第15回生物多様性条約締約国会議(COP15)が閉幕しました。「昆明ーモントリオール協定」と呼ばれる最終合意は、恐竜を絶滅させた6500万年前の大量絶滅と同規模と言われる、人類による生物大量絶滅を阻止するために、十分な合意とは言えません。COP15で期待されていた3つのポイントについて、成果を振り返ります。
生物多様性
アルゼンチンのカリレグア国立公園のオオハシ(2011年12月)

COP15に期待された3つの成果

2022年12月19日、国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)が、カナダ・モントリオールで開催され、「昆明ーモントリオール協定」と呼ばれる最終合意をもって閉幕しました。

生物多様性条約は、気候変動条約と並び、私たちが安全に暮らし続けられる地球環境を守るための国際的な取り組みを決める、重要な枠組みです。

今回のCOP15では、グリーンピースはこの3つを求めて各国政府に働きかけ、交渉の行方を見守ってきました。

  1. 2030年までに陸と海洋の少なくとも30%を保護すること
  2. 先住民族を生態系保護の意思決定者として、権利を認めること
  3. 生態系を守り、回復させる資金調達メカニズムを確立すること

期待されたこの3つのポイントについて、実際どのような合意がなされたのか評価していきます。

2030年までに陸と海洋の少なくとも30%を保護すること = △

生物多様性
タイ・サトゥーンのアンダマン海のサンゴ礁(2017年7月)

2030年までに陸と海の少なくとも30%を保護するという目標が、最終合意の「昆明ーモントリオール協定」に明記されました。

しかし、保護区における破壊的な経済活動をはっきりと禁止するものにはなりませんでした。明確なルールがなければ、30%を保護するという目標があっても、文書の上で保護されているだけで、実際には保護されない恐れがあります。

先住民族を生態系保護の意思決定者として、権利を認めること = ◉

生物多様性を守る先住民族コミュニティ
COP15の会場で、先住民族の人々が集まり、先住民族の土地と権利を保証ことが生物多様性を守ることにつながると訴えた(2022年12月)

「昆明ーモントリオール協定」では、先住民族の活動・知識・慣習が、生物多様性保護のための最も効果的な手段として認められました。生物多様性を守る行動を取っていくにあたって、先住民主導の環境保全モデルを標準としていくということです。

実際、地球上の生物多様性の80%は先住民族の土地にあり*、先住民族の営みは生物多様性を守ることに長けていることが各地で報告されています。

合意内容を実行に移すには、先住民の土地を尊重し、先住民の権利を保証し、自由意志に基づく事前合意、そして意思決定へ効果的に参加する仕組みを確実にする必要があります。

生態系を守り、回復させる資金調達メカニズムを確立すること = ✖︎

2025年まで年間200億ドル、2030年まで年間300億ドルの資金を調達することが合意されましたが、生物多様性保護のために必要な資金は7000億ドルです。足りない資金をどう拠出するか不明なままです。

また、金額だけでなく、資金提供のスピードも問われます。2023年に基金を設立すれば、より早く途上国に資金を行き渡らせることができます。

生物多様性
パプアニューギニアのBairaman川河口は、世界で最も生物多様性が豊かといわれる場所に一つ(2022年2月)

リスクの高い「埋め合わせ」

また、注意が必要なのは、自然を基盤とした解決策(NbS)や、破壊した自然の代わりに別の場所の環境保全活動をすること(オフセット)といった、経済活動に都合の良い「環境保護」が協議に繰り返し登場し、文書に含まれていることです。

生物多様性から利益を得ようとする産業が自然を搾取し続けることを許すことになる可能性があり、グリーンウォッシュとなって結果的に生物多様性を守ることができないリスクがあります。

生物多様性
インドネシア・南スマトラの湿地帯(2012年2月)

生物多様性保全のための次の一手は?

私たちの命を支えてくれる自然環境を守るために、課題が来年に積み残されました。

2023年には、基金を設立し、生物多様性保全のための資金を途上国と先住民族にスピーディーに提供すること、そして2月下旬から開催される国連海洋法条約の政府間会議で、2030年までに30%の海を保護区にする海洋保護条約を確実にすることが必要です。

2024年にはトルコで、COP16が開催され、各国政府はモントリオールで行われた作業を基に、迅速に行動する必要があります。

国際環境NGOグリーンピースは、この国際交渉を継続的に追いながら、各国政府へ提言を続け、国際的に生物多様性を守る仕組みが実現するように行動を続けていきます。