国際環境NGOグリーンピース・東アジアは10月28日、アップル、グーグル、マイクロソフトなど世界の大手消費者向け電子機器メーカー10社とその東アジアのサプライヤー14社による温室効果ガス排出削減の取り組みについて、北米の環境NGOスタンドアースと共同で調査・評価した報告書サプライ・チェンジー大手消費者向け電子機器メーカーとサプライヤー企業の気候変動対策目標と再生可能エネルギー取組状況の分析を発表しました。これらの企業の2021年の電力消費量は、計17万GWhで、アルゼンチンの年間電力消費量以上にのぼります。

本調査では、企業の公開情報を元に、気候変動対策の「目標設定」「取組状況」「情報開示」「アドボカシー(政策提言等)」の4つの指標をもとに評価を行い(注)、日本企業は、消費者向け電子機器メーカーではソニー、サプライヤーではキオクシア、シャープ、ジャパンディスプレイの4社を対象としました。ソニーは2040年にサプライチェーン全体のカーボンニュートラルを目標としているものの、サプライヤーに対する再エネ目標を設定しておらず、自社事業に対する再エネ調達率は14.6%とメーカー10社中2番目に低い数値となりました。また、サプライヤー14社の再エネ率は全体的に低く、なかでも日系サプライヤーの再エネ調達率は群を抜いて低いことが分かりました。

<主なポイント>

  • 電子機器メーカー10社のうち7社が、2030年までに自社事業全体で再エネ100%達成を宣言している一方、サプライヤーで再エネ100%の目標を掲げた企業は6社で、メーカーとサプライヤーの再エネ目標や実際の取組状況に乖離がある。
  • 電子機器メーカー10社のうち、アップルやソニーを含む6社が、サプライチェーンを含めた排出量削減目標を設定している。ソニーは2040年にサプライチェーン全体のカーボンニュートラルを目標としているが、サプライヤーに対する再エネ目標を設定していない
  • すでに自社事業の再エネ100%化を達成している企業がある一方、ソニーの自社事業に対する再エネ調達率は14.6%と10社中2番目に低かった。また、全般的に電子機器メーカーによるサプライチェーンの再エネ化の取り組みは自社事業の再エネ化に比べて遅れている。
  • サプライヤーでカーボンニュートラルを宣言したのは14社中8社のみだった。ただ、その達成時期は2040〜2050年と遅く、100%再エネを宣言したのはキオクシアを含む6社のみだった。ジャパンディスプレイは、カーボンニュートラルも再エネ目標も設定していない5社のうちの1社だった。
  • サプライヤーの再エネ率は全体的に低く、中央値は僅か5%だった。なかでも日系サプライヤーの再エネ調達率は群を抜いて低く、1%未満だった。特にキオクシアは2040年までの100%再エネ化を目標としているものの、現時点での再エネ率は0.003%と日系企業のなかで最も低かった。

<報告書リンク>

グリーンピース・ジャパン プログラム部長、高田久代

「立地場所での再エネ電源へのアクセス難易は、企業の国際競争力の優劣に影響度を増してくるでしょう。日本企業の再エネ調達率が目立って低いことは、再エネ100%を目指すグローバルサプライチェーンから取り残されるリスクとなります。日本企業が積み上げてきた経験や技術力がもつ優位性の足枷とならぬよう、大量の電力を消費する情報通信産業は、積極的な再エネ調達と排出削減を進めるとともに、自ら政策立案者に積極的に働きかけ、持続可能な再エネ利用への転換のための政策を推し進める必要があります」

グリーンピース東アジア 気候変動・エネルギー担当、シュエイン・ウー

「マイクロソフトやグーグルのようなハイテク企業は、自社事業のグリーン化を進めていますが、アジアにおけるサプライチェーンは極めて汚染度が高いままです。携帯電話やコンピュータの部品を製造するサプライヤーは、主に石炭やその他の化石燃料由来の電力を使用しています。情報機器メーカーが気候変動対策について多くを語る一方、実際にはサプライチェーンの二酸化炭素排出量は増え続けており、サプライヤーが再エネ移行するためのインセンティブとサポートを提供する必要があります」

(注)消費者向け電子機器メーカーの評価時には、自社事業に対する目標設定や取組状況だけではなく、サプライヤーの脱炭素化も含めた目標や取組の有無、内容を評価している。

以上