[スタッフVoice] 寄付者という仲間を増やして、グリーンピースの活動を支える。単にお金を集めるだけではない、ファンドレイジングという仕事の魅力
[スタッフVoice vol.13]
グリーンピース・ジャパンで働くメンバーのご紹介:ファンドレイジングマネージャー、R・Yさんのインタビューをお届けします。
ファンドレイジングという言葉は、日本ではまだ耳慣れないかもしれません。けれども、非営利団体などで活動資金を集めるファンドレイジングという仕事は、欧米では広く知られており、ファンドレイザーは人気のある職業として認知されています。グリーンピースが環境保護活動を進めていくためには、もちろん活動資金が必要です。担当スタッフは、どんな思いで、どんな業務を進めているのでしょうか。

寄付を集めるとは、ただ「お金をください」とお願いすることではない
個人の方や企業から寄付を募ったり、助成金を得たりして、活動資金を集めるのがファンドレイジングです。ただし、グリーンピースは活動の独立性を保つために、企業や政府からはいっさい資金援助を受けず、個人の方からのご寄付のみで活動をしています。グリーンピースのファンドレイジングとは、個人の方に支援をお願いし、寄付を集める業務を指すのです。
現在、ファンドレイジングマネージャーを務めているR・Yさんですが、入職前はNGO勤務もファンドレイジング業務も未経験でした。ただし、博士課程を終え、大学教員として研究を続けていたR・Yさんにとっては、研究費用のために助成金を申請するなどして、資金を得ることにはなじみがありました。
「助成金の申請では、自分の研究がいかに価値があるかを伝えて、“お金をください”と言わなければならないので、そこはグリーンピースで寄付を募るのと似ているのかなと思いました。ファンドレイジングで大切なのは、お金を使って何をしたいか伝えることなんです。
お金を出すだけの価値があることやお金が必要な理由を、魅力的に話したり書いたりすることは、夢や実現した未来を可能にするための応援者あるいは伴走者を探すことです。特にその夢や未来が、地球や子どもたちの未来をまもることにつながる今の仕事には、とてもやりがいを感じています」
日本には寄付文化が根付いていないと言われているだけに、寄付してほしいと伝えることにハードルを感じる人も少なくありません。そんな難しさに対しても、R・Yさんは持ち前の明るさと前向きさで発想を変え、積極的に取り組んでいます。寄付者の皆さんを、「お金をくれる人ではなく、その先の目指す未来を共有する仲間」と捉えることで、友達を増やすような感覚で、寄付者の方との出会いを楽しんでさえいるようです。

グリーンピースへの寄付には、さまざまな方法があります。毎月定額をクレジットカードや口座引き落としで寄付する継続寄付。好きなタイミングで振込やクレジットカードで寄付する都度寄付。このような寄付方法や寄付の使途、成果などを紹介するために、最近ではインターネットやSNSを活用したデジタルファンドレイジングが主流になっており、グリーンピースでも活用しています。
ほかにもダイレクトメールを送ったり、雑誌や新聞に広告を掲載したりして、寄付を募ることもあります。そういった施策を企画し、外部の企業やフリーランサーなどとともに実行に移していくことが求められる業務。なかには、遺言書を書いて、亡くなった後に財産を寄付する遺贈といった寄付方法もあり、幅広い業務をスタッフで分担して取り組んでいます。どのような寄付方法であっても、寄付者の方へお礼を伝え、活動内容を報告することはおろそかにできません。
「当たり前のことですが、寄付は寄付者の方の意思にかかっています。これまでにこういう成果が皆様からのご寄付で実現してきましたというお礼をまずは伝え、寄付の価値を感じていただけることを大切にしています。
その上で、次はこの活動が重要なので一緒に実現してくれませんか、と賛同者を募り、支援の必要性を訴えていくしかないんですね。投げたボールを受け止めてくださるかどうかは、ご寄付者の気持ちや状況次第なので。だからこそ、ボールを受け止めて寄付しようと決めてくださった方には、感謝しかありません」

環境保護活動は、結果を出すのに時間がかかり、また結果を計測することも容易ではありません。けれども、ファンドレイジングに関しては、業務の成果がはっきりと数字で現れます。常に数値目標を掲げ、そこに向かってPDCAを回して業務を進めていく必要があります。資金がなければ環境保護をするための活動自体ができないわけですから、結果を求められるシビアな側面があることは否定できないでしょう。
「基本的には、目標がありそれを実現していくために効率よく動くという点では、企業の営業と同じような考え方ですよね。はっきりと数字が出ることにやりがいを感じられる方には向いていると思います。
でも、寄付という数字に対し、単に数字として見るのではなく、その背景にあるストーリーや寄付者の思い、寄付という行為への価値を私たちは大切にしたいと考えています。それを自分の言葉で語れる人であれば、環境問題に関する専門知識は必要ないので、資金調達という仕事にもぜひチャレンジしていただきたいです」
偶然出会った求人が、やりがいのある仕事と働きやすい職場につながった
R・Yさんは大学での教員生活を経て、出産を視野に入れたライフステージの変化を踏まえて、行政機関での時短勤務という働き方を選択しました。その後、妊娠中に、3.11、東日本大震災が起きます。それは、自身の価値観がリセットされるような感覚だったと振り返ります。
大学や行政機関で働く中で、さまざまな制度の問題や限界を感じていたR・Yさんは、そういったシステム自体を変えたいと考えるようになりました。育児に少し余裕が生まれ、時間ができた頃、求職活動を始めます。
「環境問題に取り組みたいとか、NGOで働きたいとか、そういうふうに思っていたわけではなかったんです。ただ、よりよい社会を作るためには根本的なところを変えなければいけないんじゃないか、そういうことに取り組めるような仕事をしたい、そう思っていたときにグリーンピースの求人に出会ったんです。ぴったりじゃないかと思いました」
グリーンピースがめざすのは、地球規模の環境問題を解決するためのシステムチェンジ。環境破壊を引き起こしている政治や経済の仕組みそのものを変化させようとする姿勢は、R・Yさんの発想に重なります。

ファンドレイジングを志望して応募したものの、キャンペーナーとして採用されるなど、紆余曲折はありましたが、2016年10月に異動し、ファンドレイジング、中でも大口・遺贈担当となりました。多額の寄付や遺言書などを扱う、ファンドレイジングの中でも特に寄付者の方から厚い信頼を得るためのコミュニケーションが必要とされる役割です。
そして2024年1月、現在のポジションであるファンドレイジングマネージャーに昇進。仕事に対する意欲はさらに高まっています。
「いまの仕事が本当に楽しいんです。マネージャーとして、さらに幅広くファンドレイジング全体を見るようになりましたが、基本は変わらないんですね。ご寄付によってどんな社会を作っていけるかをきちんとお伝えして、寄付してよかったと思っていただくことに尽きるわけです。
グリーンピースの成果は寄付者の成果であること、みんなで社会をよりよく変えていっていること、そこを感じていただきたいんです。その点を徹底して、寄付者の人たちの満足度を上げていきたいと思っています」
忙しいながらも仕事を謳歌するR・Yさんですが、それは業務内容だけではなく、グリーンピースという働く環境も関係しています。「私が一番いいなと思っているのは、本当にグローバルなところ」と言うとおり、個性や多様性が尊重される組織文化がはぐくまれており、さまざまなルーツを持った同僚も多くいます。そしてもちろん国際環境NGOとして、東アジアを中心に海外のオフィスで働くスタッフとの協働も多くあります。

フレックスや在宅勤務といった、ワーキングマザーが働きやすい環境が整っていることも、一人娘を育てるR・Yさんにとっては、ワークライフバランスを大切にするうえで重要なことでした。ファンドレイジングマネージャーになり、これまで以上に仕事はハードになっていますが、仕事への情熱は失われません。
「小さい頃から世界平和とか、そういうことにすごく興味のある子どもだったし、学生の頃に国連職員に憧れたりしていたので、グリーンピースという名前に体現されるとおり、平和とよりよい未来を作るための社会変革にグローバルな規模で貢献できるいまの仕事に本当にやりがいを感じているんです。
もちろん忙しくて大変なときもあるので、たまに美味しいスイーツを食べたり、温泉やアロママッサージに行ったりしてリフレッシュするようにしています」
日々の業務を通して、よりよい社会に変えたいという願いを実践できているという手応えが、R・Yさんをハードな仕事に前向きに取り組ませていることが伝わってくるインタビューでした。