[スタッフVoice vol.7]
グリーンピース・ジャパンで働くメンバーのご紹介:プログラム部長、高田久代のインタビューです。仕事をおおいに楽しみながら働き続けられる、その背景を訊きました。

環境をまもる仕事に就きたいという夢を叶えて。働いていてイヤなことは何もない

グリーンピース・ジャパンでは、たくさんの女性スタッフが活躍しています。プログラム部長を務める久代さんは、ほかのスタッフから厚い信頼を集めるベテランスタッフであり、プライベートでは二人の子どものお母さんです。

久代さんの環境問題との出会いは、小学生の頃に観たジブリアニメ『風の谷のナウシカ』までさかのぼります。自然に親しむ家庭環境で育ったことに加え、この映画をきっかけに環境問題に取り組む仕事に就きたいという夢を強く抱くようになりました。

常に夢を念頭に成長した久代さんは、大学在学中、一冊の本「ゴミポリシー―燃やさないごみ政策「ゼロ・ウェイスト」ハンドブック」と出会います。その翻訳を手掛けたのがグリーンピース・ジャパンだったことから、実際にオフィスへと足を運んだのが、グリーンピースとの最初の関わりになりました。

さらに社会人経験を経た後、本に登場していた環境NGOが活動するニュージーランドへとワーキングホリデーに行き、現地のごみ削減に取り組む「ゼロ・ウェイスト・ニュージーランド・トラスト」に掛け合ってボランティアとして3ヶ月ほど毎日活動。一旦帰国した後、同団体から採用オファーをもらい、再び渡航して総務担当として約2年半ほど勤務し、環境問題に取り組む仕事へと歩みを進めて行きます。

ニュージーランドのNGO団体「ZERO WASTE NEW ZEALAND TRUST」に勤めていた時の久代さん。

ニュージーランドへの渡航前後から、ボランティアとしてグリーンピースに参加し始め、スタッフとして入職、さまざまなポジションを経験し、2019年からプログラム部長を務めています。キャンペーン全体に目を配り、政治や経済の状況や社会情勢など幅広い視点から戦略を立て、より大きなインパクトを目指す、重い責任を担っています。

プレッシャーもあるポジションですが、久代さんはいつでも職務を楽しんでいます。

グリーンピースで働いていて、イヤなことは何もないんです。キャンペーンが成功すればもちろん嬉しいですが、私はキャンペーンを考えてつくっていくことそのものが好きなんです」

キャンペーンはいつも成功するものではありません。それでも、久代さんは理想に向かって進んでいく過程そのものにワクワクしながら向き合っています。そうしている間に部長になっていた、というのが久代さんにとっての実感のようですが、そこにはやはり理由がありました。 

「いいチームを作りたいということはすごく思っています。私はいろいろな人がいるチームで一緒になって目標を目指したいんです。そこで足し算じゃなく、掛け算の効果が生まれる。それを意識してきたし、人と話すことやコミュニケーションが好きというのも強みであると思います」

自分の子どもは、南の海に行ってもサンゴが見られないかもしれない

大学生だった久代さんが初めてグリーンピースのオフィスを訪れたときから、20年以上の歳月が流れています。近年では、SDGsという言葉が広く知られ、環境問題への関心は高まる一方です。それにつれて、企業の対応も変わってきたといいます。

「気候変動に関して言えば、グリーンピースが目指す大目標に対して相入れない企業はほとんどないと思います。日本政府も2050年にはゼロエミッションを達成すると宣言しています。ただ、その道筋やスピード感が違うので、解決策を一緒に探っていこうとするアプローチが必要なんです」

環境破壊を繰り返す企業の経済活動に対し、NOを強く突きつけることもあるグリーンピースですが、今は同じ目標を企業と共有し、議論を交わしながら前進できることも増えてきました。

社会の変化に向き合ってグリーンピースで働いている間に、久代さんの人生にも、結婚、出産とライフステージの変化が訪れていました。出産時には産休、育休をとり、現在も16時までを勤務時間とするなど、勤務形態をフレキシブルにすることでグリーンピースでの勤務を続けています。

誰もが働きやすい環境に整えようとすることはグリーンピースにとってはごく自然なこと。周囲の同僚や上司も、久代さんの変化を快く受け入れてきました。

「最初の育休の頃は、赤ちゃんのお世話をしながらパソコンで調べ物をするぐらいワーカホリックなところがありましたが、今は安全運転を心がけ、勤務時間内だけに集中しています。どう働きたいかは変化するので、たくさんある選択肢のどれを選んでもいいし、一度選んでも変えられればいいですよね。これから、私と同じようにライフステージの変化を迎える若いスタッフがそんな風に働き続けられるようにしたいです」

2011年新宿駅前で行われたエネルギーシフトパレードで、再生可能エネルギーへのシフトを訴える久代さん。

出産を経験して変わったのは、働き方だけでなく、未来の地球をみつめるまなざしです。IPCCの報告書によれば、2050年まで地球の平均気温が2℃上昇すると、温帯性のサンゴの99%が死滅します。久代さんは、「自分の子どもが大人になって海に遊びに行っても、サンゴが見られないんだと思ったんです」と、その衝撃を語ります。

2022年の今日、日本で生まれた子どもたちが2100年まで生きている可能性は決して低くありません。100年後の未来は、知らない誰かが生きる世界ではないのです。改めてそう意識すると、「あなたが望む100年後の理想の未来」に対する考えも変わってくるでしょう。

「100年後には気候変動の影響は少しでもおさまっていてほしいですけど、おとぎ話みたいに、一件落着めでたしめでたしとはならないと思います。でも、問題に対してどうするか考えたり、何とかしようと動く人はたくさんいるんじゃないかと思います」

気候変動を少しでも早く食い止め、問題に対し考え、声をあげる人たちを一人でも増やすために。100年後の未来のために、久代さんは今日も楽しみながら、職務に邁進しています。

高田 久代
プログラム部長

大学卒業後、ニュージーランドに渡航し、2005年より現地NGOのZero Waste New Zealand Trustでスタッフとして勤務。2010年よりグリーンピース・ジャパンのキャンペーナーとなり、海洋生態系問題や有害物質問題に取り組み、2010年10月から2015年6月まで気候変動・エネルギー担当を務める。東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、グリーンピースが定期的に実施する放射能汚染の実態調査や、関西電力大飯原発(福井県)および九州電力川内原発(鹿児島県)の再稼働に環境と住民保護の観点から反対する立場で活動に携わる。2014年7月から、グローバル・プロジェクトリーダーとして、自然エネルギー100%の日本を目指す国際プロジェクト「エネレボ」をドイツ、ベルギー、スイス、フランスの各グリーンピースとともに開始。2015年7月よりエネルギープロジェクトリーダーを務め、2019年1月より現職。2児の母でもあり、朝7時からの早朝勤務スタイルで子育て中。