国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都港区)は9月4日、東京都・神奈川県・埼玉県・三重県の小学校と高校計4校で、教室の温度を約3週間にわたって継続的に測定した調査結果を発表しました。調査の結果、断熱がされていない学校では、教室に冷房が設置されているにも関わらず、文部科学省が推奨する28度以下の室温を、調査期間の半分以上の時間維持できておらず、児童、生徒の学習環境に深刻な影響を与える恐れがあることがわかりました。一方で、断熱加工が施されている教室でも、断熱材の厚さが十分ではなく、快適な温度を維持するには不十分であることが明らかになりました。

各校の活動時間内における教室の温度範囲とその割合
各校の活動時間内における教室の温度範囲とその割合

報告書『国内4都県における学校教室の夏期温熱環境調査』全文はこちら

<調査方法>

期間:2024年7月1日(月)〜7月19日(金) ※サーモグラフィーの撮影は7月25日

対象:東京都練馬区、神奈川県横浜市、三重県伊賀市の小学校3校と、埼玉県さいたま市の高校1校の計4校 

方法:データロガー温度計を、各学校の校舎最上階の1教室内に2台、屋外に1台設置 ※東京都の小学校ではサーモグラフィーカメラでの撮影も実施

<主な調査結果>

  • 調査期間中に教室内温度が文部科学省の「学校環境衛生基準」で推奨される28度を超えた割合は、東京都では56.1%、神奈川県では53.7%、埼玉県では73.1%、三重県では64.6%となり、4校全ての教室で、28度以下の基準を満たしていない時間が、調査時間の半分以上に達することがわかった。
  • 4校全てで最も高い室内温度が観測された7月8日、東京都、神奈川県、三重県のピーク温度は週明けの早朝、埼玉県のピークは正午ごろで、いずれも午前7時ごろからエアコンを稼働させていたにも関わらず、学校の活動時間内において室内温度が基準の28度を下回ることは一日を通して一度もなかった。特に東京都と埼玉県の学校では30度、神奈川県の学校では32度をそれぞれ下回ることはなかった。
  • サーモグラフィーを撮影した東京都の小学校の天井には厚さ25ミリほどの断熱材が施されているが、その厚さが十分ではなく、快適な温度を維持するには不十分であることが画像から判明した。

グリーンピース・ジャパン 気候変動・エネルギー担当、鈴木かずえ

「調査の結果、夏休み前の時点で、すでに教室の温度が文部科学省の推奨する『学校環境衛生基準』の28度を超える日が続いていたことがわかりました。気候変動に責任のない子どもの健康や学習環境が、気候変動の影響にさらされています。年々猛暑日は増加しており、今年もまだまだ暑い日が続くことが予想されます。まずは、無断熱の校舎の最上階の天井に断熱材を施工したり、内窓を設置するなど、緊急の対策が必要です。さらに全国の小中高校を段階的にゼロエネルギー・脱炭素化するためには、断熱改修、エアコンのコンパクト化、太陽光発電の導入を日本政府及び地方自治体が積極的に行うことが求められます」