)もの使い捨てカップの削減が見込めます。

※2023年のイートインにおける使い捨てカップの総数に基づく。

大手コンビニ3社が、1年間で消費している使い捨てカップの数は?

グリーンピースでの調査の結果、セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンの大手コンビニ3社では1年で19億7,860万個もの使い捨てカップが消費されていることがわかりました。これは、大手カフェ3社が年間で消費した数の約4倍です。

使い捨てカップの消費量は全店売上高が高い順に多く、セブン-イレブンが9億1,490万個、ファミリーマートが7億3,470万個ローソンが3億2,890万個という結果でした。

コンビニの人気商品のうち、使い捨て容器包装が最も発生しているものは?

コンビニで人気の高い「おにぎり」「お弁当」「お寿司」のうち、どのチェーンでも最も多くの使い捨て容器包装を消費していたのは、「おにぎり」でした。

3社あわせると、1年で消費されたおにぎりの数は約24億個。この数のおにぎりを隣り合わせに並べると、日本のほぼ反対側にあるブラジルまで約32往復もできてしまいます……!

販売総数(単位:個)
おにぎりお弁当お寿司
セブンイレブン16億4,380万4億9,100万2億4,810万
ファミリーマート11億6,760万1億5,760万2億2,300万
ローソン6億5,080万1億6,320万4,020万

ただ、次の表にもあるように、使い捨て容器包装の重さで見ると、トップはお弁当。外側の容器に個別のしきり、調味料のパックや飾り用の葉っぱなど、おにぎりやお寿司と比べると使われる容器包装の要素が多く、その総重量はおにぎりの約2倍、お寿司の約8倍にもおよんでいました。

使い捨て容器包装の総重量(単位:トン)
おにぎりお弁当お寿司
セブンイレブン3,503.816,621.3854.8
ファミリーマート4,866.22,522.11,448.2
ローソン2,612.33,161.5233.2
3社合計10,982.322,304.92536.2

また、「おにぎり」に使われる使い捨ての容器包装は非常に軽いですが、先に紹介した大手カフェ3社が2023年に出した使い捨てカップ(プラスチック・紙)の総重量(4726.9トン)と比べると約2倍の重さになることもわかりました。

カフェやコンビニが環境負荷を減らすにはどうするべき?

カフェやコンビニがすぐにでもとるべき対策は、リデュース(減らすこと)はもちろん、リユース(繰り返し使うこと)のしくみをより意欲的に導入していくことです。

世界では、4億6,000万トンものプラスチック*が年間で生産されていると推定されています。その解決策としてリサイクルがよく挙げられますが、実際にリサイクルされているのは世界全体で見ても、たったの9%*。さらにリサイクルは2〜3回ほどしかできないことが多く、最終的には廃棄処分をせざるを得ないため、全体の量を根本的に減らすための解決策にはなりません。そのため、プラスチックの全体の量を減らすにはリユースやリデュースに重点を置くシステムが必要なのです。

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世界ではすでにリユースカップのレンタルサービスが展開されています。たとえばドイツ*やシンガポール*では、カフェなどで飲み物をテイクアウトする際に、リユースカップで提供してもらえるサービスがあります。使い終わったカップは、指定された場所であればどこでも返却できる、というものです。日本でも「Re&Go」をはじめ、リユースカップのレンタルサービスはすでに存在しています(※)。

※グリーンピースが作成した地図「グッバイ・ウェイスト」からも、リユースカップなどが利用できる店舗を検索できます。

リユースへの転換は決して未知の領域ではなく、むしろすでにあるサービスを拡大し、導入店舗をどんどん増やしていかなければいけない局面にあります。そのためにはコンビニで利用したリユースカップをカフェで返却できるなど二つの業界の連携がのぞましく、多くの利用者を持つ場所からこういった取り組みをはじめることで、消費者の「当たり前」をいっきにアップデートできることも期待できます。

リユースへの移行でCO2や化石燃料の消費量はどれくらい減る?

調査の結果、1日のテイクアウト飲料の20%をリユースカップで提供するだけでも、1カップあたりにかかる環境負荷を半分近く(水の使用量に関しては3割以上)減らせることがわかりました。

  • CO2換算排出量:45%削減!
  • 水の使用量:32%削減!
  • 化石燃料の消費量:48%削減!

また、2023年にカフェとコンビニで消費されたすべての使い捨てカップ(22億個以上)を100%リユースに切り替えたと仮定すると、以下のようにこれだけの水、CO2、化石燃料の消費を節約できることもわかりました。

  • オリンピックサイズのプール124杯分の水(=46万5,000平方メートルの水)
  • 400万本の成木が1年間に吸収するCO2の量(=8,800万キロのCO2換算排出量)
  • 石油27万1,000バレル以上の化石燃料消費量(=石油換算3,700万キロの化石燃料消費量)

使い捨てカップをすべてリユースカップに置き換えると環境負荷が格段と減るのはもちろん、リユースカップに段階的に切り替えていく過程でも環境負荷を大きく減らせることが今回の調査より明らかになりました。

リユースに向けたグリーンピースの取り組み

実はいま、リユース社会が世界的に広がる可能性を持った条約が、国連で採択されようとしています。プラスチック汚染を世界的に解決するための「国際プラスチック条約」です。

プラスチック生産量を大幅に削減し、リユースを世界各国で広げていくためには、野心的な条約にする必要があります。

そこでグリーンピースでは強力な条約が採択されるよう、条約の政府間会合などにオブザーバーとして参加し、リユース社会への移行、そして2040年までにプラ生産量が75%削減されることを求めてきました。また、プラのない未来を求める人々の声を世界のリーダーに届けるべく、世界中で署名活動をしてきました。

私たちが条約のためにしてきたことや条約に求めてきたこと、また条約の内容について詳しくは、以下からもご確認いただけます。

グリーンピースに寄付をする

今回の独自調査は、個人のみなさまからのご寄付のおかげで実施できた活動です。グリーンピースは、これまで企業や政府から資金援助を一切受けずに活動してきました。今後も活動を続けられるよう、ぜひお力をお貸しください。

今回の調査結果をまとめた報告書「変革を先導するー日本のコンビニエンスストアとカフェチェーンの企業責任およびリユースの解決策」の全文は、以下のページからアクセスできます。今回の調査結果をまとめた報告書「変革を先導するー日本のコンビニエンスストアとカフェチェーンの企業責任およびリユースの解決策」の日本語および英語での全文や担当キャンペーナーのコメントは、以下のページからご覧いただけます。