学校施設の一刻も早い断熱改修の必要性を訴える東大大学院の前真之准教授(6月5日、東京都港区)
学校施設の一刻も早い断熱改修の必要性を訴える東大大学院の前真之准教授(6月5日、東京都港区)

国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都港区)と市民団体「国際環境・開発情報研究所(代表・井田徹治)」は6月5日、環境問題についての勉強会「第17回市民環境フォーラム」をオンラインで開催しました。毎回異なる環境問題を取り上げ、それぞれの分野の専門家から最新の知見や研究成果を学ぶ同フォーラム。17回目となる今回は、毎年のように猛暑が続く中、エネルギー削減の観点からはもちろん、教育の質や学生・生徒の健康においても非常に重要な学校施設の断熱化をテーマに、ゲストの東京大学大学院の前真之准教授(環境建築工学)が、学校建築における断熱改修の最新動向について詳しく解説しました。フォーラムには約70人が参加し、学校断熱に対する関心の高さが伺えました。

オープニングでは、グリーンピースと国際環境・開発情報研究所が、学校の断熱改修に関連する活動や最新の話題を共有。グリーンピースの鈴木かずえは、今年4月に実施した学校の教室の過ごしやすさについてのアンケートで、回答した生徒・保護者・教員の約80%が「夏の教室は暑すぎる」、約65%が「冬の教室は寒すぎる」と回答し、学校施設の断熱性の低さ、設備の古さが考えられると指摘しました。また、国際環境・開発情報研究所の井田徹治代表は、家庭の省エネと再エネをテーマに、現在の住宅や住宅ローンにおける環境視点の不足を指摘し、気候変動が進む中で、サステナビリティーの観点から住宅ローンに環境価値を反映していくことや、既存建築への資金供出の重要性を強調しました。

続いて登壇した前准教授は、学校断熱改修の緊急性について実例や自身の研究成果を交えながら約1時間、詳しく解説しました。冷暖房が設置されているにも関わらず、ほとんど有効に機能していないことが多くの学校で問題となっており、毎年上昇し続ける気温とそれに伴う新たなルールづくりがされていないことが原因であると指摘しました。

建物の表面温度を下げるだけの遮熱や屋上緑化では不十分で、対策として屋根天井・壁・窓の断熱や換気設備の設置が有効であるとし、そのためには学校断熱改修のための予算確保や、責任体制の整備を早急に進めていく必要があると結論づけました。前准教授は「断熱は既に完成されたイノベーションで、社会的に普及させていくことが重要。何より子どもが快適に学習できる環境を整えるために、もはや断熱はオプションではなく国と地方の義務である」と強調しました。

学校断熱をめぐっては、前准教授らのグループやグリーンピースは、公立学校の断熱改修を国が積極的に進めるよう署名活動を行っており、現在約2万8千の署名が集まっています。また、グリーンピースが協力する各地の市民団体「ゼロエミッションを実現する会」では、参加する地域の市民らがそれぞれの自治体に、学校断熱の必要性を訴えるなど積極的な活動を続けています。

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<参考情報>

オンライン署名「学校の断熱改修を、早急に進めてください

関連記事「学校教室の断熱を急げ! 約2万7千筆の署名を提出 ーー署名は継続」


<開催概要>
日時:2024年6月5日(水)18:00〜20:00
開催形式:オンライン(Zoom)
主催:国際環境NGOグリーンピース・ジャパン、国際環境・開発情報研究所(IIIED)

<当日のプログラム>
18:00-18:05  イントロダクション
18:05-18:15  グリーンピース・ジャパン 鈴木かずえ
18:15-18:25  国際環境・開発情報研究所代表 井田徹治様
18:25-19:25  東京大学大学院 工学系研究科建築学専攻 前真之准教授
19:25-19:50  質疑応答

<市民環境フォーラムについて>
グリーンピース・ジャパンと国際環境・開発情報研究所(IIIED)」が共催する勉強会。地球環境の破壊が急速に進み、関連する諸問題の理解が難しくなる中で、官製情報に偏らない情報を共有し、環境問題に関する報道の質、市民による環境保護活動の活性化を目的に開催。毎回各分野の専門家をゲストに招き、最新の研究成果や世界の動向などを紹介している。