
ゼロから分かる気候変動の原因と対策
地球温暖化によって引き起こされる気候変動。地球全体の気候が不安定になり、生態系がバランスを崩し、私たちの社会・生活にも大きな影響を及ぼします。日本に住む私たちも、極端な猛暑や経験したことのないような集中豪雨などの異常気象とそれに伴う災害として、気候変動の影響を受け始めています。
このままでは、未来を生きる子どもたちの暮らしに支障をきたすことは明らかです。温暖化を抑え、かけがえのない地球を100年先の子どもたちにも手渡せるように。電気や食べ物、交通手段など、生活のあらゆる場面で気候を守るための意思ある選択をすること。自分の住む街や勤務先で、気候変動対策に取り組むよう働きかけていくこと。今この瞬間から始めるひとりひとりの意識変革と行動が、未来をつくります。
このページで分かること
気候変動は私たちの
暮らしをどう変える?

「気候変動」、という言葉だけを聞くと、自分には関係のない話と感じる方もいるかもしれません。しかしこのまま何も手を打たずに気温上昇が現在のペースで続けば、早ければ2030年には産業革命以後の世界の平均気温上昇が1.5℃を超え、気候変動が日常生活に大きな影響を及ぼすことが、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)による『1.5℃特別報告書(2018年10月公表)』で報告されています。具体的にどういった影響が予測されているのか、見てみましょう。

1. 平均気温が2℃以上上昇し、熱波に見舞われる世界人口が4億2,000万人増える
現在のペースで温室効果ガスの排出が増えると、2081年 〜 2100 年の世界の平均地上気温は、1986 〜 2005 年よりも 2.6 ~ 4.8℃上昇すると予測されています(*1)。2021年現在、日本の最高気温は41.1℃(埼玉県熊谷市2018年、静岡県浜松市2020年)ですが、それがより高くなり、35度以上の猛暑日の日数がさらに増えていくと言われています。世界に目を向けると、こうした猛暑が一定期間続く「熱波」に見舞われる人々は気温上昇が2℃の場合、1.5℃より4億2,000万人増えると考えられています(*2)。
- *1
- IPCC 第 5 次評価報告書 RCP8.5シナリオによる
- *2
- IPCC1.5℃特別報告書 TS-11「極端な熱波に頻繁にさらされる人の数が、1.5℃の場合2℃より約 4 億 2000 万人減少する」
2. 海水温も上昇、台風や豪雨による被害が増加
海水温が上昇し、海水の蒸発が多くなることで、大気中の水蒸気量が増え、台風や豪雨が発生しやすい環境が生まれています。理論上、平均的には気温が1℃上がると水蒸気量が約7%増え、大雨の雨量も約7%あるいはもっと増えると考えられています。
3. サンゴが死滅、貝や海藻、魚にも悪影響が及ぶ可能性が高い
1.5℃の温暖化で海にいるサンゴ礁の70〜90%が死滅し、2℃の温暖化では99%が死滅すると予測されています(*1)。実際に、2016年の夏には、日本でも奄美群島から八重山諸島にかけて高温が原因でサンゴの大規模な白化が起こっています。世界の年間漁獲量は、1.5℃温暖化の場合には150万トンの、2℃の温暖化では約300万トンの減少がそれぞれ予測されており、私たちの食生活にも影響を及ぼす可能性があります(*2)。また、海氷の減少により北極圏にすむシロクマなどの生きものたちへの影響も免れません(*3、*4)。
- *1
- IPCC1.5℃特別報告書政策決定者向け要約(SPM) B4.2「サンゴ礁は 1.5℃に おいてさらに 70〜90%減少し(確信度が高い)、2℃において消失がさらに大きくなる(>99%)(確信度 が非常に高い)」
- *2
- IPCC1.5℃特別報告書SPM B4.4 「一つの世界の漁業モデルで は、海洋での漁業について世界全体の年間漁獲量は 2℃の地球温暖化で 300 万トンを超える損失となる のに比べて、1.5℃の地球温暖化では約 150 万トンの損失になると予測される(確信度が中程度)」
- *3
- IPCC1.5℃特別報告書SPM B4.1「2℃に比べて 1.5℃の地球温暖化においての方が、北極海で海氷のない夏が起こる確率が大幅に低くなることは確信度が高い。1.5℃の地球温暖化においては、北極海で海氷のない夏が 100 年に1度予測される。この可能性は、2℃の地球温暖化において少なくとも 10 年に 1 度に増える」
- *4
- NASA GLOBAL CLIMATE CHANGE 「北極の海氷は毎年9月に最小に達します。9月の北極海氷は現在、1981年から2010年の平均と比較して、10年あたり13.1パーセントの割合で減少しています」
拡大する、
気候変動の被害

日本でも異常気象の被害が
相次いでいる

ここ数年、日本で異常気象による災害が相次いでいます。2010年以降、大雪や夏の異常高温、豪雨などがさまざまな地域で繰り返し観測されてきました。とくに2018年は豪雨と記録的猛暑に見舞われ、2020年も九州を中心に数日間豪雨と洪水が発生。多数の死者が出るとともに、全国で河川の氾濫や土砂災害などによる住家被害で、多くの人々が避難しました。
異常気象による被害が増えている要因として、地球温暖化の影響を専門家が指摘しています。例えば気象庁も、2020年(令和2年)7月の豪雨の要因について、地球温暖化に伴う長期的な大気中の水蒸気の増加によって降水量が増加した可能性を指摘しています。
世界各地で被害。
規模は拡大の一途を辿る
世界に目を向けると、気候変動に伴う異常気象とその被害は、より多様で深刻です。北極や南極といった極圏における海氷の減少のほか、記録的な高温や異常な熱波、干ばつが世界各地で観測されています。高温や熱波は空気を乾燥させ、乾燥や干ばつによる森林火災も各地で多発し、その規模も拡大しています。近年日本で深刻な被害をもたらしている豪雨と洪水は、世界中至るところで起きています。また、アフリカでのサバクトビバッタの大発生や、オーストラリアのグレートバリアリーフにおけるサンゴの白化など、気候変動が陸や海の生態系にも異変をもたらしています。

近年の気候変動は
温室効果ガスの排出が要因

そもそも気候変動とは何でしょうか。気候変動には自然的要因と人為的要因がありますが、20世紀半ばからの気温上昇は、人為的なものであることがIPCC第5次報告書において、科学的根拠に基づいて指摘されています。人為的な要因とは、私たちの生活に不可欠な電気などのエネルギーを作るのに使われたり、発電所や工場、輸送機関などで使用されたりする石炭や石油といった化石燃料燃焼による二酸化炭素(CO2)排出や、森林や海洋の開発による炭素の放出、工業型畜産による温室効果ガスの排出などを指します。1880年から2012年までの132年間で、地球の平均気温は0.85℃上がっており、人為的活動が地球温暖化を引き起こした確率は極めて高いと報告されています(*1)。
日本は、2019年排出実績として世界全体のCO2排出量のうち3%強を排出しており、中国、アメリカ、インド、ロシアに次いで5番目に多くCO2を排出している国です。CO2直接排出量は11億794万トンに上りました。排出の大きな要因となっているのが、発電による排出です。発電や精油などのエネルギー転換部門によるCO2排出は40.1%を占めており、その内訳はほとんどが発電です。
- *1
- IPCC第5次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約 D.3

石炭火力発電の
問題点

最もCO2排出量の多い発電方法
=石炭火力発電
石炭火力発電は、さまざまな発電方法のなかで最もCO2排出量の多い発電です。平均温度上昇を1.5℃未満に抑えるためには、石炭火力発電を2030年までに全廃する必要があります(*1, *2)

世界は「脱石炭」へ前進中
脱石炭火力発電に向けて、活発な動きを見せているのがヨーロッパ各国です。2020年、EU欧州連合27カ国全体では、初めて自然エネルギーが化石燃料による発電を上回ったことがわかりました。ドイツでは、2038年までに国内の石炭火力発電所を段階的に廃止、原子力発電は2022年までに段階的に廃止する法案が可決されました。フランスは2022年、イギリスとスペインは2025年までに石炭火力発電所の廃止を宣言しています。2030年までに石炭火力発電を廃止している、もしくはそれまでに具体的な廃止の目標を立てると見込まれる国や地域、都市は23にのぼります。

脱石炭に遅れを取る日本
世界の潮流に反し、日本は未だ石炭火力発電に依存しています。世界第3位の経済大国、世界第5位のCO2排出国でありながら脱石炭に対して遅れをとっていると言わざるをえません。2018年度に国内で供給された電力のうち、31.6%以上が石炭火力発電によるものです。石炭火力発電からの脱却が、CO2排出量減少の鍵となることは明らかです。日本の取り組みとして、後退している点と評価できる点を見てみましょう。
<マイナスの動き>
・新たな石炭火力発電所建設の進行
2021年5月現在、建設中・アセスメント実施中・計画中を含めると合計9基の建設が進行中。
・原子力発電再稼働によってCO2削減を目指す方針
2020年10月、菅義偉首相は、2050年までにCO2排出実質ゼロを宣言しましたが、その具体策は原発の再稼働によるものです。原発は不具合や自然災害で運転できないこともあり、バックアップとして火力発電が稼働することになります。
・海外の石炭火力発電所の新設につながるメガバンクの融資
2018年11月〜2019年12月の間に、日本のメガバンク3社は、ヨーロッパの石炭火力発電企業に対して合計約19億ユーロ(約2300億円)もの融資を行っています*1。2020年、みずほフィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、三井住友ファイナンシャルグループ (SMBC)は新規石炭火力発電事業への融資を原則中止すると約束し、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は2019年に石炭火力発電に対する融資の制限を決定。しかし、例外が多く存在し、今後実際に融資が減るのかはわからない状況です。
- *1
- みずほフィナンシャルグ ループ(みずほ)約1254 億円、三井住友ファイナンシャルグループ (SMBC)約689億円、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)約365億円 出典:Europe Beyond Coal『Fool’s Gold 石炭は黄金にあらず 石炭投融資の継続は気候危機を加速させる 日本のメガバンクに関する特別報告書』
<プラスの動き>
・2020年、梶山弘志経済産業大臣が約100基の「非効率」な旧式石炭火力発電所を休止または廃炉にすると表明
・菅首相が2050年までにCO2排出実質ゼロを宣言
・自治体首長による「ゼロカーボンシティ」宣言の拡大
「ゼロカーボンシティ」とは、環境省が2019年に始めた取り組みで、2050年に温室効果ガスまたはCO2の排出量を実質ゼロにすることを目指すと、首長自らまたは地方自治体として表明する活動です。宣言自治体が増えれば、自然エネルギーの利用促進が期待できます。

気候変動を止めるため、
自然エネルギー100%の社会へ

気候変動を止めるための
具体的な目標とは

世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5℃に抑えるためには、世界のCO2排出量を2050年までには実質ゼロにする必要がありますそのためには、以下の3つの目標の達成が必要です。
1・2030年までにCO2排出量を半減させる
2・2030年までに石炭火力発電を段階的に廃止する
3・2050年までに自然エネルギー100%の脱炭素社会実現
2030年までにCO2半減は、世界の平均なので、CO2排出量世界5位の日本はもっと高いレベルの目標をクリアしなければいけません。目指すべきは、自然エネルギー100%の社会です。
グリーンピース・ジャパンが
行う目標へのアクション
グリーンピース・ジャパンは、石炭火力発電をゼロにし、自然エネルギー100%の社会を実現するために、石炭火力発電関連会社に多額の融資を行う日本のメガバンク3社(みずほ、SMBC、MUFG)に向けて、自然エネルギーに融資対象をシフトしていくよう働きかけを行っています。
また、2020年9月からは、自治体から脱炭素社会をつくる草の根の活動をはじめました。同じ自治体の方をおつなぎして、自分の住んでいる自治体の地球温暖化対策を調べたり、自分の自治体が「ゼロカーボンシティ宣言」をするようにはたらきかけたりしています。環境省のゼロカーボンシティの取り組みによる表明自治体一覧はこちら
私たちが今すぐ
できること

自然エネルギーの
電力に切り替える

自宅や事務所の電気を自然エネルギー100%の電力を扱う電力会社に切り替えましょう。毎月の電気代が、そのまま自然エネルギーへの投資になります。
クリーンな電力会社を選ぶために、自然エネルギーの電力会社をまとめているプロジェクトもあります。
グリーンピースも参加する、クリーンな電力会社がわかる「パワーシフト」HPはこちら
使い捨てのごみを減らし、
繰り返し使うことを当たり前に
ふだんからマイボトルを持ち歩いたり、パーティーやイベントの時にリユース食器を利用したり、使い捨ての容器を減らす生活をはじめませんか。石油から作られるプラスチックはもちろんのこと、植物を原料とする紙の容器も、エネルギーをたくさん使って作られており、廃棄する際にも燃料を使います。最近は調味料や食品の量り売りショップも少しずつ増えてきています。こうした店を利用するなど、すぐに捨ててしまう容器を出さない生活は、CO2排出量もごみの量も減らします。
肉食中心の食生活を
見直す

世界全体の部門別温室効果ガス排出量をみると、肉や乳製品を生産する工業型畜産による温室効果ガス排出割合は、飛行機・鉄道・車などの交通機関と同じ14%を占めています。普段の食事は野菜中心にして、レスミート(お肉を減らすこと)を選択をし、生活のなかでの肉の位置付けを考え直すことで、排出量削減に貢献することができます。環境にも健康にもやさしい食生活を新しいスタンダードにしていきましょう。
グリーンピース・ジャパンに
参加する
気候変動についてもっと知るためのイベントに参加したり、インターンやボランティアとしてキャンペーンに参加したり、寄付サポーターになったり、さまざまな関わり方があります。自分に合った方法で、気候変動を止めるための活動に参加してみませんか。