九州北部豪雨で浸水した佐賀県大町町。2019年8月。
九州北部豪雨で浸水した佐賀県大町町。2019年8月。

長雨や豪雨、台風の接近が心配な時期になりました。
近年、全国で大規模な土砂災害や水害が相次ぎ、甚大な被害が起こっています。被災してたいせつな家や生業を脅かされ、将来に不安を抱えている人もいます。人的被害も発生しています。
このような災害の増大・大規模化の原因のひとつが、気候変動による温暖化です。
この気候危機はこれからどうなるのか。メカニズムと記録を読み解いてみましょう。

▼この記事を読むとわかること

> 台風は増えていない
> 地球温暖化と台風や大雨のメカニズム
> 巨大化する台風の変化
> 気候危機をくいとめる
> グリーンピースのとりくみ

台風は増えていない

静岡県から北日本にかけて記録的な大雨で甚大な被害をもたらした令和元年東日本台風、20日間ほどもの長期にわたって千葉県内で停電を起こし、市民生活に深刻な影響を及ぼした令和元年房総半島台風、西日本を中心に記録的な強風に襲われた平成30年台風第21号。

最近、ひどい台風の被害が増えたと感じている人は多いのではないでしょうか。
浸水や土砂災害などで直接的に暮らしが脅かされるだけでなく、交通網や通信網、電力などのインフラが絶たれることによる複合的な被害も生活に影響を与えます。

1951年以降に発生した台風の数と、日本に接近した台風の数をグラフにしたもの
気象庁ウェブサイト*1より作成

この図は1951年以降に発生した台風の数と、日本に接近した台風の数をグラフにしたものです。
相対的にみて、台風の数そのものは増えてはいないことがわかります。

一方で、2021年に静岡県熱海市で土石流災害を起こした大雨や、九州から中部地方にかけて深刻な被害をもたらした令和2年7月豪雨、日本全国で大規模な土砂災害が発生した平成30年7月豪雨など、台風とは別の大規模な大雨が、毎年のように降るようになりました。

地球温暖化と台風や大雨のメカニズム

海水が大気や太陽光の熱で温められて蒸発し、多くの水蒸気を含んだ空気が膨張して上昇気流が発生します。

上空に運ばれることで冷やされた水蒸気が凝結し、雲になります。水蒸気は凝結する際に熱を解放し、その熱が大気の温度を上げ、雲の内部の上昇気流を強め、低気圧を発生させます。

低気圧が発達して、雲を形成している水滴や氷の粒が地上に落ちてくるのが、雨や雪です。

低気圧が風に吹かれて渦になり、より大規模な積乱雲を形成し暴風雨をもたらすのが台風ですが、雲が発達すれば台風にならなくても大雨になります。

気温が高くなればなるほど空気は水蒸気を含みやすくなるので、上昇気流も雲も大きく発達し、暴風雨も激しくなります。

これが、近年、台風が大規模になり、長雨や豪雨が発生しやすくなっている原因のひとつです。

水の循環

巨大化する台風の変化

気象学は非常に複雑で、台風や豪雨災害の規模や被害の大きさを、単純に比較することはできません。しかし2016年に発表された研究*によると、東アジアと東南アジアの台風が、1970年代後半から12〜15%勢力が激化していることがわかっています。*2

1951年と2022年に日本に接近した台風の軌道
気象庁ウェブサイト*1より作成

この図は1951年と2022年に日本に接近した台風の軌道を比較したものです。
71年の間に台風の発生位置が北に移り、進路が北西方向に変わっていることがわかります。

発生場所と軌道が変わることで、台風の強さは高緯度でピークに達し、より勢力を保ったまま上陸しやすくなります。
このことは気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書でも言及されています。*2

台風や暴風雨の強さや勢力がこれ以上大きくなったら、わたしたちの生活の安全はどうなるのでしょうか。
アジアでは1970〜2019年に、自然災害で100万人近くが亡くなり、2兆ドルの経済的損害が報告されています。災害のほぼ半数は洪水で、3分の1以上は暴風雨によるものでした。

令和2年7月豪雨の被害の模様。熊本県人吉市。
令和2年7月豪雨の被害の模様。熊本県人吉市。

気候危機をくいとめる

IPCCは、2030年までに世界の温室効果ガスの排出量を半減させることができれば、いま以上の破局的な気候危機は回避できるかもしれないとしています。

この記事を読んでくださっている皆さんはきっと、そのためにできることに、すでに取り組んでいるのではないでしょうか。

節電する。
再生可能エネルギーの電力会社を選ぶ。
自家用車よりも自転車や公共交通機関、飛行機よりも列車で移動する。
使い捨てを減らし、繰り返し使えるものやリフィルを積極的に利用する。

一人ひとりにできることはまだまだたくさんあります。

グリーンピースのとりくみ

トヨタ自動車の株主総会でのグリーンピースのアクション。2022年6月。
トヨタ自動車の株主総会でのグリーンピースのアクション。2022年6月。

グリーンピースは、気候変動により大きな影響力をもつ国際社会や政府、大企業に、実効的な対策を提案し、改善を求めてはたらきかけを続けています。

世界のエネルギー起源の二酸化炭素排出量の23%を輸送機関が占めており、うち45%が乗用車です。グリーンピースは大手自動車メーカーに対し、サプライチェーン全体で温室効果ガスを出さない、持続可能なビジネスモデルへの転換を求めています。

最も多く二酸化炭素を排出する石炭火力発電を減らすため、世界の石炭火力事業に出資している日本の三大メガバンクに投融資の中止を求め、新規の石炭火力事業には投融資しないという合意を勝ち取りました。

欧州委員会がガス(一般に天然ガスと呼ばれる化石燃料ガス)や原発を「グリーンな投資先」に分類した決定を覆すため、グリーンピースは欧州委員会を相手取って訴訟を起こしています。

グリーンピースはこれからも、あらゆる命の未来をまもるため、気候危機をくいとめるための行動を続けていきます。

このような活動は、誰もが安心して暮らせる未来を、命をまもりたいと願う人、一人ひとりの協力がなければなし得ません。

どうかこれからも、グリーンピースの活動を応援してください。

グリーンピースの環境のための活動を応援する

続けて読む

▶︎IPCCとは? 2023年最新報告書を解説

▶︎大型台風の割合が増えている?気候変動と台風について(*2)

▶︎[解説] IPCCが解き明かす気候変動で台風が激化するメカニズム

*1 : 気象庁