[スタッフVoice]環境問題の解決に向かって、自らの情熱と頭脳で取り組むキャンペーナーという仕事とは
[Next100 PROJECT – スタッフVoice vol.4] グリーンピース・ジャパンのスタッフ、一人ひとりの考えや今までの背景を紐解き、新たなビジョンとして策定した「地球の恵みを、100年先の子どもたちに届ける。」への思いをご紹介します。4回目は、グリーンピース・ジャパン、プラスチックキャンペーンプロジェクトリード/キャンペーナーの大館弘昌(おおだちひろあき)のインタビューです。 |
問題を知り、社会を見渡し、さまざまな人と関わる。キャンペーナーに必要なのは幅広い能力
グリーンピースは、複雑な環境問題に対し、さまざまなキャンペーンを展開しています。ここでいうキャンペーンとは、戦略的に計画を立てて実行する、一連の環境保護活動を指します。この活動を中心となって進めるのがキャンペーナー。大館弘昌(ひろ)さんは、プラスチック問題担当のキャンペーナーです。
キャンペーナーの仕事は、キャンペーンを立案し、実行すること。そのために必要なのは、「まず問題について知ること」と、ひろさんは言います。使い捨てプラスチックごみ問題の全体像を把握したうえで、解決までのギャップをどう埋めていくか考えるのです。
「自分たちが持っているリソースを考えて、実行可能なプランを立てます。そこで重要なのは、対外的な状況などを踏まえて、自分たちの活動が最大限の成果をあげ、社会へのインパクトにつながっていくようにすることです。グリーンピースでは政府や企業への働きかけを重視しているので、それらのステイクホルダーがどう変化すれば問題解決に近づくか、道筋を立てながらキャンペーン戦略を練り、実際の行動に落とし込んでいきます」
グリーンピースの業務の中でも、環境保護活動の最前線にいるともいえるキャンペーナーですが、自然環境を守りたいという情熱だけでなく、冷静な分析力や判断力が要求されるポジションでもあるのです。
さらに実際の業務では、問題に関わるさまざまな人に会ってコミュニケーションする必要があります。たとえば、関係省庁の担当者など政府の役人や政治家、さまざまな業界の企業担当者、国内外の団体やメディア、学生から年配の方まで、「わずか数年でこんなにいろいろな人に出会える仕事はあまりないんじゃないかな」と振り返るほど、多種多様な人と出会う機会があります。
同時に、社会を変えたいという同じ熱い思いを持つグリーンピースの世界中にあるオフィスのキャンペーナーと一緒に、ゼロからひとつのキャンペーンを作り上げていくプロセスにやりがいを感じると、ひろさんは言います。もちろんキャンペーナーだけでなく、グリーンピースのさまざまな役割の人たちすべてが互いに作用し合い、相乗効果を生んだ結果として、大きなキャンペーンにつながっていくことも教えてくれました。
キャンペーンを進めていく中で、「社会から良い反応があったり、社会の変化に何かしら貢献できていると感じられたときは嬉しい」と笑顔で語りますが、キャンペーンにはたくさんの要因が複雑に絡んでくるため、常にすべてが上手くいくとは限りません。特に政府や企業への働きかけに関しては、欧米などと比べると日本はまだNGOの存在感が足りないと感じられることもあります。
「でも、僕が入職したとき(2015年)からはずいぶん変わってきたかなと思っているんですね。グリーンピースの活動を注視している人たちは増えたように感じています。SDGsが頻繁に取り上げられるなど社会も変わってきているし、グリーンピースも新しいことへの挑戦や失敗を繰り返して、活動もスタッフのマインドも変わってきているんじゃないかなと思います」
キャンペーナーとして、さらにプラスチックキャンペーン全体をリードする役割として、グリーンピースの変化を感じながら高い目標を掲げ、少しずつ社会が進んでいることに希望を感じています。
大事なのは自分に何ができるか。できることをできる形で行動に移す人が増えてほしい
現在は、使い捨てプラスチックの問題解決に力を注ぐひろさんですが、高校生の頃から社会課題へ高い関心を持っていました。アメリカ留学を経て、社会課題の解決に関わりたいと考えるようになります。そして、民間企業やNPOでの勤務経験を経て、グリーンピース・ジャパンの求人を見つけました。
「自分のやりたいことが、その求人広告に全部載っていると思いました。市民の力で社会を変えるための活動に取り組めると感じたんです。けれども、グリーンピースについて詳しく知っていたわけではないので、日本語でも英語でもさんざん調べた結果、ほかのNGOではできないことができるとわかったので応募しました」
社会課題へ目を向け始めた高校生から現在まで、年齢を重ね、ライフステージも変化してきましたが、「大事なのは自分に何ができるのか、ということは変わってないですね」と穏やかに語ります。
「僕も学生のときはできることが限られていましたが、そのときどきで今の自分なら何ができるのかを考えて取り組んできたと思います。だから、たくさんの人に問題や解決策について知ってほしいし、専門家にならなくても何かしらできることを行動するのは当たり前であってほしい。それは、きっかけがあれば、どんな仕事をしているかとか家族構成がどうとかは関係なくて、気付いた人間一人ひとりの責任じゃないのかなと思うんです」
環境問題が気になっている人の中にも、忙しい毎日や大量の情報に流されて何もできないままになり、そのことがまた気になっているという人も少なくないでしょう。
「いろんなライフスタイルや考え方があるので、それはそれでいいと思うんです。ただ、何かきっかけがあった人たちができることを行動できればいいし、グリーンピースとしてもそういったきっかけをどのように作っていけるかが大切だと考えています。もちろん行動する人を増やしていかないといけないという危機感はありますけどね」
もっとたくさんの人が行動を起こしていったら、100年後の未来はどんなものになっているでしょうか? 実はひろさんは「100年というスパンではあんまり考えたことがなくて」とのこと。
「たとえば、10年後には使い捨てが大幅に減って、リユースが当たり前になっていないといけないと思うんですよね。だから100年後なら、やっぱり環境問題がない社会を目指したい。環境問題を乗り越えられていたら、すごく成熟した社会になっていると思うんです。だから、100年後にほかの課題が生じていたとしても、それを解決してさらに進化を続けていけるんじゃないでしょうか」
キャンペーナーらしく、変化の道筋を立てて描いた先にある、ひろさんの100年後の未来。100年後の地球をつくるのは、今日の一人ひとりの行動の結果。グリーンピースが目指しているのは、政府や企業を動かすことだけでなく、そんな一人ひとりの行動の変化です。
プロフィール
大館弘昌(おおだちひろあき)
2015年にグリーンピースに入職し、2018年よりプラスチック問題を担当。市民と共に政府・企業への働きかけを行うことで、脱使い捨てを実現するリユースの取り組みを広め、使い捨てプラスチック問題の解決を目指している。
学生時代、米国留学時に「ハリケーン・カトリーナ」の災害支援活動にボランティアとして参加したことがきっかけで社会活動に関わり始める。趣味はヨガ、散歩、クラフトビール巡り。
<キャンペーナー 大館弘昌のある一日>
9:30~10:30
発表予定のプラスチック関連の報告書の準備。そして、広報チームと一緒にプレスリリースの用意。
チャットのやり取り(グリーンピースではSlackを使ったチャットでコミュニケーションをとっています)
10:30-12:30
オンラインミーティング(内部も外部もほとんど、オンラインで話します)
・チームメンバーとのミーティングで、キャンペーンの進捗情報の把握。
・行政担当者とプラスチック問題の国際動向について意見交換。
・登壇予定のイベントの主催者と、企画内容やプレゼンの構成について相談
12:30-13:00
ランチタイム!
コーヒーとスナックをつまむ事が多い
30分でランチを済ませて、残りの30分は午後の散歩の休憩時間に。
13:00-15:30
メール返信や作業
・ミーティングのフォローアップのため、関係者にメール
・海外の報告書などをいくつか確認したうえでドキュメントにインプットし、チームメンバーに送付
・各種資料を読み込みと整理。
・発表予定資料の執筆
15:30-16:00
散歩休憩30分
16:00-17:00
各国にいるグリーンピースのプラスチック担当者と定例ミーティング
一度退勤して、家事や育児を担当。
18:00-19:00
再び出勤
調査資料作成やメール対応。そして、翌日の準備をしてから退勤します。