仮に世界の企業や各国政府が進めるリサイクルなどのプラスチック対策が上手くいったとしても、2040年には海へ流れるプラスチックごみは今の2倍以上になるという試算があります*。つまり、使い捨て製品そのものを大幅に減らさないと、リサイクルを向上させても、海洋汚染などプラスチックごみ問題解決への効果は限定的だということです。リデュース(削減)、リユース(再使用)を基本とした、「脱使い捨て」の社会に移行しなければいけません。

新型コロナウイルス感染症対策でプラスチックごみが増え、リユースへの衛生不安がある中、グリーンピースはアメリカのNGOと協力して、世界の保健衛生専門家130名の声を集め、「使い捨てプラスチックは本質的に安全とはいえず、リユース容器なども基本的な衛生管理を行うことで、感染症流行時でも安全に利用できること」を明らかにしました。人間の健康は健全な地球環境によるところが大きいため、地球環境も私たちの健康も一緒に守っていく必要があります。

先進国のプラスチックごみ輸出が途上国に与える影響

先進国で排出されるプラスチックごみが海を渡って、環境汚染や健康被害を引き起こしています。これまで大量のプラスチックごみが「リサイクル処理」の名目で海外に輸出され、適切な処理がされていると言われてきました。しかし、実際は多くの汚れたプラスチックが含まれており、そもそもリサイクルできず、大量のごみを処理しきれない輸入国で、環境汚染や健康被害の原因となっています。

世界中から多くのプラスチックごみ輸入を引き受けていた中国は、こうした状況を受けて2018年に輸入を禁止しました。その後日本をはじめとする先進国は、東南アジアなどの国々へ輸出先を変更しました。その結果、環境汚染と健康被害がそれらの国々でも広がっていることがグリーンピースの現地調査から明らかになりました。 輸入国の一つであるマレーシアで調査を行い、違法埋め立てや野焼きなど、適切に処理されないプラスチックごみによる環境や人の健康への影響の可能性をまとめた報告書を発表しました。

市民の多くが使い捨てプラスチックが過剰と回答

コロナ禍で家庭からの使い捨てプラスチックごみがさらに増え続けています。グリーンピースは「使い捨てプラスチック製品や容器包装に関する意識調査」を行いました(国内在住の1000人対象)。

暮らしの中で「不要な使い捨てプラスチック製品や過剰包装のサービスが多いと感じる」と答えた人が8割以上、「使い捨てプラスチックを使わないための選択肢があれば利用してみたい」と答えた人も、7割を超えました。また、全体の6割以上が「日本でもレジ袋の有料化だけでなく、他の使い捨てプラスチック製品について、使用規制や有料化を進めるべき」と考えていることも分かりました。

プラスチックごみ問題の解決のためには、容器包装を中心にプラスチック製品の生産総量を大幅にリデュース(削減)し、リユース(繰り返し使える容器の利用など)を推進することが不可欠です。今回の結果から、リデュース、リユースを通じた脱使い捨て社会の実現は、人々の声に応えることにもつながるということが言えます。

使い捨て社会からの脱却、循環型社会の実現を

日本政府は2019年に「プラスチック資源循環戦略」を策定しました。グリーンピースも草案の段階から提言などを重ね注目していましたが、残念ながら根本的な解決につながる戦略にはなりませんでした。

2020年はレジ袋の有料化や、今後の具体的施策の基礎になる「今後のプラスチック資源循環施策の基本的方向性」も策定されました。グリーンピースは「減プラスチック社会を実現するNGOネットワーク」の参加NGO11団体や賛同団体と共に、基本的方向性への提言活動を行い、笹川環境副大臣と直接話をする機会を得ました。その後、公明党、立憲民主党、経済産業省へも提言を行いました。

しかし、いまだ政策の中心はリサイクルと代替品への移行であり、肝心の大幅な削減と使い捨て社会そのものからの脱却への道筋は見えません。2021年はいよいよプラスチック法案議論も開始し、根本的な取り組みを進めるためにさらに重要な年になります。使い捨てない、循環型社会の実現を目指して、引き続き提言活動を行っていきます。

ファッションと環境問題に関する報告書発表

近年日本でも、ファッションの環境負荷への関心や、業界のサステナビリティへの意識が高まっています。2020年10月、ファッションと環境問題に関する報告書の日本語版2点『ファストファッションを、もっとスローに』と『ファッションをデトックスーー有害化学物質ゼロを目指した7年間の歩み』を発表しました。これらは、グリーンピース・ドイツが2016年、2018年に発表した報告書の翻訳版です。

2018年の中国による禁輸措置後、東南アジアを中心とした国々に日本を含む先進国の廃プラスチックが輸出されるようになりました。グリーンピースは2018年、輸入された廃プラスチックが適切にリサイクルがされていない状況を調査し世界中に伝えていました。

グリーンピースはその追跡調査を2019年7-8月に行い、輸入された廃プラが現地の環境と人の健康に与える有害な影響を調べ、本報告書にまとめました。調査はグリーンピース・マレーシア事務所が主導し、欧州、アジアの国々の事務所も参加しました。4つのごみ捨て場内とその周辺計10カ所で採取した水と土壌のサンプルを、英国のエクセター大学内にあるグリーンピース研究所の科学者が検査し、サンプルの化学分析を行いました。

2000年以降爆発的な拡大を遂げたファストファッションにより、衣料品生産は倍増し、大量に消費・廃棄される時代に。有害化学物質の使用、温室効果ガスの排出、地球資源の消費や廃棄物問題、人権問題など、複合的で深刻な課題を概説。

衣料品の生産過程で使用される有害化学物質による汚染から河川や海洋を守るために、グリーンピースは2011年から大手衣料品ブランドに対して、2020年までに有害化学物質の使用・排出ゼロを目指す「デトックス・キャンペーン」を世界中で展開。衣料品業界に変革をもたらしたキャンペーンの7年間の軌跡をまとめました。

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