使い捨てプラスチックは、今のところ減る傾向にありません。消費材メーカー各社が力を入れている「リサイクル」は、プラスチック危機の救世主になるでしょうか?残念ながら、この記事で説明されるリサイクルの現状とこれまでの背景から言って、答えは「NO」です。なぜ、リサイクルだけではプラスチック危機を解決できないのでしょうか?そして、企業や私たちにできることはなんでしょうか?

プラスチックなどの使い捨て容器包装は、現在のところ減る傾向になく、今後も大幅な増加が予測されています。

プラスチックごみの約半分は、ペットボトルやお菓子の小袋など、使い捨ての容器・包装がほとんど。

世界中に商品を流通させている大手の消費材メーカーは、自社の使い捨てプラスチックを「リサイクル」することで、プラスチック汚染に対策していると発信しています。

しかし実は、プラスチックを利用する消費材メーカーは、石油化学業界と一緒に使い捨てプラスチックの”リサイクル神話”を作り上げてきたという背景があります。

「ごみは消費者の責任」メーカーと石油製品企業が推進してきたリサイクル

韓国で、回収されたプラスチックごみを仕分けする作業員。(2018年12月)

ペットボトルや食品包装など、使い捨てプラスチックのパッケージを大量に利用する大手消費材メーカーは、これまであらゆる場面で、化石燃料・石油化学業界と一緒に、リサイクルを使い捨てプラスチック問題への解決策として推進してきました。

この協力関係は、 1950年代に設立されたキープ・アメリカ・ビューティフル という団体にまで、さかのぼることができます。

大手メーカーや石油化学製品の企業が参画するこの団体は、「ごみは企業ではなく消費者の責任である」という考えを広めるために設立され、いまだに影響力を持っています。

ペットボトルが、”ベンチになりたいからリサイクルしてね”と語りかけるキープ・アメリカ・ビューティフルの2013年のポスター。https://berecycled.org/

80年代後半に、アメリカで使い捨てプラスチックに反対する法案が出現した際には、アメリカのプラスチック業界は、数百万ドルをかけて「リサイクルがごみ問題を解決できる」というPRキャンペーンを展開したと報道されています。

この時、プラスチック業界はThe Council for Solid Waste Solutionsという新たなフロント団体も立ち上げ、シェブロン、デュポン、エクソンアンドモービルなどの化石燃料業界やP&Gなどの消費財企業などと共に、多くが経済的にも技術的にも疑わしいと分かっていたにも関わらず、リサイクルの推進に力を入れたという報道もあります。

こうした大規模なPRキャンペーンやロビー活動の推進により、すべてのプラスチックはリサイクル可能であり、許容できるものだと納得させることにおおむね成功し、米国で使い捨てプラスチックの規制を妨げることに成功してきたのです。

「一般市民が『リサイクルは上手くいっている』と考えれば、環境問題をそれほど気にしなくなります。何しろ、業界はバージン材(新しいプラスチック)を売りたいわけですから、リサイクルにはあまり金も労力もかけたくなかったのです。バージン製品を作っているのに、それに取って代わるものが登場して喜ぶ会社などありません。バージン材の製造を増やすことが、彼らのビジネスなのですから」

これは、上述のプラスチックの業界団体の元代表ラリー・トーマス氏自身の発言です。

マイクロプラスチック状の新しいプラスチック素材。ドイツ・ケルンの港で撮影。(2021年1月)

いまも続く業界による「目くらまし」

このような事例は、現在でも続いています。

最近では、「廃棄プラスチックをなくす国際アライアンス(AEPW)」と新しい業界団体が2019年に設立され、何十社もの化石燃料・プラスチック企業に加え、ペプシコ、P&Gといった消費財大手や、日本からもキリン、三井化学、三菱ケミカル、住友化学がメンバーとして参画しています。

このアライアンスは、リサイクルインフラの向上や「ケミカルリサイクル」技術の開発を目指していますが、大した成果をあげられていないどころか、アライアンスが企画し、当初大々的に宣伝されていたRenew Oceansというプロジェクトがすでに頓挫していたという事例も報道されています。

インドのガンジス川から回収したプラごみをリサイクルするというこのプロジェクトは、わずか一トンのごみを回収しただけで終了してしまいました。

また、米国の石油化学業界団体であるACCが、ケニアの脱プラスチック法に反対するよう米国政府に対してロビー活動を仕掛けていたことが、グリーンピースUKの調査報道部門「Unearthed」の調査によって明らかになりました。

先進国からの廃プラスチック受け入れを停止や規制する国が増え、国際的な取引規制が議論されていた中で、輸出へのさらなる規制拡大の阻止を目的とした行動でした。

“アフリカはごみ箱じゃない”と訴えるケニアの人々。(2020年9月)

リサイクルされたプラスチックは、わずか9%

世界全体で見ると、2015年時点で、それまでに製造されたすべてのプラスチックのうち、リサイクルされ たのはわずか9%しかありません。

さらに、ある調査によれば、2回以上リサイクルされたプラスチックは1%未満だと推定されます。 

結果としてプラスチック容器包装の大半は、より質や機能の劣る製品に「ダウンサイクル」されるか、埋立処分場に送られたり、焼却されたり、自然環境に流出したりしています。

リサイクル目的として先進国からマレーシアに運び込まれたプラスチックごみ。処理しきれないプラごみが、放置されたり野焼きされたりしていた。(2018年10月)

製品のパッケージが「リサイクル可能」な素材だったとしても、リサイクルされているとは限りませんし、リサイクルされたとしてもほとんどが「ダウンサイクル」です。

「リサイクル可能」というラベルは、「リサイクルされている」と安心させて消費を促進し、購入者をあざむくマーケティングツールにもなってしまっているのではないでしょうか。

だからこそ「リユース・リフィル」を

こういった化石燃料業界や大手メーカーによる大規模なPRやロビー活動の実態を知ると、あまりに問題が大きすぎて気が遠くなってしまうかもしれません。実際、私もこの問題に取り組み始めた時は同じように感じていました。

しかし、今はとても希望を感じています。

それは、世界中に使い捨てパッケージを流通させ、プラスチック危機の原因を作り出してしまっている大手メーカーは、同時に、その世界的な影響力を生かして、ごみを出さない「リユース・リフィル」の販売方法を急速に広める力も持っているからです。

南アフリカで販売されている、返却式ビンのコカ・コーラと、ペットボトル入りのコカ・コーラ。

グリーンピースが、コカ・コーラ、ペプシコ、ネスレ、ユニリーバなどの、大手メーカーへの働きかけで目指しているのは、大きな影響力を持った企業が商品の販売方法を変えるように促すことで、「使い捨て」から「リユース・リフィル」へ、社会へのシフトを実現することです。

世界で700万人が賛同する国際キャンペーンにぜひ賛同してください。日本からも、使い捨てではない、「リユース・リフィル」の商品や販売方法を期待しているという声を、大手メーカーに伝えましょう。

この記事で紹介した事例について詳しくは:グリーンピース報告書『気候緊急事態をひもとく』

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