寄付文化を育てる挑戦 —グリーンピースで描く未来

[スタッフVoice vol.16]
グリーンピース・ジャパンで働くメンバーのご紹介:大口・遺贈寄付 渉外担当 N・Fさんのインタビューをお届けします。

「遠くの話ではなく、今この時代に、同じ世代の中でこんなことが起きている。それを見過ごしてはいけないと思ったんです。」
人道支援の現場で得たその気づきが、N・Fさんの社会貢献への思いを深めました。
現場で支援することも大切。でも、資金というかたちで支えることも、未来を守る方法のひとつ。その思いは環境分野へと広がり、今、グリーンピース・ジャパンで新たな挑戦が始まっています。

人道支援から環境分野へ転身 ーグリーンピース・ジャパンとの出会い

きっかけは、2024年3月に「未来アクションフェス」というイベントに参加したことでした。多くの若者たちが核兵器廃絶と地球環境保護を訴える姿に心を動かされ、グリーンピースがその開催に深く関わっていることを知り、強く印象に残りました。「Green=環境」「Peace=平和」という団体名が示す通り、持続可能な未来に必要な本質的課題に取り組む姿勢に共感し、「ここで働いてみたい」と思いました。

若者が声を上げることの大切さを実感しましたが、グリーンピース・ジャパンは世代的にも若く、多様性と活力に満ちた組織で、その熱量を感じながら仕事に取り組んでいます。

これまでの経験は、どのように生かされていると感じますか?

現在担当している「遺贈寄付」と「大口寄付」の業務では、これまでの経験が大いに活かされています。特に大口寄付の新規獲得は組織としても優先度が高く、日本の富裕層、特に事業オーナー層へのアプローチに力を入れています。これまで培ってきた富裕層のマインドセットや課題への理解が、新たな可能性を切り拓く力になっていると感じています。

大学基金や研究機関を通じて事業オーナーなどの富裕層への働きかけが行われていますが、NGOでは直接的なアプローチはまだ十分に進んでいないのが現状です。この富裕層へのアプローチは、挑戦する価値の高い領域だと考えています。

NGOの世界で感じる「横のつながり」の力

NGOでのキャリアはまだ浅いですが、他団体の職員の皆さんとの交流を通じて、多くの学びと刺激を受けています。特に印象的なのは、皆さんの「思い」が本当に純粋で強いこと。社会貢献への意識が深く、業務や仕事に向き合う姿勢にも共感することが多くあります。NGOの世界では、組織の違いや目的を超えて「仲間」という意識が強くあるように感じました。

これまで自分が働いていたビジネスの分野では、他社は競合になりますが、NGOでは同じ目的に向かって一緒に進む仲間という感覚があります。民間企業にも学びは多くありますが、NGOでは所属や専門分野が違っていても、根底にある目的やパッションが共通しているからこそ、自然につながれる関係性があるのだと思います。

たとえば、遺贈寄付に関する勉強会では、組織を越えて情報共有が行われ、本音を語り合える空気があります。「誰かのために、未来のために」という共通意識が土台になっているからこそ、仲間としてのつながりを強く感じられるのです。

この業界に入ってから、そうしたつながりのありがたさを日々実感しています。

国際的な組織で育まれた積極性

国際的な環境で働くということは、単に多様な文化や価値観に触れるというだけでなく、それぞれの拠点やチームが異なる方針やアプローチを持っていることを理解しながら動く必要があります。入職当初は、海外拠点を含めた組織の全体像をつかむのに時間がかかり、「誰がどんな分野に詳しいのか」「どこに相談すればいいのか」といった情報がすぐには見えづらく業務を進めるうえで戸惑うこともありました。

それでも、自分から積極的に声を掛け、周りとのコミュニケーションを重ねることで、少しずつそれぞれの得意分野や経験が見えてくるようになりました。最近は、自然とつながりが広がってきたように感じており、とてもありがたいです。

以前の職場では、知らないことを質問することや相談することに躊躇してしまうような雰囲気があり、今ほど積極的に動けていなかった部分もありました。

現在は、前向きに多くの方と話すように心がけています。特に、東アジアのオフィスで同じような業務を担当されている方々や、ヨーロッパ・北米のスタッフとスケジュールを調整して話す機会を持つことで、業務面だけでなく、彼らの真っすぐでピュアな姿勢や情熱に触れ、大きな刺激を受けてモチベーションも上がります。

こうしたやり取りは、業務をスムーズに進める上でも非常に参考になりますし、何よりその方々が持つマインドセットに触れることで、自分の考え方や姿勢にも良い影響を与えてくれています。

印象に残った出会いと、寄付文化への希望

グリーンピースには、情報を惜しみなく共有してくれるオープンな方が多く、とても助けられています。最近では、同僚の紹介で米国オフィスの大口寄付の担当者と話す機会を得て、非常に参考になりました。

現地では、大口寄付に非常に力を入れていることがよく分かりましたし、何より驚いたのが、この5年間で大きく成長していることです。その様子を見て、日本でもこの5年を見据えれば、十分に可能性があると感じました。寄付文化の成熟には時間がかかるかもしれませんが、着実に取り組んでいけば、大口寄付を大きく伸ばせるというイメージが持てました。

アメリカの寄付文化から得た気づき

アメリカは、“寄付大国”というだけあって、富裕層の数も多く、寄付の規模や仕組みも二段、三段と上のレベルにある印象があります。これまでは、そうした文化に対して少し敷居の高さを感じていましたが、担当者の話を聞いていくうちに、アメリカも最初から順調だったわけではなく、試行錯誤を重ねて苦労しながら少しずつ成長してきたんだなとわかりました。

特に印象的だったのが、対面のイベントをうまく活用している点です。以前からグリーンピース・ジャパンでも「何かイベントをやってみたい」という思いはありましたが、今後はイベントを軸に活動を展開していくことで、その先に明るい未来が開けていくようなイメージが持てるようになりました。

これから実現したいこと

ファンドレイジング担当として、グリーンピース・ジャパンの財務基盤を拡大・充実させていくことが、何よりも重要だと感じています。そのための鍵として若い世代と富裕層の方々へのアプローチを強化し、なかでも大口寄付の獲得に力を入れていきたいと思います。

今後は、対象となる方々に向けたセミナー形式のイベントの企画・準備に取り組み、どのような方に招待を送るか、どんなメッセージを届けるか、参加者の心に届くよう、工夫を重ねながら進めていく予定です。キャンペーンチームとの連携のもと、コンテンツの質にもこだわって着実に準備を進めています。

この企画は、当初“試しにやってみよう”という気持ちから始まりましたが、今では「このイベントを必ず成功させたい」という強い思いに変わってます。単なるファンドレイジングの場にとどまらず、キャンペーンチームと連携しながら、組織全体の活動を集約していく新たな流れの起点にしたいという願いがあります。

イベントの開催・成功という同じ目的に向かって取り組むことで、これまで以上に部門間の連携や組織としての一体感が生まれるのではないかと感じています。初めての試みではありますが、注目を集めながら、3年後・5年後の組織強化につながるような活動軸につなげたいーーそんな未来への期待を込めて、今、この瞬間に全力を注いでいます。

最後に、これから環境分野やNGOで働くことを目指す方に向けた、メッセージをN・Fさんにお願いしました。

「環境を守るために、自分に何ができるか——その原点を持ち続けることが大切です。どんなに好きな仕事でも、困難にぶつかることはあります。でも、地球の未来を残したいという強い気持ちがあれば、乗り越えられる。その思いがぶれないことが、何より大事です!今ここにいるスタッフたちも、皆その思いを胸に仕事に向き合っています。」

その言葉には、積み重ねてきた経験から生まれた確信と、未来への静かな希望が込められていました。