深海に生きる不思議ないきものたち

鉱物資源を掘り起こしたい開発企業の標的となっている深海。広大な生物多様性の宝庫で科学者によって数多くの不思議な生きものたちが発見されました。

知っていますか? 人間が、海のことよりも火星や月の表面についての方が、はるかに多くのことを知っているということ。海のいきもののうち約91%がまだ分類されておらず、海洋の80%以上は調査も地図化もされていないのです。深海底には希少金属や鉱物資源が豊富に眠っています。そのため、近年、一部の開発企業が研究と称して深海採掘を行い、海底金属資源を得るために海底を破壊して利益を得ようとしています。

水深数千メートルの海の底には、まだ発見すらされていない種がたくさん住んでいます。人の住む世界とはあまりに違う環境のおかげで、深海は人間の活動によって荒らされることなく保たれてきました。現在も驚くべき新種が次々と発見されています。



パンケーキバットフィッシュ(Pancake Batfish)

2018年7月、メキシコ湾、水深200mから表層にかけてトロールされたパンケーキバットフィッシュ(Halieutichthys aculeatus)の幼魚。

2018年7月、メキシコ湾、水深200メートルから表層にかけての海中で発見されたパンケーキバットフィッシュ(Halieutichthys aculeatus)の幼魚。成魚は海底で生活し、水深800メートル以深で発見されている。成魚の体はパンケーキのように扁平で、底を歩くために進化したヒレを持っている。幼魚と稚魚は水底に生息する。

ホウズキイカ(Deep Sea Squid)

飼育されている深海イカ(Liocranchia reinhardtii)。体長150ミリほどに成長するこのイカは、世界中の熱帯・亜熱帯海域の水深1000メートルまで生息する。

飼育されている深海イカ(Liocranchia reinhardtii)。体長150ミリほどに成長するこのイカは、世界中の熱帯・亜熱帯海域の水深1000メートルまで生息する。

クロカムリクラゲ(Helmet Jellyfish)

ノルウェーのトロンヘイムスフィヨルドに生息するヘルメットクラゲ(Periphylla periphylla)の幼生の画像。

鮮やかな赤色の胃にあたる器官が、透明な体からはっきりと見える。この特別な赤色は、食べたいきものが胃のなかで発光して天敵に見つかってしまうことを防ぐための保護色だと考えられている。クロカムリクラゲも自ら発光することができるので、私たちは深い海の中で彼らを見つけることができる。クロカムリクラゲには目や脳はなく、光の変化を感知する単純なセンサーに頼っている。

深海ナマコ(Deepsea Sea Cucumber)

2010年6月、大西洋中部の海嶺、2500mに生息する深海ナマコ(Amperima sp)。

深海ナマコの体はほとんどが水でできており、その中にコラーゲンが混じっている。このゼラチン体は、作るにも維持するにもほとんどエネルギーを必要としないため、食べ物が不足しがちな深海に住むいきものにとって理想的なのだ。

深海エビ(Deep-Water Decapod)

深海に生息するセルゲステス属の深海エビの幼生。

深海に生息するセルゲステス属の深海エビの幼生。触手が密生しているため水中を自由に浮遊することができる。セルゲステス属の幼生の成体は下半身に自照機能があり、弱い光で自分の影を消したり、足跡を隠して捕食者を避けたりすることができる。彼らの特殊なところは、海面から差し込む光によって自照の強さが調整されることだ。

シダアンコウ(Whipnose angler)

カーボベルデ近海の大西洋で捕獲されたシダアンコウ(Gigantactis vanhoeffeni)の画像。

アンコウ科の巨大なトゲウオ種のシダアンコウ。釣り竿状の突起は背ビレが特殊進化したもの。にイリシウムと呼ばれる背ビレの第一フィラメントが肥大し、その先端に生物発光する細胞を持つ。絹糸のような細長い突起の先端を自ら光らせることができる。

クリオネ(Sea Angel)

白海のカンダラクシャ湾で狩りをするシーエンジェル(Clione limacina)。クリオネ・リマシーナは北極海や北大西洋の寒流域、水深500メートルまでの深海に生息している。

小さな羽で羽ばたくクリオネ。クリオネは泳ぐのがとても上手だ。羽ばたき運動で速く泳ぎ、素早く移動することができる。

シーバタフライ(Sea Butterfly)

カーボベルデ近海の大西洋に生息する、捕獲された浮遊性海産巻貝、シーバタフライ(Peraclis bispinosa)。

シーバタフライ(Thecosomata)は通常クリオネより小さく、殻を持っている。シーバタフライの殻は、海水の酸性度の変化に極めて弱い。

オニキンメ(Common Fangtooth)

ベルデ岬に近い大西洋の深海魚、オニキンメ(Anoplogaster cornuta)の捕獲画像。

鋭い歯を持つ魚としても知られるオニキンメは、自分よりも大きな獲物を捕らえるために長く鋭い歯を持ち、あまりに歯が長いため、脳の左右の溝に収納することでしか口を閉じられない。

深海ウニ(Deep sea Sea Urchin)

ブラジル、サン・ピエトロ・サン・パウロ群島、大西洋赤道域中央部に生息する飼育下の深海ウニ(Coelopleurus sp.)

大西洋のサン・ピエトロ島とサンパウロ島(ブラジル北東部)に生息する深海ウニ(Coelopleurus)は、通常赤と白の鮮やかな色模様が特徴で、さらに珍しいことに骨格も鮮やかな色をしており、乾燥後、化石化した後でも元の色を保っている。

世界が力をあわせ、海を守るための一歩を踏み出した

海は、世界最後の真の野生空間のひとつです。そこには魅力的ないきものたちが暮らしています。科学は、いまだ深海に生息する多種多様ないきものたちのうち、ほんのわずかを見つけたに過ぎません。

開発企業が海底を掘り起こそうとし、世界の指導者たちが公海をどう守るかについて揉め続けています。グリーンピースはこのかけがえのない命を守るため、活動を続けます。新たな研究で、地球上で、最も未知な環境である深海について、どれだけのことがまだ解明されていないのか、そしてどれほど守るべき不思議ないきものたちが生きているのか、ほんの少し、ご紹介しました。